動物たちへの「餌づけ」って何…!


冬鳥たちが続々と到着している。
そのなかにはハクチョウもいるが、いま「餌づけ」の是非が論議されている。
餌づけによって、ハクチョウなどを一箇所に集中させておくことにより、鳥インフルエンザなどの流行を招く恐れがあることも懸念されているからだ。さらには、彼らの生態系にも悪影響をあたえてしまう恐れがあることも、心配されてのことだ。
たしかに、度の過ぎた餌づけによって、「野良ハクチョウ」や「野良カモ」の姿を見るのはつらい。
しかし、こうした現場を見ながら、ちょっと視点を変えて自然界全体を見てみることも必要だろう。
餌づけ場所でのハクチョウは夜間には現場で寝ているが、カモは寝ていない。カモは夜行性なので、夜間になると周辺の田んぼで「落ち穂」を拾っているからだ。そんな現場をきちんと見ている人なんて、この日本にはいないだろう。
ハクチョウだって、本来ならば昼間に田んぼにおりて落穂ひろいをしている。
マガンだって、同じこと。
ヒシクイなどの雁の仲間は、牧草地やコーン畑、田んぼで餌を食べている。
スズメやキジバトは、田んぼや畑が主要な餌場だ。
ツグミは、ミカン畑やリンゴ園が大切な越冬食料庫。
漁港にカモメが群れているのも、水揚げされた魚類があるからだ。
養魚場にも、アオサギやゴイサギが餌とりにやってくる。
アユを河川に放流すれば、カワウが捕食にやってくる。
サケをどんどん放流すれば、秋の河川にはヒグマがあつまる。
牛馬のために牧場をつくり、牧草地をつくれば、そこにはシカたちがやってくる。
美味しいリンゴやブドウをつくれば、サルやクマもあつまってくる。
有機農法をすれば、イノシシがやってきて畑の土を掘り起こしていく。
広大な面積の山野を伐採して、そこにカラマツなどを植林して40年も放置すれば、カモシカもシカもツキノワグマもサルも、増える。

なのに、ハクチョウに屑米やパンを与えることだけを「餌づけ」といって、人間が活動してきたプロセスでの環境に集まってくる生物には「餌づけ」ではない、という人がいる。しかし、これとて立派な「餌づけ」ではないのか?
人間のための産業活動による社会全体も、はっきりいって「餌づけ」現場なのであって、そこを忘れてはならないのである。
やはり、大きな自然界を語るのには、人間だってその環境に組み込まれている「野生動物」の一種なのだから、人間だけに都合のいい考え方だけでシロクロをつけてしまってはいけないと思う。
人間を含めて自然界全体のジャッジメントは「自然」が握っているのだから、人間の側だけから都合よくモノを見つめるのではなくて、生物の側からの視点で現代のこの時間にある自然界をキチンと見るべきであろう。
そうすれば、現代社会の盲点がはっきり見えてくるからである。
だからボクは、いつもそんな視線で人間社会と、そこに生きる動物たちに目を向けているのである。
そうすると、小さな自然観だけでいつも答えをだしてしまっている現代人の愚かしげな姿も見えてくるから、楽しくてしかたがない。
ウイルスは、水鳥だけが運んでくるのではない。渡り鳥ならば、大なり小なりいろんなウイルスをもっているからだ。そのなかに、人間も組み込まれている、だけの話である。

写真上:コシヒカリやササニシキの銘柄米を作ればつくるほど、それらの落ち穂を求めて野鳥たちも喜ぶことを忘れてはいけない(マガン)。
写真中:河川敷整備緑化で牧草レストランとなって喜ぶエゾシカたち。
写真下:沖縄で田芋をつくれば、その泥土に餌を求めてシギたちが越冬する。

カテゴリー: 旅・取材・人   パーマリンク

動物たちへの「餌づけ」って何…! への6件のコメント

  1. おいかわ より:

    おっしゃるとおりだと思います。人間どうも都合が良いように解釈しているように思います。

  2. ちゃかめ より:

    こんばんは。
    カモが夜行性というのをはじめて知りました。なんか衝撃を受けました。とても夜出歩いてるような鳥には思えなかったのです。
    こういうのも思い込みですよね。
    ただ鳥に餌を撒くだけが餌付けではないと言う事、良く解りました。考えてみれば確かにそうだと思います。
    鳥の餌付けなんて一番小さなものかも知れませんね。解りやすいだけで。

  3. わさびぃ より:

    ・・・自分は会社に餌付けされています・・・

  4. ブリスパ より:

    *昨日阿武隈川のカモの越冬地に行って来ました。
    写真も撮りましたので「web図鑑」の方に関連情報を投稿させて頂きます。

  5. 久万@仙人 より:

    そういえば亀戸に住んでいたころ、裏を流れる旧中川で、夜中にカモたちが水に潜って餌とりをしているのを見かけましたが、その時は、ただ、鳴き声の録音だけに夢中になっていて、あまり深く考えてもみませんでした。幼稚ですね。恥ずかしい。

  6. gaku より:

    そうですね、自然界を語るにはこれまでの定説などと一度リセットして見ていくことが大切だと、ボクはいつも考えています。
    田んぼのなかに、そっとカムフラージュしたカメラを設置して、落ち穂拾い中のカモなんかを撮影したいですね。
    そんな写真も、見たことないしぃ。
    ■プリスパさん、「web図鑑」にいい写真をありがとうございました。
     飯店さんと、2日に飲むよ。出てこない?