ばあさん犬の恋


久しぶりに隣町で農業をやっている知人宅へ立ち寄ってみた。
動物好きな知人は、ニワトリから伝書鳩、馬、犬… とにかくたくさんの生きものたちにかこまれて生活している。
近所に住宅もなく、広い農地をもっているから、いつもこれらは放し飼いだ。
ボクが庭に入るが早いか、子犬がコロコロと駆け寄ってきた。
gaku 『なんだぃー いつ、生まれたんや?』
知人 『このメス犬は、17歳だぜぃ それなのに産んじゃったさぁ。
    どうもおかしいとは思っていたんだ。
    前に痩せたイノシシが罠にかかったので、犬に食わせてたら、このばあさんだけが肉をくわえてどこかへ運んでいくん、さぁ。
    ハハーン どこかに彼氏がいるなぁーっと、俺は睨んでいたけれど、やっぱり産んじまったあ。
    まあ、跡目ができていいけど、な。』
知人のところには、このばあさん犬のほかにもすでに3頭の犬がいる。
これらの犬は、みんな猟犬で知人とは阿吽の呼吸で生きている。
ばあさん犬の彼氏がどんな犬で、この子犬が猟犬に使えるかはまだ分からないが、知人のところではすっかり家族の一員になっていた。
犬の放し飼いは法律で禁じられているが、知人はそれを無視している。
理由は、住宅地や農地にクマやイノシシがやってこないように犬を放し飼いにしているからだ。
この飼育法は、日本の中山間地では昔からやってきている伝統文化である。
いわゆる日本犬が犬だけのグループ社会を築き、農地と集落を野生動物の害から守ってきたからだ。
ばあさん犬の彼氏は、どこかの庭先でたぶん鎖につながれているにちがいない。
これが昔なら、この彼氏も知人たちの犬に加わって近所を走りまわっていることだろう。
そんな「彼氏」の思いをこの子犬が受け継いで走りまわる日もちかい。
ボクをみてコロコロと近づいてくるところをみれば、性格もよさそうだ。鎖につながれずに母親とずっと自由な生活をしているので、ストレスもなく性質も従順になっていくのだろう。
昔の日本犬はみんなこうだった。
少なくもボクの少年時代までは、このような犬の飼い方が普通だった。
写真:ばあさん犬の名前は「ちろ」。子犬は「けんた」。

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ばあさん犬の恋 への3件のコメント

  1. 花柄クジラ より:

    放し飼い‥私の子どものころが思い出されます。
    本当に本来の姿ですよね。
    人里離れた 農家の家でも鎖に繋がった犬を見かけます。
    幸せなばあさん犬ですね。

  2. より:

    放し飼い推進論者としては、嬉しくも心温まる話ですね
    犬は、小さい頃に人間が優しく接しさえすれば
    むやみに人を噛むような事はしないし安全だと思います
    犬自体も、元来は社会生活を営んでいる動物なので
    >日本犬が犬だけのグループ社会を築き・・・
    犬本来の姿で生活できて、犬にとっても幸せの感じがします

  3. 小坊主 より:

    放し飼いが出来ない理由は、犬側よりも、人間側に、多いように思います。
    風さんのおっしゃるように、犬に人との接し方を教えるのは、それほど難しくないのですが、逆が、とても難しい。
    犬との接し方を知らない人たちが多いので、散歩していても、人が寄ってくると、引いてしまいますし、相手の様子によっては、触らないでくださいと、はっきり言うこともあります。