塩化カルシウムが野生動物を増やす…


(シカが塩場をめぐって喧嘩をしている)

凍結防止剤として散布される「塩化カルシウム」。
私たちは何気に便利さを感じているだけかもしれないが、実は野生動物たちには大変なことになっているのだ。

塩化カルシウムだから、化学的な人工の「塩」である。
この塩が、全国的に津々浦々まで凍結防止剤として散布され続けている。
ということは、本来は塩分に乏しい野生動物の生活エリアに、私たち人間が「塩」を配達してあげている、ということになるのである。


(高速道路の融雪剤散布状況、NEXCO西日本ポスターより引用)

高速道路をはじめ、国道、県道、市町村道。
とにかく、車の走るところならば冬期間はどこにでも大なり小なり散布されているのが実状だ。
長野県だけでも、2010年度に県が使った塩化カルシウムは、25kg袋に換算して84万袋。
この数字だけでもスゴイが、高速道路、国道、市町村道なども含めれば、さらに膨大な量となる。


(カメラは、このようにして設置されている)

この塩化カルシウムが、高速道路の橋の下に大量に流れ落ちる場所があった。
そして、土に滲みこみ、土壌でミネラル分となって、雨が降ると再び地表に浮き出てくる。
それをニホンジカが夜な夜な出現しては、表土を舐めていく。
そこは一級河川敷だったので、国土交通省から許可を得て、無人撮影ロボットカメラを設置してみた。


(雄ジカもまじえて深夜に塩を舐めにやってきた)

カメラは、今年の1月から稼働しているが、ここへきてシカたちが頻繁にやってきては塩カルを舐めている。
日没と同時にやってくるものから、深夜、明け方…と、とにかく夏に向かってシカたちは塩分とミネラル分を体が欲しているようだった。


(5月にはいってからはとにかく頻繁にやってきている)

カメラで監視してみると、どうやら60~80頭くらいのシカたちがやってきているようだ。
しかし、昼間など、周辺地域でシカを1頭も目撃しないから、地域住民のだれもがこんなにシカが生息しているなんて思ってもいないだろう。


(なんの変哲もない風景だが、この高速道路橋で塩カルとシカたちの増加ドラマが密かにはじまっているのだ)

これが、今日社会の自然に対する私たち現代人の認識だと思う。
「シカが増えて困ったこまった」といっているが、スパイクタイヤが禁止になる1991年以前から、私たちは塩化カルシウムを膨大に使用しつづけてきた。
こうしてすでに、30年の歳月が流れてきているが、全国的にニホンジカの激増と塩化カルシウムの散布がピタリと一致していると思う。
まさに塩カル散布現場は、野生動物にとっては「郊外ドラックストアー」でもあり、塩カルは「サプリメント」となっているからだ。


(土の色が変わったところは、すべてシカが舐めたところ)

シカをはじめとして、クマ、イノシシ、サル。
この4大動物はこの30年間で確実に増えてきている。
塩化カルシウムとの関係に注目して野生動物を見ている学者は、聞くところによれば北海道大学に一人だけいるそうだ。
あとは、オイラ以外み~~んな無関心。


(おびただしいシカの足跡)

だからオイラは、30年まえから「塩化カルシウム」と「野生動物」の関係を意識してきた。
そして、まずはこのような写真を撮って視覚言語化しなければならないと思ってロボットカメラを設置したまでだ。
今や人間社会も監視カメラの時代。
「黙して語らない自然界」を探り的確な答えをだしていくのも、監視カメラだと思う。

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塩化カルシウムが野生動物を増やす… への8件のコメント

  1. 前澤 毅 より:

    そんな事とは知らず、路面凍結は危ないから、行政に早く塩カルまけっていつも言ってました。人間にとってもカルシウムは必要なものだけど、まさか動物のサプリになっているとはしりませんでした。

    • gaku より:

      ニホンザルが道路の塩カルを直接舐めてる写真もありますが、林道工事したコンクリート堰堤や擁壁から浮き出てくる「アク」などもカモシカやサルが舐めている現場を目撃しています。
      人間社会からだとマイナス面ばかりを見てしまいがちですが、野生動物たちには「新薬」となっていそうなプラス面にも目を向けて今後も見守っていきたい、と思っています。

  2. てっちゃん より:

    一枚目、カンガルーの決闘シーンみたいで、面白いですね。
    塩カルは、北海道みたいに、凍結の厳しいところでは、撒いたら、氷面だけ氷が解けて、下が凍って、逆にスリップしやすくなることがあるようです。

  3. てっちゃん より:

    氷面じゃなくて、表面の間違いでした。

  4. Kinny より:

    こんにちは。国立公園のレンジャーなどの人たちは、こうした事実を知っているのでしょうか・・・最近出来た友人にレンジャーの友人がいるので今度話してみます。行政の旗振りは、塩カルでカネを使い、シカ駆除でカネを使い、金を使うことが判断の基準になっているのではないか?とたまに思うほどです。そもそもシカを増やさなかったら要らなかった税金は一体いくらに登るのでしょうか・・・。とはいえ、私自身も冬山に登山するので除雪の恩恵を受けていますが塩カル以外の除雪方法を模索することはあまり提唱されていませんが、重要なのではないかと思いました。

    • gaku より:

      Kinny さん
      少しずつ塩カルのことに気づきつつある人はでてきているのはないかと思います。
      が、しかし、今回のように検証までやっている人はいないのではないでしょうか。

      車社会となり、免許証をもって車を運転する人がちゃんとタイヤチェンを巻いて雪道は細心の注意を払って行動すれば、このような問題は起きないと思います。
      田舎でも、冬期にタイヤチェンをもっている人はほとんどいませんし、巻き方も知らないドライバーばっかりです。
      禁止となったスパイクタイヤも、雪がない季節まで履き続けてきましたから粉じんの環境問題に発展して「使用禁止」となりました。
      その結果登場してきたのが「塩化カルシウム」の散布なのです。

      まあ、ドライバー全員の横着が引き起こしていることだと思います。

  5. oikawa より:

    最近色々有って、落ち込み気味だったけど、gakuさんの写真見てたら元気が出てきました。
    残りも少し、がんばって写真撮らないと。まだまだホンデュラスから伝えたい事いっぱい有りますからね。

    • gaku より:

      oikawa さん

      落ち込み、ですか?
      まあ、そういうときは気持ちもおおらかになって前向きに行きましょう!