2007-02-19 Mon  [ 哺乳類・野生動物 ]

キツネ火

by gaku


『ヒギャギャギャァーン ヒギャァーーン …』

昨夜、300mほど先の林で、キツネが啼いた。
いつ聞いても鳥肌がたって緊張する声だ。
ひょっとしたら「キツネ火」が見られるかもしれないと思って、暗闇に目を凝らしてみた。
しかし、それらしきものは見えなかった。

キツネ火は、ちろちろっと青白く見えるそうだ。
ときには、ほわわわーんと大きく見えることもあるそうだ。
これをぜひ見てみたいと思っているが、ボクはまだ一度も見たことがない。
一生に一度キツネ火を見られればよいだろう。そのくらい目撃するのは難しいらしい。

キツネ火を見た人にいわせると、交尾期を迎えたキツネがお互いにじゃれあうから、そのときに体同士が触れて静電気が起き「火」になって見えるのだという。
冬のこの時期にしか見えない現象だが、知人は南アルプスの山懐の村で子供の頃をすごし、そのときに3回ほど見たという。
キツネ火のことはおばあさんが知っていて、ギャギャーンと啼いたので孫の知人に見せてくれたのだという。

それは、ほんとうに神秘的で美しい光だったという。
もう、半世紀も前の話だが、今日のように夜の街は明るくはなかった時代。
現代社会の人家付近にもキツネは見事にはいりこんで生活しているが、鳴き声すら耳にする人も少ないだろう。
ましてや「キツネ火」のことなんて意識にないし、見ても関心も示さないにちがいない。
新月の夜だからこそボクは暗闇の林に目を凝らしたのだが、この宿題はまだまだこれからもずっと抱えていかなければならない。

写真:キツネは無人撮影カメラを学習して進路を変えることが多いが、ここは人家の裏庭だったので3年間にわたっていろんな素顔を見せてくれた。

2007-02-14 Wed  [ 哺乳類・野生動物 ]

タヌキ夫婦愛の末に…

by gaku


雌のタヌキが交通事故で死んでいた。
それを、カラスがついばんでいた。いちばん柔らかい肛門付近からすでに嘴をいれていた。

この現場では、ちょうど1ヶ月前にも同じく雄のタヌキが交通事故で死んでいた。その死体をボクは道路わきの土の上に移動しておいたが、翌日には現場から「死体」がなくなっていた。

タヌキやキツネなどのイヌ科動物は夫婦愛の絆が強いことはわかっている。
だから、よく夫婦で行動している姿を観察することがある。
そして、このようにどちらかが交通事故などで死ぬと、片割れが現場付近に毎晩やってきては悲しんでいる姿をみることも、ある。

1ヶ月前に路上で死んでいた雄タヌキを道路わきに移しておいたが、翌日にはその死体がなかった。だからボクは、それ以上の観察をしなかった。
しかし、雌タヌキが旦那の死体をさらに道路より奥へ引きずっていったから、ボクも探せなかったのである。
そのことに気づいたのは、この雌タヌキの死体を見てからだった。


旦那が死んだ現場に毎晩やってきていた「雌タヌキ」は、こんどは自分がだんなと同じ目に遭ってしまった。
交通量の多い道路を横断して人家付近まで生活圏を敷いているタヌキは、このような「事故」リスクも高い。
この現場付近ではたぶんこの夫婦タヌキが、周辺の実権をにぎっていたであろう。
その夫婦が1ヶ月ほどの間に相次いでいなくなったのだから、そのニッチにはすぐに別の「タヌキ夫婦」が埋めるにちがいない。
それが、自然界であって、こういうことは日々繰り返されていることなのである。

写真上:死んでいた雌タヌキ。
写真下:1ヶ月前とまったく同じ場所にタヌキは横たわっていたが、カーブしたこの道路を横断中に車にはねられたことがわかる。

2007-02-10 Sat  [ 旅・取材・人 ]

フキノトウの苦味…

by gaku


フキノトウを急に食べたくなって、近所の山野にでかけてみた。
今年は、例年より3週間以上も早くからフキノトウが顔を出していた。

春になると、どうしても食べたくなるフキノトウ。
あの苦さをボクの体が要求しているからだ。
フキノトウの苦さには「アク」があるから、これが冬に消化しきれなかった体内の脂を抜くのに必要らしい。
その証拠に、ノウサギやシカ、サル、クマまでもが、この時期にはフキノトウを貪り食っている。そして、下痢までしてもまだまだ食いつづけて、ある時期になるとぴたりと食べやんでしまう。
動物たちも、体を夏バージョンにしなければならないから、こうしてアク抜きをするのであろう。



天ぷらにして腹いっぱい食べられる分のフキノトウを採ってきたが、すでにノウサギやシカたちもやってきている痕跡があった。
それは、いいフキノトウを見つけたと思って近づいてみれば、中身をしっかり食われた後だったりするからだ。
そろそろツキノワグマも起きだしてくるから、沢沿いのフキノトウ産地では細心の注意を払わなければならない。

写真上:天ぷらにちょうどいいフキノトウ。
写真下:ノウサギかシカに食べられた痕。

2007-02-09 Fri  [ 旅・取材・人 ]

野生動物からみた人間…

by gaku


ここ10日ばかり、好天に恵まれていた伊那谷をツキノワグマの痕跡を求めて走りまわっていた。
とにかく山岳道路を一日200km以上も軽ジープで走りまわると、疲れてしまって、もうクタクタの毎日だった。

久しぶりに中央アルプス山麓の駒ヶ根高原に帰ってきたら、先月あった遭難者の件で話題騒然としていた。
何人もの知人が、動物についてボクに相談をしてくるからである。

知人 『gakuさぁー 冬の駒ケ岳の稜線には肉食動物がいるのかなぁー?』
gaku 『なんのこと、さぁー?』
知人 『稜線で見つかった遭難者の両手首と顔が何者かに食べられてしまっていたそうだ、よ。
    gakuさが、日ごろから言っていることが俺らぁーにもやっと理解ができたんさ、ね。』
gaku 『標高2900mの稜線では、キツネもテンも、この時期には里に下ってきていて肉食動物は棲めないからなぁ。
     考えられることは、翼をもった野鳥しかいないぜ。
     イヌワシかクマタカ、カラス… このどれかが犯人だと思う、よ。』
知人 『どうして、手首と顔だけなんだよぅ。』
gaku 『冬山だから防寒具をしっかり着ていたから、そこまでは野鳥も嘴をかけられなかったと思う。
     雪上に露出していた素肌のところからついばんでいくハズだから、ね。
     これが夏ならば、あっという間に白骨になってしまうよ。ハエが数十万個の卵を産んで、幼虫が服の中まで侵入して処理してしまうから。』

遭難者ご本人やご遺族の方には心からご冥福をお祈り申し上げるが、自然界とはこういう世界なのである。
野生動物たちは人間といえども生きているうちは「警戒」もするが、死んでしまえば「餌」という見方しかしてこないからである。
自然環境や風景を花鳥風月で愛でているだけが自然界ではないので、もう少し内部に迫ったこうした世界のあることに、私たち現代人は気づいておいてほしいものである。

そんなつもりで、ボクは写真集「死」を出版したのが1995年。
当時でも、今日でも、まだこうした仕事を迎えてくれない人たちもいるが、まさに人間は「メメント・モリ」なのである。
こういう世界のあることを知ることから新たな自然観も生まれるので、メメント・モリを理解しておくことは人生にも大切なことだからである。

写真:満月に照らされる中央アルプスも、里から見れば美しい表情となる。
    しかし、内部では厳しい自然が脈々と息づいている。その厳しさを知っているボクは、冬のこの山頂へはいまだに立てずにいる。
    ボクには勇気がないからであるが、勇気のあった多くの知り合いも、またこの山から別世界へ旅立っていったものも少なくない。



2007-02-01 Thu  [ 哺乳類・野生動物 ]

住宅難のムササビ

by gaku


天竜川に沿って走る県道脇に、ムササビの巣があった。
ムササビの巣は、バスケットボールのように見え、それはスズメバチの「巣」と間違えそうだった。
県道は曲がりくねった細い道路なので、運転を誤れば150mほどの絶壁を天竜川にまっさかさまに転落してしまう。その断崖に生えた樹木の枝先にムササビの巣があった。
運転中のボクの目にはチラッと見えたが、これだけの観察で、これは車を停めて再確認をするに値するものだと思った。
そこで、待避所に車を停めてから双眼鏡でその巣を観察してみたのである。

やっぱり、巣にはムササビが寝ていた。
風に吹かれてふさふさとした尾の毛が、揺れていた。
まさに、上半身を丸出しにしたままの姿勢で寝ていた。
こんな無造作な巣でいいのかいな、とも思った。
しかも、絶壁に張り出した不安定な枝に、なんでわざわざ巣をつくったのだろうと不思議でもあった。

このような巣は、ときどき伊那谷の山野では見ることができる。
リスも、同じような巣をつくっている。
これらは、本来は樹洞につくりたいのだが、その樹洞がないとこのような巣となる。
雨が降ればそれこそびしょ濡れになってしまうのに、それでも巣をつくるのだ。
たぶんこれは、住宅難なので仕方なくつくるのだろう。


道路脇なので、車もけっこう通る。
でも、ムササビはそんな車にはまったく無関心だった。
車のエンジン音やタイヤの騒音には、すっかり慣れっこになっているみたいだった。
その証拠に、眠っているのを起こそうと、クラクションを鳴らしても、大声で叫んでも、まったくの知らんぷり。
そこで、木の根元を小枝でカリカリ…っとくすぐってみたら、眠そうに起きてきた。
このカリカリは、テンの爪音に近いものだったからである。
ムササビは、肉食獣のテンが大嫌いなの、だ。

写真上:眠そうなムササビ。
写真下:矢印のところにムササビの巣がある。

▼宮崎がく公式サイト http://www.owlet.net/
▼衝撃の取材レポート ツキノワグマ事件簿
▼みんなで作る生物データベース WEB自然図鑑
▼動物ライブカメラを24時間中継 森のライブカメラ
▼環境問題講演依頼はこちら 宮崎学の環境講演会
▼仲間になりたい人募集中!! 森の仲間コミュニティ
▼宮崎学のtwitterをフォロー
新着コメント
新着トラックバック
過去ログ
カテゴリ
サイト内検索
Staff
このブログの手伝いをしてくれているボランティアStaffです。
    合計:295
    本日:295
    昨日:0
    処理時間 5.37307秒
在宅、SOHO、求人