モミジイチゴ


中央アルプス山麓では、いまモミジイチゴが最盛期を迎えている。
イチゴといってもバラ科の植物だから、茎にはトゲがあって採るにはけっこうやっかいだ。
しかし、美味しいイチゴである。
このイチゴを狙っているのは、人間だけではない。
サル、テン、クマ …
山の生物の食糧でもあるから、彼らに所有権はある。
そんなイチゴを少しだけ分けてもらおうと渓流沿いにあるキャンプ場近くの道路際で採っていたが、たしかに動物たちが来ているサインがあった。
イチゴの木の周辺の草が何者かに踏まれていたりする、からだ。
こうしたサインを発見しながら、これがもしツキノワグマのものだったら逃れようがないと思ったりもする。
モミジイチゴの生育しているような場所はブッシュが多く、3m離れていてもツキノワグマの体を隠せるだけの環境だからである。
そんなことを心配しながらイチゴ摘みをしているボクの脇に、二人の青年がやってきて声をかけてきた。
青年 『その実は食べられるのですか?』
gaku 『美味しいよ、木いちごだもの…
    あんたたち、どこから来たの?』
青年 『奈良県からです』
gaku 『こういうの食べたことないの?』
青年 『はい…』
そういいながら、恐々イチゴの木に手を伸ばして、食べるでもなく見るだけだった。
なるほど、木いちごを食べるという幼児体験がないと、こういうものなんだなぁーと、内心ボクは感心するやらこの青年たちを観察してみようと思った。
gaku 『奈良県からナニで来た、の?』
青年 『バイク、で』
gaku 『おお、バイクでね
    どうしてまた、こんな場所まで…?』
青年 『自然があまりにも美しいから、キャンプに来たのですよ』
gaku 『ほほぅ キャンプね
    渓流の水はきれいだし、森や林もあって、イチゴもあって、いいだろう?』
青年 『はい、最高デス』
gaku 『こういう自然の豊かなところには、クマもマムシもいるから気をつけるんだ、よ』
青年 『っえ! クマがいるのですか?』
gaku 『あったりめぇだよ
    このキャンプ場周辺にはいくつもクマがいるから、ね
    それもでかいのは100kgを超えるのが目撃されている、よ
    この木いちごだって、ツキノワグマの大好物さ
    それを、ボクも分けてもらっているんだから
    ほれ、そこのイチゴの木の脇の草が寝ているだろう
    それだって、クマがやったのかも知れない、よ
    ほら、ボクがこうやって草を踏むだけでも、こんなにも草が寝るでしょ
    イチゴだけ見ていてもわからないが、こういう草がどうして寝ているのか…
    そういったところまで目が行届くようになることって、自然のなかでは大切なんだよ
    ついでに言うけれど、美しく豊かな自然にはクマもマムシもスズメバチもセットになっているものだからね』
このひと言で、青年たちは固まってしまった。
ちょっと脅しすぎたかな?と思ったけれど、これが山の事実なのだから仕方がない。
道路脇という簡単な場所でも、そこは中央アルプスの山懐である。
ボクの足ごしらえはマムシ避けのゴム長靴、腰には山鉈と熊撃退スプレー、ときどき甲高い声を鈴がわりに発しているではないか。
このスタイルを、「田舎のおっさん」特有のファッションと思われても困る。
現場ファッションは、その場の環境にもっともフィットしているのが自然なのだからである。

写真上:モミジイチゴは初夏の山からのプレゼント。
写真下:あっというまに帽子いっぱい採れてしまう。

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モミジイチゴ への4件のコメント

  1. 花柄 より:

    昨年5月ごろ、小さな花が咲いていましたね。美味しそうな実ですね。
    旅人(女の子)二人が、キャンプをしたいと言っていたので「最近は熊の目撃情報があるんですよ」と教えてあげたら、顔を見合わせて「え?何処へ行ったら熊に会えるんですか?」これには驚いた。
    脅かしも効かない。自然を知っているものだけが、自然の恐さを知っている。

  2. クワ より:

    「動物園感覚」なんでしょうね。

  3. C-NA より:

    こんばんは、先週私もモミジイチゴをお腹一杯食べて残りを家で苺ソースにしました。
    ここでは以前アナグマを目撃しました。
    クマ出没も時々聞く場所なので一人では行きませんがやはり森の気配は魅力的です。
    目的は花の撮影なので植物にも動物にもある程度遠慮がちに踏み込んでいますがどこからか見られているような気がしてなりません。
    森を抜けた川の土手で子鹿を見ました。
    撮影したくて車を止めたところで姿を消しましたがほんの一瞬の出会いが嬉しかったです。

  4. アルファ より:

    みずみずしいモミジイチゴ、美味しそうで(またそれか・笑)、とてもきれいですね。
    それに可愛い。
    自然に感謝しながら、周囲への「気」も抜いてはいけませんね。