2007-06-28 Thu  [ 環境・ゴミ・現代社会 ]

人工林では「編々タイツ」が流行中

by gaku


福井県小浜市から京都へ抜ける「鯖街道」を走った。
京都と滋賀県境の山道で、杉の木の幹に荷物用のビニールテープが編タイツのように巻かれているのが目についた。
これは、ツキノワグマかニホンジカが樹皮を齧るために、防止策としているのだろうと思った。

杉の木は樹齢40年ほどだったから、ここまで育った木を枯らされては林業者も泣くになけない。
40年間の苦労が一瞬のうちにムダになってしまう。
ツキノワグマはその気になればすごい力を発揮して目的を果たしていくから、ビニールテープくらいは簡単にはがしてしまうだろう。
だから、効果のほどは疑問符つき、だ。

そんな「網タイツ」が、今夏は長野県にもやってきた。
長野県の南部にあるヒノキの人工林に、このような防止策が登場してきているからだ。
このような策が施されるには、それなりに被害が発生しているからである。

そんな被害に遭ったヒノキ林を訪ねてみた。
樹齢20-30年ものの植林木を100本あまり、ツキノワグマが派手に皮を剥いていた。
地上から2mくらいまでの表皮を剥ぎ、皮の裏側にあった幹の柔らかい部分を下から上までズズズーっと前歯で押しながら樹液を染みださせて吸いとった痕がみえるからである。
どの木も、同じような痕が残っているところをみると、ツキノワグマはヒノキの樹液をジュース感覚でご馳走としたのである。

しかし、皮を剥がされたヒノキは悲惨な状態で、これなら確実に枯れると判断できた。
こうした被害を林業者が目撃すれば、冷静さを失い、犯人だけを悪者としてまわりが見えなくなってしまうものだ。

そこでボクは、100本あまりの被害木を慎重に調べてみた。
数千本もある同じようなヒノキ林で、被害に遭っている樹木はところどころに点在している。
クマがヒノキの樹液ジュースを欲しかったら、片っ端から皮を剥いでいったほうが効率がいいのにそれをやっていないからである。
派手に皮を剥いた木があっても、すぐとなりの木にはまったく手をかけていないもののほうがほとんどだ。
このことは、皮を剥く木とそうでない木を、確実にクマが選別していたからである。


クマに狙われる木は、樹木の健康状態をしめすサインをそれなりに出しているにちがいない。
樹液に含まれる成分から、ツキノワグマが反応するある種のニオイがあって、鼻のいいクマがそれをキャッチしながら皮を剥いでいるのである。
その結果は樹木が枯れてしまっても、クマにとっては大きな自然界の中で計算済みなのである。
いわば、病気の木を「選別」しているからだ。

植林した木だから、人間はそのすべてを収獲しなければ気がすまないであろう。
野菜だって曲がったキュウリができるように、数千本の植林木のなかには100本ほどの死滅木は樹木の生態上折込み済みなのである。
むしろ、クマが皮を剥ぐという行為を私たち現代人に示してくれることから、そのメカニズムを探ってみようと思うことのほうが大切なのではないか。
林業者も森林研究者も、そして生態学者も、こうしたヒントから現代人が次世代のことを考える答えにつながるような視点に気づいて調べて欲しいと思う。

なぜならば、農業での米づくりは毎年秋に収獲の答えがあり、1000年以上の歴史をもって日本人は生きてきた。
しかし、植林して100年後に収獲しようと考えた「林業」の歴史はまだまだ浅く、現代人は答えをもっていないからである。
これに対してツキノワグマは、数百年先を見越した自然時間枠をもって現在を行動しているのだから、20-30年の植林木の皮を剥いで「枯らす」という行為は確かな「答え」のうえでの行動にちがいないのである。
ここに、私たち現代人が自然界のメカニズムを探る上で多くのことを学べるヒントが隠されているような気がしてならない。

写真上:杉の幹に巻かれたビニールテープ。
写真下:ツキノワグマに樹皮をはがされた植林ヒノキ。



2007-06-24 Sun  [ 旅・取材・人 ]

モミジイチゴ

by gaku


中央アルプス山麓では、いまモミジイチゴが最盛期を迎えている。
イチゴといってもバラ科の植物だから、茎にはトゲがあって採るにはけっこうやっかいだ。
しかし、美味しいイチゴである。

このイチゴを狙っているのは、人間だけではない。
サル、テン、クマ …
山の生物の食糧でもあるから、彼らに所有権はある。
そんなイチゴを少しだけ分けてもらおうと渓流沿いにあるキャンプ場近くの道路際で採っていたが、たしかに動物たちが来ているサインがあった。
イチゴの木の周辺の草が何者かに踏まれていたりする、からだ。
こうしたサインを発見しながら、これがもしツキノワグマのものだったら逃れようがないと思ったりもする。
モミジイチゴの生育しているような場所はブッシュが多く、3m離れていてもツキノワグマの体を隠せるだけの環境だからである。

そんなことを心配しながらイチゴ摘みをしているボクの脇に、二人の青年がやってきて声をかけてきた。

青年 『その実は食べられるのですか?』
gaku 『美味しいよ、木いちごだもの…
    あんたたち、どこから来たの?』
青年 『奈良県からです』
gaku 『こういうの食べたことないの?』
青年 『はい…』

そういいながら、恐々イチゴの木に手を伸ばして、食べるでもなく見るだけだった。
なるほど、木いちごを食べるという幼児体験がないと、こういうものなんだなぁーと、内心ボクは感心するやらこの青年たちを観察してみようと思った。

gaku 『奈良県からナニで来た、の?』
青年 『バイク、で』
gaku 『おお、バイクでね
    どうしてまた、こんな場所まで…?』
青年 『自然があまりにも美しいから、キャンプに来たのですよ』
gaku 『ほほぅ キャンプね
    渓流の水はきれいだし、森や林もあって、イチゴもあって、いいだろう?』
青年 『はい、最高デス』
gaku 『こういう自然の豊かなところには、クマもマムシもいるから気をつけるんだ、よ』
青年 『っえ! クマがいるのですか?』
gaku 『あったりめぇだよ
    このキャンプ場周辺にはいくつもクマがいるから、ね
    それもでかいのは100kgを超えるのが目撃されている、よ
    この木いちごだって、ツキノワグマの大好物さ
    それを、ボクも分けてもらっているんだから
    ほれ、そこのイチゴの木の脇の草が寝ているだろう
    それだって、クマがやったのかも知れない、よ
    ほら、ボクがこうやって草を踏むだけでも、こんなにも草が寝るでしょ
    イチゴだけ見ていてもわからないが、こういう草がどうして寝ているのか…
    そういったところまで目が行届くようになることって、自然のなかでは大切なんだよ
    ついでに言うけれど、美しく豊かな自然にはクマもマムシもスズメバチもセットになっているものだからね』

このひと言で、青年たちは固まってしまった。
ちょっと脅しすぎたかな?と思ったけれど、これが山の事実なのだから仕方がない。
道路脇という簡単な場所でも、そこは中央アルプスの山懐である。
ボクの足ごしらえはマムシ避けのゴム長靴、腰には山鉈と熊撃退スプレー、ときどき甲高い声を鈴がわりに発しているではないか。
このスタイルを、「田舎のおっさん」特有のファッションと思われても困る。
現場ファッションは、その場の環境にもっともフィットしているのが自然なのだからである。


写真上:モミジイチゴは初夏の山からのプレゼント。
写真下:あっというまに帽子いっぱい採れてしまう。

2007-06-22 Fri  [ 哺乳類・野生動物 ]

山くじら

by gaku


隣のとなり町に住んでいる知り合いの農家のオヤジから電話があった。

オヤジ 『gakuさん、ヒマかぁー? すぐに来いやーい』
gaku  『なんだぁー? ヒマじゃあないけれど、隣町を走っているところだぁー』
オヤジ 『いいからすぐに来い、イノシシのどざえもんさぁー』
gaku  『よし、わかったぁー すぐに行くよぅ』

コンクリートの農業用水路にイノシシが落ちて死んでいるという話は、このオヤジがよく話してくれていたので興味があった。
さっそく農家に着いてみると、オヤジは慌てるふうもなく穏やかだった。

オヤジ 『まあ、待てよ 』

そういって、家から持ち出してきたスーパーのレジ袋。
なんと、そこにはずしりと重たい生肉が入っていた。
2kgいや3kgは、あるだろうか。

gaku  『なんでぇー 今のこの時期のイノシシなんて食えるのかぇー
     しかも、血抜きがちゃんとできているのかぁー?』
オヤジ 『前にも言ったことあるけれど、冷たい水に落ちたイノシシは、体内の血液がすべて内臓にあつまるから大丈夫。     
     シシ16っていうけれど、16貫目くらいのイノシシが柔らかくてうめえぞ
     こいつは3年仔で、50kgくらいだった
     落石にあったらしく、内腿が大きく内出血していた
     そのまま水路に落ちて、オレんちまで流れてきたのだろう
     鮮度がよかったから、食える…
     まあ、もってけぇー』

gaku  『・・・・ 』

いやー まいったなぁーと思いつつ、確かに肉は美味しそうな色をしている。
それに、冬のイノシシ肉と味がどうちがうのかに興味があったので、ボクも一口食べてみることにした。

肉の大きなブロックは「焼豚」に、バラ肉は「ぼたん鍋」にしてみた。
しかし、冬のイノシシ肉とは全然ちがう味だった。
焼豚もぼたん鍋も、どこかで経験したことのある味なのである。
それは、まさに「鯨大和煮」の缶詰の味そのものだった。

なるほど、イノシシのことを「山鯨」ともいうが、どうして山鯨というのかボクはこれまで分からなかった。
日本では昔からイノシシ肉はさかんに食されてきているが、山間の住民たちが「山鯨」と呼んだ意味がこれでやっと理解できた。
脂がまったくのってない夏のイノシシ肉は、今日のように流通の乏しかった山人たちにとってはたいへんなご馳走だったにちがいない。


写真上:これは交通事故に遭って死んだ2年仔の写真。
写真下:ボタン鍋にしてみたが、冬の肉にくらべれば格段に味は劣る。


2007-06-19 Tue  [ 環境・ゴミ・現代社会 ]

熊にご注意

by gaku


昨日の昼ちょっとすぎだった。
中央アルプス山麓の高原地帯につづく遊歩道に、3-4歳くらいの男の子をつれた若いお母さんが散策を楽しむ姿がみえた。
おもちゃみたいな小さなリュックを背負った子供は、山の道をやっと歩いているといった感じがした。
お母さんは、みどりの林を歩く気持ちよさを全身に感じているのか、一歩ずつ踏みしめる喜びが後姿ににじみでていた。

この母子をボクは、100mくらい離れた道路から車の運転中に目撃したものだったが、そこには熊がふつうにいる場所でもある。
幼児連れでの山中散策はあまりにも「危険だなぁー」と思いながら、ボクは一瞬の通過をしてしまった。
近所にはボクの無人カメラが設置してあり、毎日の見回りから熊の動きが分かっている。
ただ、ここ10日ばかりは熊の動きがなく、近所に出現がないものと判断していた。
だから、熊の潜行状態までは把握できてないけれど、たぶん大丈夫だろうと思ったからでもある。
もっともこういう散策は自己責任だし、高原にはこういう人たちがけっこう多いので指導もしきれないのが実情だ。
しかも、その遊歩道の入り口には「熊注意」の表記がちゃんと出ているので、この母親はそれを読んで歩きだしているのだからやはりそこは個人判断に任せるべきであろう。


この直後に、東京の編集者から携帯電話が入った。

編集者 『秋田県で山菜採りの人が熊に襲われて死んだらしいね。
      顔や全身に噛まれたりひっかかれた傷があったそうな。
      ネットでもこのニュースが読めますよ。』

この日の長野県の新聞には、県内でタケノコ採り中に足を滑らせて転落死したニュースが載っていた。
ボクはてっきりそのことと勘違いしていた。

gaku  『今朝の新聞にもでてたね。
      ヘリコプターが探したらしいけれど、転落死したって書いてあった、よ。
      熊にやられたなんて書いてなかったけれど、やっぱり熊だったの…? 』

帰宅して秋田県版の新聞をネット検索したら、たしかに死亡事故が載っていた。
長野県と秋田県の事故を、ボクは混同していたのだった。

結局、ボクが目撃した母子は無事に散策を楽しんだようすだった。
まあ、熊の事故に限らず、マムシやスズメバチ、落石など山中での事故は、かなり「運」がつきまとうような気がする。
その運も、ちょっとした注意力で良運になるか悪運になるかが分かれてくると思う。
しかし、そうした「注意力」も日ごろからの自然界に対する気配りからくるものであろう。
「死はつぎなる生命をささえる」という言葉があるように、山菜採りにしても自然散策にしても、ちょっとした情報には敏感になり自分自身で考えていくことは必要なことと思う。

少なくもボクの母親は、ボクが小さかったころはこのような山中へは連れ出さなかった。
そして、自然界での怖い面だけはうるさいように諭してくれていた。

写真上:遊歩道に出現するツキノワグマ。
写真中:その遊歩道には熊注意の表記がある。


2007-06-18 Mon  [ 料理・食 ]

焼きタケノコ

by gaku


ゴーヤ苗@180円。
近所のホームセンターで売られていたので、早速3本買ってきた。

最近は家庭菜園に凝っており、何かにつけて土いじりをしている。
土いじりは、心底癒しになるから楽しい。

ゴーヤ苗も植えてから1週間ほどで活着が進みはじめたから、添え木が必要となってきた。
そこで、プラスチック製の「イボ竹」を買ってくればラクなのだが、エコを考えてスズタケを調達してきた。
スズタケは道具のなかったボクの子供時代には釣竿として貴重な存在だったので、生えている場所は先刻承知済みである。

スズタケ林で何本かを調達中に、親指ほどの太さのタケノコが生えていることに気づいた。
スズタケのタケノコなんて食べたことがなかったし、これまで食べようとも思わなかった。しかし、その姿を見ていたら、ひょっとしたら美味しいかも知れない、という好奇心が芽生えてきた。
ダメもとで、30本ばかり採って帰ってきたのである。


夕方になったので、畑に七輪を出して炭火をおこした。
炭火でタケノコを網焼きにしてみようと思ったからだ。
美味しいか不味いかはやってみるまで分からないが、畑仕事で汗もかいたことだから、キンキンに冷やしたビールだけはやるつもりだった。

タケノコは、皮のまま蒸し焼きにしてみた。
ほどよく焼けたところで皮をむき、生醤油につけてパクリ。
いやはやこれが、絶妙な味なのである。
スズタケがこんなにも美味しいものだとは知らなかった。
何故早くこの美味しさに気づかなかったのだろう、と後悔してしまった。
自然界で胃袋に直接響くこのような発見は、とにかくうれしいものだ。
これで一つスズタケを見る目も変わるし、畑仕事の楽しさも加わるというものである。


写真上:やっと根付いたゴーヤ苗。
写真中:スズタケのタケノコは、ラクに収穫できるのがいい。
写真下:炭火は贅沢な食べ方のひとつかもしれない。


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