キツネ道

いま、1週間にいちど出かけている場所がある。
滑落しそうに急峻な斜面を150メートルほど下って川へでて、その川を渡ってたどり着いた先に無人撮影ロボットカメラがあるからだ。
かなりきつい行軍だが、往復40分ほどかかる。
まあ、いい運動だと思って、きついのも我慢してカメラのメンテナンスをしている。

そんな川を渡るときに、石と石の間を走り幅跳びで越えていく場所がある。
雪のあるときは滑って危険なので、川の浅瀬をみつけて迂回して渡渉している。
その走り幅跳びの石の雪の上に、キツネの足跡があった。
どうやら、この石をキツネも「走り幅跳び」していたのだった。
この足跡は、2週間前にも見たし、そのあと雪が溶けてさらに新雪があったところへのこの足跡だから、これでキツネが確実に使っていることがわかる。

この場所に、無人撮影ロボットカメラを設置すればキツネの躍動感あふれるダイナミックな写真が撮れる、と「絵コンテ」が浮かんだ。
しかし、今年はもう無理だと思った。
それは、2月も半ばとなればこれから春の増水期となる。
カメラは油断しているとあっという間に流されてしまうからだ。
早春の雨は半端でない量がいきなり降るから、悔しいけれど、今年はあきらめよう。

石を見れば、きれいに洗われているので、絶え間なく増水にみまわれていることが見てとれる。
無人撮影ロボットカメラは、これまで何回となく増水に流されてきたから、このような現場での撮影には用心深くなってきているオイラだ。
来シーズンの厳冬期を狙うしかないだろう。
しかし、それまでこの石を走り幅跳びしていくキツネが存命中かは分からない。
個体が代わってしまえば、ここを飛び越えていかない可能性もある。
石だって、増水して流されるかも知れない。

まあ、このように「絵コンテ」を描いても確実に遂行するには時間がかかるしリスクも多い。
自然界というところは、机上ではぜったいに描けない伏兵ばかりなのでチャンスをつかみにくいことでもある。
だけど、プロとしてはクオリティーの高い仕事だけは絶えず残しておかなければならない。
こうした現場を自分の目で発見しただけでも、撮影プログラムがひとつできた。
オイラの写真作法は、いつもこんなカンジで出来ているのである。

写真:
1)この石をキツネが弧を描いて越えていく。
2)雪には、踏切り台がしっかり記録されていた。
3)1983年に撮影したキツネだが、そろそろ新しい写真も欲しくなった。

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キツネ道 への11件のコメント

  1. 一昨日、生まれて初めてウサギの足跡を見ました(雪の上)
    前足はチョンチョンと並行に揃えて、後ろ足は2個縦に並んでいました。
    キツネの足跡も何かそれと分かる特徴がありますか?
    雪の上は鳥の足跡やら沢山あって面白いですね。
    超初心者なので、なかなか見分けが付きませんが・・・

    • gaku より:

      キツネの足跡は一直線についていきます。
      ときによっては、意外に足跡自体は小さくみえることあります。
      テンの方が、大きく感じることも。
      雄キツネだと、マーキングをしますから尿臭を覚えておくこともコツです。

      • そらとびねこ より:

        TVで野生動物物を観ても、つい歩き方を見てしまう今日この頃。
        雪国では、朝起きたら雪の上に足跡いっぱいのワンダーランドですね。
        いいなあ。
        湖北に住んでいるとき、雪の中をほっつき歩いて足跡を見てミラクル!って喜んでいました。
        動物に興味を持つ少数の人以外の住民にとっては、そんなことはフツーで面白くもなんとも無いみたいでした。

        • gaku より:

          >雪国では、朝起きたら雪の上に足跡いっぱいのワンダーランドですね。
          それは、裏をかえせばそれだけ身近なところに野生動物たちが多い、ということなんです。
          雪がないと、そのことにも気づかない人間たちのほうが大多数だと思います。
          イマドキの野生動物たちは、それだけ普通に人間観察をしたうえで行動していると思っていいでしょう。

  2. m爺 より:

    >そらとびねこさま、
    あなたも騙されましたね、、、
    足跡は分からないからこそ、面白くてはまってしまいます。
    「並行に揃えて」は後ろ足、「2個縦に並んで」は前足なんですよ、、、
    初めて見る時はみんな試行錯誤です。

    • えー!ホントですかー。
      どっかでウサギの跳ねる様子をみなくては!
      考えてみたら両足揃えてジャンプした方が効率いいですね。

      • gaku より:

        >考えてみたら両足揃えてジャンプした方が効率いいですね。
        そうやって、考えてみることが大切なんですよ。
        自然界は、「サイン」として情報提供してくれますが、それをどう読み解くかによって探偵度が極端に変わってくるからです。
        ノウサギの足跡をみて、前肢と後肢の特徴を考えて、どう屈伸運動しているかを想像していけばかなり面白くなりますから。

  3. akke より:

    夜、キツネやテンが川を飛び越える写真を見た当時、生き物たちがとる活動の驚きと、撮影の斬新さで釘付けになったことを覚えています。
    撮影は30年も前でしたか。
    退色してきたようですが、いろいろなことを物語る写真は、いつ見てもやはり素晴らしいです。

    • gaku より:

      クオリティーの高い仕事をしても、なかなかにその写真を読み解いてくれる人が少ないからモチベーション下がります。
      でも、やるっきゃない、ですが。

      >退色してきたようですが、
      印刷物をテキトーにデジカメで複写したものですから、再現が悪いと思います。

  4. 北の狩人 より:

    良いですね、私もこんな写真をいつか撮ってみたいです。
    私の場合は、運が良ければの話ですが(笑)

    • gaku より:

      雪は、思いがけない動物たちの行動を教えてくれるから、丁寧に観察して分析していけばチャンスはあると思いますよ。
      「運」ではなく絶対にできます、とも。