天然記念物カンムリワシと話せる男


西表島で、カンムリワシの餌付けをしてしまった人にであった。
Nさん、78歳。
農業をしながら、自然と語らうまったりとした時間をすごしている人だった。
カンムリワシの名前は「ぴっころ」。メス、5才。
2001年に、Nさんの田んぼの近くでうまれ、秋に親鳥に追いだされてきたところをNさんとであった。
餌捕りがヘタで、見るに見兼ねたNさんがカエルを捕まえてきて地上に放してあげた。
だが、このカンムリワシの幼鳥はそれでも捕れなかったという。
それならばカニをということで、生きたカニの足をもいで地上に置いたらやっと拾えたのだった。
以来Nさんは、工夫をかさねながらいろんな餌をこの若いカンムリワシに与えてとうとう信頼関係を築いてしまったのだった。
こうしてカンムリワシは5年間、野外でどうしても獲物が捕れない日がつづくとNさんの田んぼにやってきては静かに餌をねだるようになった。
Nさんもカンムリワシが野生で生きていくことを尊重するから、数日に一回しか餌を与えていない。
それでもカンムリワシはよくしたもので、Nさんだけを見分けてこれまで日々行動しているのだった。
だから、知らない人からは絶対に餌をもらわないという。
人間をちゃんと認識している能力には、感心してしまう。

そんなNさんに対して島の中から、
『天然記念物のカンムリワシに餌をやるとはけしからん…』
『カンムリワシの年齢までちゃんと分かるから貴重な行為だ…』、とふたつの意見が入り乱れているようだ。
ボクは、後者の意見を支持したい。
その理由は、何もしないで「保護」だけを訴えている人は多いが、Nさんのように自然を見極めてこのようなことができる人は机上で語る研究者よりはるかにカンムリワシのことを理解しているからだ。
このような人がやる実験こそが、カンムリワシが将来絶滅に瀕したときに「手助け」のできる参考材料に必ずなるからである。
Nさんは、これまでにも年間150頭ものイノシシを捕獲してきている島でも屈指の猟師だった。
それが、今年の台風13号の強風でイノシシは大変なダメージを受けているから、猟はしないといっていた。
『イノシシやオオコウモリはこうして自然界から試練をうけて、また回復してくる。だから、そのときまで待てばいい。このような年もあるさね。ヤマネコも大変だ、よ。』
Nさんは、今冬、イリオモテヤマネコが田んぼの「アイガモ」を襲うことをはっきり予告した。
写真上:カンムリワシはNさんから餌をもらうと、この調理台で食事をしていく。調理台はカラス対策として大きさも工夫されていた。
写真下:カンムリワシはNさんだけしか見極めていないから、こんな距離からでも挨拶をしてくる。
     Nさんにも、このワシの声は特徴がありどこでも分かるというから、「ぴっころ」と名前をつけたそうだ。

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天然記念物カンムリワシと話せる男 への2件のコメント

  1. 土生 より:

    野生動物と対話できる人は、ある意味自然を極めた人だと思っています。
    私もそうありたいと努力はしていますが、まだまだ修行が足りていません。
    野生で自由奔放に生きている動物の餌付けは、誰にでもできる単純なことではなく
    相手のことをちゃんと理解し思いやることができなければ上手くいきません。
    このNさんという方は立派ですね。

  2. gaku より:

    Nさんは、78歳でした。
    このような人は、西表島でも貴重な存在です。
    山奥での農業の歴史なども聞いてきましたが、そういう場所にはカンムリワシもヤマネコも多かったそうです。
    保護するには、山奥での農業の復活がカギでもあるといっていました。
    こういう歴史を知っている人の話を参考にしなければなりません。