死の宣告


中央アルプス山腹の渓流でイノシシが動けなくなっているという情報が、gaku塾生の釣り人から入った。
どうやら老衰で死を静かに待っているらしい、とのことだった。
とにかく確認してみようということで、雨の中を沢登りしてきた。
イノシシは、老衰ではなくて、事故に遭って左後脚を骨折している模様だった。
体重は60㎏前後なので、まだ若い個体だ。
状況から推して、岩場で脚を滑らせ、そのまま谷底まで転落したのだろう。
それで歩くことができなくなり、ここで安静をとっていたのだった。
いつ事故に遭ったのかは分からないが、鼻先で砂を掘り寝られるように窪みをつくってあるところをみれば、10日以上はこうした状態にあるようだ。
近づくと、牙を鳴らして威嚇してくる。
傷ついているとはいえ、人間に近づかれることは「いい迷惑」だといった野生のプライドが、怒らせているのだ。
このようなイノシシだから、不用意に近づけば、骨折したまま最後の力をためて飛び込んでくる可能性もある。
そのときは、まちがいなくこちらが大怪我をするだろう。
腕の1本くらいは簡単に噛みちぎられるし、事の次第では出血多量でこちらが命取りにもなりかねない。
イノシシの鼻面で突く力は100kg以上あるし、口は30cmもの開口部をもっている、さらにカミソリのような牙と咬噛力は数百kgもの破壊力がるからだ。
可哀想だが、このままイノシシの推移を見守るしかない。
骨折が治癒すれば、それでも生きていくことは可能だ。
しかし、食糧確保ができないのだから、自然治癒力と残された体力消耗との時間勝負となろう。
季節が暖かくなってきているので、イノシシの生命力が勝つ可能性もある。
ここは野生に生きる生命として、結果がどう転ぶかを冷静に見つめるしかない。
中央アルプスは急峻な地形で有名だが、このような場所でも近年はイノシシの増加が目立っている。
ニホンカモシカがやっと歩けるような岩場を、転落することなく行動している個体もいるのだから、このイノシシは判断ミスを犯してしまったのだ。
自然に生まれ、いつかは自然に還っていく「生命」として、その判断は自然界にまかせてみよう。
中央アルプス中腹の渓谷にて。
E-1 50-200mm

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死の宣告 への2件のコメント

  1. 北割H より:

    自然治癒力と体力の消耗との時間の経過により近いうちに結果が出るのでしょうね。
    生命の流れを静かに見守ってみたいですね

  2. C-NA より:

    今日夕方のニュースで釣り人から釣った魚をもらうアオサギを取り上げていました。映像だけ見ていればほほえましい関係に見えなくもないのですが繰り返せば自分で餌を採らなくなるのでしょうね。2匹目も待っていましたが釣り人は2匹目のサカナは池に戻したようです。アオサギも釣っては戻されたサカナも人間の意のままにもてあそばれているようで哀れになりました。釣り人は優しいひとなのでしょうけど?!