りんごパイ


1個120円。
美味しい「りんごパイ」を売る店が近所にある。
サクサクと歯ざわりがよくて、甘からずそれでいて上品な味のする「りんごパイ」。
もちろん、本職のプロ職人がつくるのだから、ホンモノなのである。
とにかく美味しいので、いつも売り切れごめんの店である。
オヤジも頑固で、増産するつもりはない。
うわさを聞きつけて、テレビや雑誌などが取材の申し入れをするが、すべて断っている。
オヤジ 『ウチは女房と二人だけで手づくりしているのだから、個数に限界がある。
     限界以上の仕事をすれば味の補償ができないので、宣伝なんてしてくれなくてもいい。』
そういって、毎日コツコツと焼き続けているのである。
オヤジは、東京オリンピックの年に中学を出た。
菓子職人になりたくて、夜行列車に乗って東京へ修行に向かった。そこで厳しい修行に耐えたのちに、老いた両親を診るべく伊那谷へ帰ってきた。
高原の一角に小さな喫茶店をつくって、そこで細々と生活の基盤を築いて今日となる。
喫茶店の当初はカレーやパスタやらを提供していたが、これもまた美味しかった。
しかし、保健所などの無理難題の衛生指導が重なって、これらの営業をやめてしまった。
そして、調理場を菓子専用に改造して「りんごパイ」だけをつくりはじめたのである。
これが、結果的によかった。
評判が評判を呼び、とにかく「りんごパイ」一筋なのである。
そうなると、地元の業者などが二匹目のどじょうを狙って自分たちでも売りだしたりするものである。
★『お宅のりんごパイは有名だけど、レシピを教えてくれないだろうか?』
★『こんど村おこしでパイの販売をしたいのだけれど、つくり方を教えてくれー』
このような失礼な問い合わせが何件も続いた。
「プロ職人」に対して、これはほんとうに失礼なことなのである。
そんなオヤジが、ボクの顔をみるとこぼすのである。
オヤジ 『俺だって、研究をし努力をしてこの商品を作り出している。
     それなのに、商売をするから教えてくれはナイだろう…
     近所のおばさんたちがお茶飲み菓子をつくるというなら教えてもやるけれど…』
gaku  『いやー 世の中なんてそんなものだぜ。
     他人の技術なんてコレっぽっちも分かってないものが多いから、なぁー
     デパートで吊るしているスーツには正札がついているのに、それをタダでくれー…というような感覚でオレのところにも言ってくる人ってけっこういるよぅ。
     職人の目にみえない膨大な技術に対してはまったく対価を考えない時代だからなぁー 』
オヤジ 『レシピどおりに作っても、絶対に同じ味にはならないけれどなぁ
     しかも、ウチは女房と二人だけだから「人件費」の関係で値段的にも安くおさえられるけれど、ほかじゃあ無理だ、に。』
このオヤジとまったく同じような外観の「りんごパイ」を隣町の菓子店でボクはみつけた。
1個130円だったのでさっそく買って賞味してみたが、味は気の毒なくらいにお粗末だった。
写真:ほんとうに美味しい「りんごパイ」。

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りんごパイ への11件のコメント

  1. 花柄クジラ より:

    この「りんごパイ」は、このようないきさつがあったものなのですね。
    その節は、この「りんごパイ」をご馳走になり、ありがとう御座いました。
    一口食べて、感動しました。
    甘いものを食べない夫でさえ「凄い美味しい!」と言ってましたもの。
    一口で感動するものなんて、そうそうありません。
    いつまでも、そのポリシーで作り続けて欲しいですね。
    世の中には失礼なこと失礼とも思わず言ってくる人が多いのですね。

  2. 小坊主 より:

    リンゴパイの生命線は、パイ皮とリンゴの接するところ。
    ここに、不連続があってはいけません。
    パリパリのパイ皮が、中に行くに従って、しっとりと潤いを持ち、いよいよリンゴに接するところでは、リンゴの水分と甘味を吸い込み、少しもちっとした歯ごたえを持ちながら、なおかつパイ皮の感触であって、しかも、甘味が増えていなくてはいけない。
    このりんごパイは、完璧でした。
    ああ、つばが湧いて来る。。

  3. 寒立馬 より:

    私もこのりんごパイには感激しました。こんなにおいしいのは初めてでした。

  4. C-NA より:

    包装もシンプルで素朴な感じですね。
    お話だけでもごちそうになった気分です。
    ものを作り出して極めた人にしかわからない思い入れがいっぱい詰まった味なんでしょうね。ずっと守り続けてほしいものです。

  5. まみごん より:

    パイのふくらみ具合から察して、
    さくさくっ!とした口当たりが伝わってきます♪
    ああ、たべた~い!
    駒ヶ根に行く楽しみが、1つ増えました(、
    お蕎麦屋さん、りんごパイ・・・(笑)

  6. 西川 より:

    宮崎様こんばんは
    木祖村の西川と申します。2度木祖村のKさんに忘年会に誘っていただいて、宮崎さんにお会いしました。
    覚えて下さっているかどうか判りませんが。
    美味しそうですねえ、このリンゴパイ。私も食べたい!!
    お店の名前も場所もわからないので、探す術がないのですが、何時か判る時が来れば食べられるのでしょうね。
    今年はもう、木祖村でも福寿草が咲いています。
    異常気象は人間にとっては楽でしたが、自然にとってはどうなることか、人間の知恵でははかり知れないことですね。一寸ばかり恐ろしい、ん?ほんとは可也恐ろしいと思っています。私にはどうすることも出来ませんが。

  7. gaku より:

    さすが、食べものには感心のたかさがうかがわれます。
    りんごパイも、よろこんでいることでしょう。
    >まみごんさん
    楽しみが増えました、ね。
    頬ばって、よろこぶ顔が目にうかびます。
    遠山へも一緒にいかまいか、ね、
    >西川さん
    ちゃんと覚えています、よ。
    先月kさんところへ行ってきましたが、雪が降ってきたのでたったの5分おじゃましただけでした。
    いつか、「りんごパイ」をお持ちします。

  8. minかあさん より:

    りんごパイ大好きです。地元生まれ(現在は隣町住)結構食べ歩いているのに知りませんでいた

  9. 粗忽鷲 より:

    ううう…た・食べたい!
    生唾ごっくん!!
    空腹には堪えるワ
    さてラーメンでも食べようかな?!

  10. hosokawa より:

    モモンガさーん、ちょいとご相談があったので
    momonga@owlet.net
    に送ったんですが、エラーになってしまいました。
    アドレス変わりました?私の方の問題ですかね?

  11. モモンガ より:

    hosokawaさん、お久しぶりです。
    メールアドレス変わってませんけど・・何でしょうね・・?迷惑メールボックスチェックしてみますね。
    再送信お願いします。