イチイガシの実

大分県の清川町にある小さな神社で、ボクはドングリを拾っていた。
ドングリは、イチイガシだった。
小指の頭より小さなドングリを、ボクは丁寧に一つずつ拾っていた。
あまりにも美味しそうにみえるドングリだったし、あまりにもたくさん落ちていたし、信州では見られない形をしたドングリだった。
とにかく、ドングリをみたときから、ひょっとしたらこれで「絵本」ができる、と思ったからだ。

山野のフィールドにドングリをてんこ盛りにしておいて、その現場を定点撮影していけばいろんなドラマがみられるにちがいない。
そう思ったから、大のおとなが小さなドングリを夢中になって拾うのも楽しいものである。

そんなボクを見つけて、「こんにちわ、何しているのですか?」と声をかけてきた少年たちがいた。
見れば、そろいの野球ユニホームを着た6人ほどの中学生が自転車で通りかかっていたのだった。
礼儀正しい、素直な少年たちだった。

ボクはドングリを拾っている理由を説明してあげた。
すると、「僕たちも手伝いましょうか、ドングリ拾ってあげますよ」と言ってきた。
一粒ずつドングリを拾うのだから手数は多いほうが助かる。
すかさずボクは、ドングリ拾いをお願いした。

少年たちとはドングリを拾いながら、それはそれは楽しい会話ができた。
ボクからの質問に生徒からの質問。
とにかく、お互いに新しい発見の言葉だらけで、会話もどんどん弾んでいった。

聞くところによれば、
野球部は11人しかいないそうだ。
練習もなかなかに厳しいらしい。
そして、中学校の全校生徒は54人。
小学校からみんな一緒だから、全員が同級生のようなものだといっていた。
ある生徒の爺さんは、イノシシを捕まえている猟師だともいう。
シカが増えすぎて、1kmに47匹もいるのを数えたことがあるともいった。
さらには、「駅ビル」のあるような都会にもあこがれるけれど、夏は透明度の高い川で泳げるから自然があっていい、ともいう生徒もいた。
そして、ボクの本づくりの話題にも及び、「死を食べる」を読んだことがあるといってその著者である本人とドングリ拾いができることをとても喜んでくれた少年もいた。

そんな話しをしていたら、ドングリはあっというまに10kgほどが拾えてしまった。
生徒たちも、そろそろ飽きてきたみたいだったからボクもドングリ拾いを切り上げた。
最後にお礼を言って別れたが、生徒たちに本を送ってあげる約束もした。

清川町は広くて大きな町のように感じたが、中学生が54人とは少子化が全国的にほんとうに進んでいることを改めて感じた。
この生徒たちが高校生になるころには、拾ってくれたドングリがモデルとなった絵本をなんとか完成させたいと思う。

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イチイガシの実 への6件のコメント

  1. オーロラ より:

    少年たちにとっては、一生忘れられない出来事だったでしょうね。自分の持っている本の著者と偶然出会えて会話をして、本を送ってもらう約束ができた…なんて! その少年にとっては夢をみているかのような時間だったでしょう。
    楽しいドングリ拾いでしたね。

    それにしても、『ドングリのてんこ盛りの定点撮影』…なんて面白そうな企画!
    結果が今から楽しみですね。

    • gaku より:

      >『ドングリのてんこ盛りの定点撮影』…なんて面白そうな企画!
      そうなんですよ、ぜったいにオモシロイんですがね!

  2. oikawa より:

    日本の家の周りで写真を撮っていると、登下校の小学生が、挨拶をしてくれます。
    礼儀正しい子供たちだと思ったら、怪しい人には、そうやってけん制しろと学校で教えているらしいです。

    • gaku より:

      >怪しい人には、そうやってけん制しろと学校で教えているらしいです。
      っえ、そうなの?
      やっぱり、オイラは怪しいのかなぁー??

  3. 野人 より:

    僕も30年以上前に、宮崎さんの絵本にサインを書いていただき、今でも大切な宝物にしてます。
    少年たちが宮崎さんのメッセージを感じ、後に続く大人になってくれればと思います。
    どんぐりてんこ盛りレストラン、たくさんのお客さん(動物)で繁盛すれば楽しいですね。
    今年もたくさん、勉強させていただきありがとうございました、良いお年を。

    • gaku より:

      最近の大人も子供も、机上での理論派ばかりになってしまっているのは残念なことです。
      やはり、現場に入るといろんな発見ばかりなので、ボクはそこを大切にしながら発信を心がけているつもりです。
      野人さんのような人と話をすると、ほんとうにいろんなヒントが浮かびますからうれしく思います。
      なので、これからもどうぞよろしく、です。