月光浴 3


今年3回目の満月が、めぐってきた。
今夜は、かねてからモデルになってもらってきた「柿の木」を訪ねた。
この柿の木は、91歳になる。
大正3年2月に、この地で生まれた「おばあさん」の誕生を祝って植えられたものだ。
以来、柿の木はここに立って、
人の生命、農業の歴史、現代社会の繁栄、過疎化、電気エネルギーの無駄づかい …など、
静かに伊那谷の人々の心を見つめつづけてきた。
大正3年に、ここに植えられたときは、下界に電燈なんてなかったから真っ暗だった。
もちろん、車も、高速道路も、なかった。
91年の間には、おばあさんにも子供ができ、孫もうまれて、ひ孫が8人。
そのひ孫はもう24歳になるから、玄孫も時間の問題だ。
しかし、そのおばあさんは孫たちに手を引かれて、下界の灯火の中に降りていってしまった。
柿の木はひとりとりのこされて一世紀の時間はこうして紡がれるが、満月は毎月同じ裏山から昇ってくる。
これからいったいこの柿の木は、満月と何回語り合っていくのだろうか。
長野県伊那谷にて。
E-1

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月光浴 3 への3件のコメント

  1. もっち より:

    今、河川敷のキツネの観察から戻ってきたところです。
    3時間くらいの観察でしたので、キツネの姿を確認するまでには至りませんでした。
    満月の下、双眼鏡越しの光景があんなに明るいとは、今さらながら驚きです。

  2. gaku より:

    月の光をあなどってはいけません。
    あれほど、見事な自然界からの援護射撃はありません。
    そして、月光下では、なぜか素直な気持ちになれます。

  3. 中社 より:

    ああ、いい感じの写真ですね。 
    柿の木はボクの故郷にも印象深いものが1,2本ありました。 残念ながら今は切られてしまっていますが記憶に残っています。