自然界を探るのはセンスの問題


2日目は、南アルプスの南部にある聖岳の懐まで行ってきた。
しらびそ峠に展示してある「森林鉄道」で活躍した機関車を見て、その沿革を読んでから、これは行かねばならぬと思ったからだ。
森林鉄道は1940年から工事をはじめ、1972年に廃止されるまで、活躍したそうだ。
その前に、国有林の無尽蔵といわれる森林資源開発がここで行われたことに興味もあったし、その結果を見ておく必要もあったからだ。
そのうえで、現在までを考察しながら、自分の目で確認もしてみたかった。
西沢渡といって、遠山川の奥地にあたる聖岳の懐までが森林鉄道の最終地点なので、そこまでは自分の足で歩いてみようと思った。


聖岳と光岳への登山基地となる「聖光小屋」までは、林道を車で行くことができる。
あとは、森林鉄道のあった路線跡を登山道がわりに進むことになる。
地図では、2,5kmの行程だったが、かなり荒れてもいた。
腰には、ツキノワグマに襲われたときに使用する「熊避けスプレー」と「剣ナタ」。あとは、非常食に双眼鏡、カメラだけの装備。
聖光小屋の主人に挨拶をしてから出かけたが、ルートそのものはきついものではなかった。
道中には、テンの糞やらキツネの尿臭、熊棚なども随所に発見しながらの山歩きだったので、疲労もなく快適だった。
熊棚は、ミズキの実を食べるために昨秋ツキノワグマが登ったものが各所で確認できた。
ミズキをツキノワグマが食べるとは思っていたが、南アルプスでその現場を初めて見て感動した。
なかなかに、ツキノワグマも個体数が多そう、である。

35年も前に開発を終えた国有林なので、樹木そのものはまだまだ若く、これからという状態だった。
なので、魅力的な森は何一つなかったが、これも歩いてみなければわからないことである。
まあ、この開発のあとに、ニホンジカをべらぼうに増加させて、いまでは3000mの稜線まで分布をひろげさせてしまっているが、これも、国有林開発の結果であることはまちがいない。
夕方になって、聖光小屋に戻り、主人と少し話をした。
道中の感想をのべながら、
『熊の出没がけっこうありますね、熊棚がずいぶんとありましたよ。』っと、ボクが言ったら主人はびっくりしていた。
『っえ! 熊棚がありましたか?私は、まだ見たことないですよ。』
ボクは、この言葉のほうが不思議だった。
山に従事している人が、熊棚を見てないことのほうが、驚きだったからである
動物に感心がなくても、熊棚くらいは目にとまりそうなものだが、どうもそれもできてなかったようだ。
まあ、自然の見方なんてそんなものかも知れない。
感心を持っていても、見えない人にはなにも「見えない」ことだってある、からだ。
こんな会話があって、ボク自身がいつも思っていることは、自分自身の目を確かな視線として信じることだった。
そして、センスの問題なんだと。
とにかく、「自分の目で確かめよ」が、ボクの信条だからである。

写真上から:春霞にけぶる雪山が聖岳。
      森林鉄道を走っていた機関車。
      遠山川開発の沿革看板。
      森林鉄道跡のトンネル。
      眼下に流れる遠山川。
      (Nikon D300 シグマ17-70mm)

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自然界を探るのはセンスの問題 への4件のコメント

  1. 北割 より:

    泰阜には熊が居るけど飯田の西側には居ませんよ~、と言う地元の農家の人が居ました
    自分の所は頭から居ないと信じ込んでいるようでしたね。

  2. そういえば、パプアの人は異常にヘビを怖がりました。異常なほどです。カラスがトラックの荷台にヘビを落としそこに乗っていた人が落ちてなくなったという事故もあったそうです。人間が自然界に一番関心があることはやはり食えるか食えないかだと思うのです。そんなことは、彼らよく知ってましたねW。

  3. より:

    あたしの実家の前の川にシーズンオフには30羽ほどのカルガモが群れてます。とあるお父さんが子供に「アヒルだ」と教えていました。まあ都会ですからこれはしかたないです。
    でも信州に住んでみましても、どうも地元の方々は自然を見ていないといいますか、だからか付き合い方が解っていないなと感じました。例:あたしが住んでいた集落に、とても良い湿地帯があって、生態系が豊かでありハッチョウトンボが生息してました。すると地元の方々はそこに観察用の通路を作り、駐車場を完備し、道に案内看板まで設置。「トンボマニア」においでおいでをしてるようなもんです(実際捕虫網もってる人も見た)。
    クマ棚はgakuさんに教えて頂いてからあたしもずいぶんみつけることができましたが、「普通の人」は気づかないでしょう。
    By the way.あたしが以前お世話になったある課長の教えに「まず現場現物を確認せよ」ってコトバがありました。これはとあるメーカーの品質保証本部所属時代の話ですが、なんの世界にも共通だと思います。
    ついでにあたしは「センスのないヤツには何やらしてもだめ」と思います。←オマエはどうなんだ?
    長々と申し訳ありませんでした。

  4. より:

    追伸:
    同じ川に真鯉が20匹ほど群れてます。別のとあるお父さんは、その中に一匹だけ混じっているナマズを見つけ「暖かくなったから、ナマズさんがでてきたよ」と子供に教えていました。この子はいい子になるでしょう。