2006-09-30 Sat  [ 哺乳類・野生動物 ]

散歩道でツキノワグマが人を襲う… 9

by gaku


9月26日、20時27分。
ツキノワグマが果樹園脇のリンゴ捨て場にやってきた。



果樹農家では、商品にならないリンゴ、梨、ブドウを畑脇に穴を掘って捨てている。
やがて土をかけて埋めるが、その間隙をぬってタヌキやハクビシン、ネコ、ツキノワグマも食べに来る。
動物たちは、食べることで環境クリーニングをしているからだ。



撮影現場の前と後ろの風景。
前山から動物たちが降りてくるが、8~9月の間に、この山周辺だけでツキノワグマが18頭捕獲されて耳タグをつけられて再放獣された。
すぐ後ろは、中央高速道路。ちょうどバスが走っているが、カメラからの距離は15m。




高速道路脇に平行して走る農道には、ツキノワグマのリンゴと梨を食べた新旧の糞。




果樹農家でお茶に呼ばれたので雑談をしてきたが、そのときに出された果物。
これらのリンゴや梨でも、売り物にならない自家用品。
少しでもキズがあったり、色づきが悪いと都会の消費者には買ってもらえない。
農業の現場、消費者心理、それをとりまく野生動物…。
自然界の報道写真家としてもう何十年と現場を見続けてきているが、ボクにはまだ答えが見出せないでいる。

昨日まで、農家の許可をいただいて「リンゴ捨て場」に10日間ばかり無人自動撮影カメラを設置してみたが、ツキノワグマが2枚写った。
耳タグをつけていない個体だったから、これは18頭以外の新顔のツキノワグマということになる。
カメラを片付けていたら、そこに散歩にやってきたオジサンがいた。
腰には、小さなラジオを吊る下げていた。
高速道路脇だから小型ラジオの音はまったく無意味だったが、このオジサンは熊の出現を知っていての行動だった。
ボクの顔を見るなり、

オジサン 『どうだい、クマは写ったかぃ?』
gaku   『はい、2枚ね。いずれも夜の8時台です。』
オジサン 『ほほー 案外はやい時間にきているんだなぁー
       まあ、クマはいてもいいけれど、人間に危害をくわえなけりゃー それでいい。』

こういいながら、高速道路に平行して走る農道をオジサンはすたすた歩いていってしまった。
周辺にクマがいることも、ボクがそれを目的でカメラを設置したことも、このオジサンはすべてお見通しだったのだ。
たぶん、このオジサンはツキノワグマには襲われない、と思う。


2006-09-28 Thu  [ 哺乳類・野生動物 ]

散歩道でツキノワグマが人を襲う… 8

by gaku


2006年9月20日午前7時50分ごろ。
長野県小谷村千国乙の農道で通学途中の中学男子生徒(14歳)がツキノワグマに襲われて、顔などに大怪我をした。
2006年9月22日午前3時40分ごろ。
長野県安曇市三郷の市道で新聞配達の64歳のおじさんがバイクでクマと接触したが大声をあげてクマを退散させた。
2006年9月25日午後11時30分ごろ。
長野県白馬村北城の村道(役場に近い村中心部)で、歩いていた39歳の男性がクマにのしかかれて軽傷を負った。

長野県内の地方版新聞には、このようなニュースが後をたたない。
いずれも、長野県の北アルプス山麓で起きたツキノワグマとの遭遇事件だ。
こうしてみると、北アルプスにはツキノワグマが多いように感じられるが、南アルプスの山奥に林道工事で出かけているボクの親友は仕事中に毎日のようにクマを見ている。しかし、彼は遭遇してもボクにその事実を伝えてくれるだけだ。
南アルプスは山が深く人里からも離れているところが多いので、一般的には遭遇事件が少ないからニュースにならないだけで、ツキノワグマは予測を上回る数が生息している。
そして、中央アルプス山麓では、ニュースにしていないだけで毎日のように40頭以上のクマをボクは身近に感じながら仕事をしている。

かねてからボクは言い続けてきているがこうした実体験を踏んでいると、ツキノワグマは長野県内では確実に増えており、いまや緊急調査をしなければならないほどになってきているのだ。

調査といえば、捕獲したツキノワグマに発信機をとりつけてその行動をチェックしただけで、調査が完了したように思われていることも困る。
数頭の個体に発信機をつけて行動圏を探り出したところで、人的被害を発生させているツキノワグマの根本調査にはほとんど役立たないからである。
また、捕獲したクマの歯を抜いて年齢調査などもしているが、これとて研究者の自己満足にはなっても被害を受けている農村社会には意味を見出せないことである。
長野県内にどれほどの数のツキノワグマが生息していて、それらのクマが人間社会にどのような影響を及ぼしてきているのかといった「密度」を調べられる研究者とか専門家がいない、からでもある。
もちろん、日本中にもそのような人はいないであろう。
研究とか調査にはアイデアも必要であって、アイデアは技術的な裏づけがなければでてこないものでもある。

ボクがもし研究者なら、人里に近い林にまず定点カメラを置き、さらには中山、奥山と何箇所かをメッシュカバーして数年間以上に及ぶ永続的な撮影をしながら個体密度を把握してみるだろう。
耳タグだけでは個体識別も不十分だから、捕獲したツキノワグマのお尻には大きく目立つ「焼印」を押す。
こうすれば、耳タグだけをつけて「調査」を遂行しているつもりでいるところにも、有効的結果を加えやすいであろう。
捕獲しては再放獣しているだけの無駄の多い調査にもこのようにマークしたツキノワグマもいれば、新たな進入個体との区別もつけることができる。
ついでに、体高や体重まで自動的に測ってしまうことも技術的には可能である。



こうした基礎的調査すらもされないまま、ツキノワグマのことが安易に語られすぎてしまうから社会に誤解も発生しやすい。
道路工事など箱もの的な公共事業には大金が費やされていくが、野生動物の調査には一般社会からの関心が少なすぎると思う。
そして、研究者やアセスも含めて、既成の調査技術から脱却できないままでいる意識と人材不足にも責任の一端があろう。
今回のツキノワグマとの事故にしても、公共事業で展開されてきた「道路」上で起きていることに関心を示すことも必要である。
小谷村で起きた事故は、通学中の中学生には予想もできなかったことであろうし、その結果が一瞬のうちに人生を狂わす事件となってしまった。
ほんとうにお気の毒だが、自然度の濃い長野県ならば今後もこのような事故がどこで起きてもおかしくないのである。

中央アルプス山麓の伊那谷では、今年だけですでに50頭近くのツキノワグマが捕獲されて「再放獣」された事実のあることを付け加えておく。
これらのクマたちは、ボクのフィールドとも重複しているから、今後の調査が楽しみでもある。


写真上:捕獲されたクマに耳タグがつけられて再放獣されたのがカメラに写された。
     このクマは、捕獲地からまったく移動することなくすでに2年間も同一地域を行動しているから、人間に対する憎しみも少なからず抱いていることだろう。
写真下:調査をするには角度によってはツキノワグマの耳がかくれてしまうことがあるので、体には大きな「焼印」も必要だろう。
     このような焼印調査は、アザラシやトドなどでは国際的に行われていることである。



2006-09-25 Mon  [ 哺乳類・野生動物 ]

リスが死ぬとノミが逃げる…

by gaku


近所の道路で、リスが死んでいた。
車に撥ねられて死んだのだ。
その表情は、まだ生きているように目がパッチリとしていた。
だが、後ろへまわれば右の眼球がとびだしていた。


即死だったに、ちがいない。
そして、体はまだ温かかったところをみると、今しがた事故に遭ったのだ。
今秋は冬が早いらしく、リスも野鳥たちも例年にない忙しい動きを示している。
このため、リスも焦っていたのか、車に撥ねられてしまったのだろう。

そんなリスの体温が下がりはじめたのを敏感にキャッチしたのか、ノミがリスの体をすべるように動き回っていた。
こうして、宿主が死ねば次の宿主を求めて移り棲まなければならないから、体温を確認しているのだった。
すでに、何匹かはリスの体を離れて道路を歩き回っているものも、いた。

可愛らしいリスといえども野生動物だから、ノミを宿しているのも当然だ。
ボクに乗り移られてもたまらないから、リスを道路わきの草むらに移動して、早々に退散してきた。


写真上:今秋になってリスの交通事故を目撃するのは2例目。
写真中:事故はリスにとって致命的だった。
写真下:ノミの体長は2mm。体毛のなかをスピードをもって自在に歩いているのには感心した。


2006-09-23 Sat  [ 旅・取材・人 ]

俳優あおい輝彦さんの趣味

by gaku


NHK-BSで「趣味悠々」という番組がある。
そこで俳優のあおい輝彦さんの趣味が放送されるということで、昨日まで一緒にロケをしていた。
あおい輝彦さんの趣味は「バードウオッチング」。
30年前にボクを訪ねてきたときからの付き合いを今でも続けているから、もう互いに気心の知れた仲。

今回は、秋の渡りで有名なサシバをメインに趣味が展開されていく。
そこで、伊那谷でタカ渡りを見ながら、長野県では有名な「白樺峠」にも出かけてきた。

白樺峠はちょうどハチクマなどの渡りのシーズンを迎えており、全国からたくさんのウオッチャーが訪れていたのには驚いた。
趣味とはなかなかに恐ろしいものだと思うくらいに、その執念には感心してしまった。
そんなウオッチャーを交えてロケをしてきたが、ロケ中を含めて毎晩の痛飲でも阿吽の呼吸で自然界の話題が続いた。
とにかく、ボクの呼吸とぴったりな自然観をもっておられるから、だ。
このくらい「確かな目」で自然を見つめている人は少ないであろう。
あおい輝彦さんとは、そのくらいきちんと自然を見ることができ、それはプロ並みなのである。
まあ、ボクが一応彼の師匠になってはいるのだが、そろそろ抜かれそうなくらいにスゴイ。
酒飲ではとっくに抜かれてはいるが、杜氏の上をいく「酒匠」の免許を持っていたのには驚いた。

来月には、もういちど同じスタッフによる沖縄ロケがある。
超多忙だが、こうした気心の知れた仲間との仕事は楽しいものだ。


写真上:白樺峠でのロケ風景
写真下:ボクも酒には自信があるが、彼はそれ以上にスゴイ、まいった。

2006-09-15 Fri  [ 旅・取材・人 ]

ツキノワグマの新刊など多数出版

by gaku
   

   

新刊が4冊、来月に出版となる。
その見本ができて、担当編集者がわざわざ持参してくれた。
すでに自著は45冊ほどになるが、新刊の誕生はいつでも嬉しいものである。
とくに、「ツキノワグマ」は問題提起をかなり含んでいるので期待している。
また、「柿の木」は、農業問題、過疎問題、人生、環境問題…など、1本の柿の木に語らせている。
そして、「けもの道」「水場」は、『森の写真動物記』としてこれから全8冊のシリーズとなる。大型の本だけに写真の力をみてもらいたい。

「ツキノワグマ」と「柿の木」は、10月上旬。
「けもの道」と「水場」は、10月中旬には全国書店で入手可能となる。
版元は、いずれも「偕成社」。


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