自然を食べるよろこび


中央アルプス山麓の駒ヶ根高原には、「山の店」という珍しいものを食べさせてくれる店がある。
ここの主であるスウさんとは、もう30年以上の付き合いだ。
主の前職は、散髪屋さん。
なので、ボクの頭はずっと彼に整えてもらっている。
だから、散髪のことを「伐採」といえば、阿吽の呼吸で通じるのだ。
そこで、昨日電話をかけておいた。
gaku 『おーい スウさん、伐採たのむ』
スウさん 『おおー わかった、今夜だな』
そういうことなので、ボクは仕事をすませて夕方でかけていった。
彼は早めに仕事を終えて、もう独りで飲んでいた。
酔っ払いの散髪も心配だったが、そこも阿吽の呼吸。
散髪なんてうわのそらで、ボクと一杯やるためにずいぶんと肴を用意してくれていたのだった。
スウさん 『おいgakuさあ、カジカ捕っておいたで、な
       それに、ズケ丼食えやぁー gakuさのために俺つくっておいたで、
       ザザムシもあるぞ…。』
gaku  『やいやい 悪いなぁー』
そういうことで、伐採もそこそこに、二人で囲炉裏を囲んで一杯となってしまった。
スウさんは、山登りではちょっとした有名人だし、自然のことならほんとうによく知っていて体験も豊富。
だから、これもボクとは阿吽の呼吸。

天然のカジカなんて、いまどき捕れる川なんてないくらいに貴重品だ。
それなのに、その川を誰にも教えず、そっと見守ってもいる。
だから、乱獲されないから、大きなカジカを彼はたくさん捕れるのだ。
また、昔にボクが教えたイワタケの場所をもう30年もかけて見守っては、必要な分だけを採ってきてご馳走にしてくれる。
なんたって岩登りの技術は天下一品なので、イワタケなんて彼の手にかかればちょちょいのちょい、なのである。
そして、いまの季節の山ワサビもほんとうに美味しいから、それをちゃんと瓶詰めにしてくれてもあった。
ザザムシも、『ヘビトンボの幼虫が美味いんだよなぁー』といいながら、佃煮もできあがっていた。

カジカの骨酒でしっかり酩酊してしまった二人だが、ボクは伐採代も酒代も払わずに帰ってきた。
これも阿吽の呼吸で、二人には銭が必要ないこともあるからだ。
こうして、地元の山野にある食材で、ほんとうに美味しい時期に食べるよろこびはひとしおである。
田舎暮らしの究極のよろこび、でもある。

写真上:スウさん写真撮るぞとカメラを向けたら、「待てよ」といって帽子をとった顔がこれまたいいのだ。
写真中:カジカの炭火焼き、この骨酒が美味い。
写真下:珍味ザザムシはゲテモノの王者。
写真下の下:囲炉裏での昔ながらの燗つけ器。

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自然を食べるよろこび への5件のコメント

  1. OIKAWA より:

    20年ぐらい前、駒ヶ根にいたことがありました。駅前通りにラーメン大学と言う店があって、ここにいくと阿吽の呼吸で酒を出してくれました。先日、久々に行ったら駅前通りは寂れていてラーメン大学も無くなっていました。残念です。こんなに大きなカジカ食べてみたいです。昔、カジカ突きをやりましたが、こんな大きいのは捕ったことがありません。

  2. 小坊主 より:

    ここの息子さんが、親父への尊敬を隠さない、その素直な態度に、とても好感が持てました。
    今時、息子から尊敬される親父は、そうたくさんは、いないと思います。

  3. OIKAWA より:

    PS ズケ丼とはいったいなんでしょう?

  4. YUJI より:

    立派なカジカですね。一度だけカジカ酒を飲んだことがありますが、あれは美味いですね。

  5. gaku より:

    >今時、息子から尊敬される親父は、そうたくさんは、いないと思います。
    息子が中学2年生のときに、お母さんが病気で亡くなってしまいました。
    それ以来、ここの親父は独りで3人の子供を育て上げました。
    そんな父親の背中を見てきた息子なのです。
    >ズケ丼とはいったいなんでしょう?
    安いマグロの肉をタレに漬け込むのが「ヅケ」。それをご飯に乗っけると「ズケ丼」なんです。
    葉ワサビがどっさり乗っていて、これがまた美味かったです。