散歩道でツキノワグマが人を襲う… 6


『けもの道の四季』を出版したのが1984年10月。
この写真集は、中央アルプス山麓に1982,83,84年と3年間にわたって無人自動撮影カメラを設置したときの写真である。撮影装置は全部で5台を配置して、山麓全体の動物たちの動きを追ってみたものである。
それだけに、手を抜くことなく、3年間を真剣勝負で撮影したものだった。
そのカメラに1回だけツキノワグマが写った。
1983年6月14日12時58分のことだった。
まさに当時としては、ツキノワグマの貴重なショットだった。
あれから22~23年が経過した今回、ツキノワグマは驚くほど簡単にカメラに写るようになった。
「けもの道の四季」を撮影した現場はマレットゴルフ場になってしまって人の出入りが激しいので、当時の場所へカメラを設置するのはやめた。そのかわり300mほどしか離れていない場所に今回は設置してみたのである。
全体の環境や標高的には、前回とほぼ同じと思っている。
それなのに、昨年から周辺でのツキノワグマの動きは大変なものがあった。
ものすごい数のツキノワグマが生息していると考えていいからだ。

ツキノワグマ以外にも、20年ほどの間に、動物相はかなり変化していた。
1983年ころには普通に見られたノウサギがまったく姿を消してしまったし、アナグマもいなくなった。
それに代わって、イノシシとツキノワグマが激増しているからだ。
20年間ほどでこれだけの変化があるのだから、同一地点で数十年間にわたって無人自動撮影という定点観察は「黙して語らない自然界」を探るにはきわめて必要なことである。
なによりも、時間をかけながら長いスパンで自然を見届けていかなければならないことに気づかされたのだった。
そういえば、いまから200年ほど前の中央アルプス山麓では農民が鹿と猪の獣害に悩まされ、数10kmにも及ぶ「猪垣」をのべ7,200人が出て築いたという古文書がでてきている。
当時ニホンジカが中央アルプスに多数生息していたことがこれで判明したのだが、半世紀前まではニホンジカの生息が中央アルプスでは確認されてなかった。それが、ここ2-3年の間に南アルプスから移動してきて確実にニホンジカが定着し、増加傾向にあるのである。
イノシシ、ツキノワグマに加えてニホンジカが増えてくると、これからは住民が三獣苦に悩まされていくのであろう。
散歩道を利用する人たちも、このような動物たちが生息していることを念頭において行動しないかぎり、事故は減らないと思う。
それと、角をもった雄ジカとの交通事故はときには命取りにもなるから要注意だ。
写真:「けもの道の四季」=平凡社 絶版中。
写真:ここに示した写真はほんの一例にすぎず、まだまだたくさんのツキノワグマが出現してきている。

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散歩道でツキノワグマが人を襲う… 6 への3件のコメント

  1. 北割H より:

    この場所の近くへは釣り、写真撮影に入りますが川の音に負けないくらいの声での歌、咳払いが欠かせませんし神経を張り詰めてます。

  2. 土生 より:

    農作物への獣害は猪や鹿よりもニホンザルが深刻ですね。
    南アルプスでは中央アルプスと少し様相が違い、鹿とニホンザルが激増しています。
    今まで生息していなかった我家の周辺にも、ニホンザルが出没するようになり苦慮しています。
    鹿とカモシカの植林被害は増加の一途で、かつて笹のあった山の平は1年で丸坊主になるほど。
    クマの生息数も増加していますが、イノシシは減少傾向です。
    生息数の増減には、自然界の大きな波があるようですね。

  3. いなかもん より:

    先生の「けもの道の四季」は十数年前に買いました。あらためて見直しましたが、あれからこんなに変わったとは。甲斐かどこかにニホンオオカミを祀っている神社があると聞いたことがあるんだが、本当でしょうか。中国から野のオオカミを日本に連れてこようかなんていう先生もいるとか。いまさらそんなことしてもどんなものか。