夢ふうせん


つい先日、ツキノワグマのフィールドで手紙を拾った。
その手紙は、福井県から風に乗ってきたものだった。
「めっきやさんになりたい」と9歳の女の子が鉛筆書きをして、夢を風船に託したものだった。
風船は、5月3日に福井市から飛ばされた。
福井テレビが「わんぱくフェア」の一環として子どもたちに飛ばさせたのだろう。
その風船が、長野県の中央アルプスを越えて、伊那谷までやってきたのだった。
手紙を拾ったのは5月16日。
手紙は雨に打たれた痕があったので、雨日より前に落ちたことになる。
そこで、伊那谷に雨のあった日を調べてみたら、5月6日と10日に降っている。
これらから予測するに、3日に飛ばされた風船は6日までにはすでに到着していたことがうかがえる。
3日から6日までの3日間は快晴で、風速6-8mの西風が長野県に向かって吹いていた。
こんな状況だったから、6日どころか5日までには中央アルプス山麓の林の樹上に風船がひっかかっていた可能性がある。そして、雨にうたれた手紙が濡れて風船からはずれ、地上に落ちてきたのではないか。
手紙にハガキが入っていたので、ボクはその9歳の女の子に返信をしてあげた。
よろこぶ顔が目に浮かぶが、こういった風船飛ばしは「花の種」などをつけているのではないから夢を育てるには悪くないだろう。
だが、ここで新たな発見をボクはしてしまった。
福井県といえば、原子力発電所がひしめくところ。
ここでもし事故でもあれば、放射能が2日ほどで長野県まで飛来するということである。
その昔、チェルノブイリ原発事故現場まで単身出かけたことのあるボクは、20日間にわたって、現地で広範囲に汚染されている地域を取材したことがある。
そこで、事故発生直後に放射能が高空まで達し、雲に吸収され、その雲が風に流され、やがて雲は合体して雨になり、200kmも300kmも離れた隣国のベラルーシに雨とともに放射能が降ったことを知って愕然とした。
そのためにベラルーシでは、平和で美しい農村風景をつくっていた土地が汚染され、強制移住を余儀なくさせられた村があった。
あまりにもの汚染度に国家によって、住宅や農地をブルドーザーで潰され、強制的に地図から消されてしまった(立ち入り禁止区域)村もあった。
もちろん、子どもを含む多くの人間たちがそのご10数年にわたって苦しみ、死者もでていた。
原発の事故隠しなど、信じられないような状況がつづく現代の日本社会だから、やはりすべてが安全でベストと考えることはできないだろう。
最悪事態も想定しなくてはならないし、そうしたことにも自然がさりげなく大きく関わっていることも視野にいれながら、現代日本の文明社会を安心して生きたいものだ。
「夢」が「悪夢」にならないためにも、現代社会を見据え、自然界を少しでも知る努力をしていきたいと思う。
写真:夢のある手紙がもうひとつの「夢」を、ボクにみさせてくれた。

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夢ふうせん への5件のコメント

  1. C-NA より:

    gaku先生こんばんは。
    どこへ飛んでいくかわからない風船に夢を託して飛ばした9才の女の子がこれからも安心して夢を見続けていられる社会になれば良いのですけどね。
    先日思いがけなくカルガモの親子を見ることが出来ました。雛を見守りながら周囲に警戒を怠らない懸命な親鳥の姿を見て恥ずかしさを覚えました。人間の親子はこれからどうなって行くんでしょう・・。

  2. めっき屋 より:

    先生、御返事ありがとうございました。
    実は私の娘の手紙でございました。
    ご丁寧な御返事を頂いて、娘も本当に喜んで
    おりました。
    ある方からのお知らせで先生のブログを拝見させて
    頂きました。

  3. モモンガ より:

    うわ〜。。。福井まで声が届くなんて・・・・・・インターネットのおかげですね!すごい!
    なんだか夢がふくらみそう(^O^)

  4. gaku より:

    まさかと思いましたが、その「まさか」が的中したのには驚きました。
    手紙を拾ったのも偶然ならば、こうしてブログへの書き込みも、ほんとうに珍しい出来事でもあるからです。
    手紙を拾った直後に、出版社の編集者が訪れていたので、そのことを話したのですが、その偶然性にいたく感動しておりました。
    ある意味、今回のことはとてもスゴイことだったのではないかと思っています。
    平和でありますよう、に。
    めっき屋さん、お嬢さんにどうぞよろしくお伝えください。

  5. tweety38 より:

    はじめまして、めっき屋さんにこちらを紹介したのは私です。
    たじまもりさんのサイトからこちらを知り、
    めっき屋さんのメルマガ購読もしておりまして、
    もしやどなたかお知り合いの娘さんではとお知らせした次第です。
    当のご本人の娘さんだったとは、私もビックリです。
    インターネットって本当にスゴイ。
    この偶然に関われたと思うと嬉しくなります。
    めっき屋さんのお嬢さんが「めっき屋さんになりたい。」なんて、
    お父さんは嬉しいでしょうね。
    注文したことはないのですが、イイ仕事をされているようです。
    ほんわりとイイ気分にさせて頂きました。
    ありがとうございました。