テレビ朝日で放送した「ふしぎの森の冒険・母子グマ愛と感動物語」を見た。
発信機をつけて追跡していたツキノワグマが寝ている崖穴の近くに無人カメラを仕掛けたそのカメラに突進して、カメラを壊すシーンがあった。
カメラを見つけて睨み向かうまでの小走りのスピード感と、映像が乱れていくまでのあの一瞬に、ツキノワグマの怒りがすべて出ていた。
いや、あのシーンを見た全国の視聴者のほとんどすべての人は、怒りの本質を見抜けなかったと思う。
だが、見れる者には、それが分かるのである。
ツキノワグマは、無人カメラ周辺についている発信機をつけたり、お仕置きをした人間の臭いを嗅いで、怒りをあらわにしたからだ。
これまでにも、冬眠穴を狙ってカメラを仕掛けて、それを壊されるシーンはテレビでもたびたび紹介されてきているが、それに対しての的確なコメントがなされてこなかった。
昔ボクも一度だけ、カメラのストロボをツキノワグマに叩かれたことがある。
しかし、それはツキノワグマをいじめていた人の案内で山に入ったからだ。
以後、自分のフィールドでは何頭ものツキノワグマを撮影してきているが、カメラを襲われることは一度も起きていない。
こうした体験から考えても、ツキノワグマは非常に賢く、嫌な記憶をつくった人間には復讐をするとボクは信じている。
昔のマタギは一発でクマを仕留められずに「手負い」にしてしまったら、自分が殺されるといって猟をやめたほどだ。
研究のために、人員をきちんと確保してツキノワグマを追跡することはとても大切なことだ。
しかし、クマの行動に責任をもてないまま「お仕置き放獣」といって捕獲しては再放獣をしつづけることは、クマにとっても人間にとっても、まだリスクが大きすぎると思う。
放獣したクマに絶えず人員が寄り添い行動を把握できない「お仕置き放獣」なら、手負い熊を増産しつづけるだけのような気がする。
番組のなかには、そうしたヒントがかなりたくさんあることをボクは見ていた。
(写真は、捕殺されたツキノワグマの牙。)
長野県伊那谷にて。
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今、ビデオを見たところです。
「いくら」と名付けられた、お仕置き放縦の熊が、無人カメラに突進して、カメラをはたく所は、圧巻でした。
にもかかわらず、その、熊の行動について、何の説明もない。
そして、このケースでは、お仕置き放獣が、あたかも成功したかのような印象を持たせて、番組みが終わって行く。
時間と労力をかけて作ったことが見て取れる番組だけに、なぜ、もう一歩踏み込めないのか、とても歯がゆい思いをしましたが、お仕置き放獣を実行しているNPOの案内で、番組みを構成しているの以上、あれが限界なのでしょうか。
某大食いタレントを仕立てて、食と熊のダブルプロットで番組を進めたのは、電波の無駄遣いです。
私もすごい期待して何処にも行かず見ていたのですが‥消化不良のような気分になってしまいました。
もっと熊と自然と人間との関わりだけに絞った番組にして欲しかったと思いました。
「死」についてのコメントはとても説得力がありました。
「死」を学んでからあの番組を作った方がよかったと思うのですが。
期待を持って見ていましたが唯一、オォ!と見たのはいくらがカメラを壊すシーンでした、でも何故壊したのかのコメントも無く物足りない番組でした。あれもこれも出てきてブナの森は大切と言う事はわかりましたがね~。
牙が大きくて迫力あります。肉もバッチリ食べられる雑食動物ですね。
牙も前歯もしっかり格納される構造にも感心します。
磨かない割には歯がキレイですね。固い植物とか食べるからでしょうか。
あ、忘れてましたがそれから、、、「お仕置き放獣」って、少しニンゲンの傲慢って感じがします。
アメリカでもやってますが、それを真似したのでしょうか。
犬に関しても、gaku先生の話では元々日本には放し飼い犬の文化があったそうです。それで、なんでアメリカの熊よけ犬を輸入しなければならないのか、理解に苦しみます。
全然環境が違う米国より、先人の文化を大事にするべき、と思うのですが。
また、長い肉食の歴史がある信州に「ジビエ」なんてコトバを用いるのは失礼だと思います。
見逃してしまいましたが・・・
かなり昔、NHKがツキノワグマを取り上げた番組を見たことがありますが、あの時はテントに隠れてカメラマンが待機していてトライしました。
嗅覚のするどいツキノワグマ相手にあれでは無理だろうと思っていましたが案の定駄目(撮影はできたけど、満足な映像ではなかった記憶がある)でした。
今回は無人での撮影だったのですね。
みなさんコメントありがとうございます。
ツキノワグマは、ほんとうに賢いので、付き合うのは難しいです。
まして、撮影となると、相手の気持ちが許してくれないかぎり不可能です。
発信機をつけられたクマも、やがては発信機だけ落ちる仕組みになっています。
個体数は少なくてもいいですから、発信機をつけたものは一生涯にわたって徹底的に調べ上げていく調査も必要です、ね。
まあ、いろいろな意見がでてきて、調査などにも軌道修正が行われていくのですが、フィールドへ出るボクとしては「手負い熊」にだけは襲われたくない、です。