借り物の知恵ほど技術を守れない人


いまから20年ほど前になるだろうか、大学を卒業してすぐに写真家になりたいという青年から電話がきた。
ある著名な写真家の名前を出して、
「○○さんは、どんな方法で撮影をしているか教えてください」。
人を介してまだ1回だけしか出会ったことのない青年から、このような電話を受けるとは思わなかった。
ボクは、プロなので同業者の仕事や技術の深部まで、かなり分かっているつもりだ。
しかし、そのようなプロの仕事をボクがプロ仲間やアマチュアには絶対に教えることはしない。
それは、その技術を開発して持っているプロに対して大変失礼なことになるからである。
同業者として、やってはいけないこと、だからである。
そのことは、ボクにも当てはまることであり、ボクの技術を同業者にペラペラと公開されたくないのと同じである。
いまの時代は、他人から技術をいかにして盗み、それを自分で真似して生きていこうとしている人間ばかり。
なので、揉み手でボクのところにも急接近してくるプロやアマチュアも多い。
ボクが「けもの道」を発表したのは、1978年。
この直後から、大勢の人間が群がってきたが、その「揉み手」が気の毒だったから少しだけ自動撮影ができる程度の技術を教えたこともある。
すると、それまで撮ったこともなかった野生動物が「撮れた」ものだからいきなり有頂天になって、自分の技術でできたものだと勘違いしてしまう。
そして、天狗になっていき、自滅していった何人かの顔も思い出す。
自滅していくのは、ボクが第一ステップしか教えなかったからだ。
自動撮影技術には、第二、第三ステップがあるのだけれど、ボクはそこまでは絶対に技術を見せない。
第一ステップで、「揉み手」人間の人間性をテストするからだ。
そこで墓穴を掘るのがまず、ボクから得た技術を得意になって公開していくアホである。
苦労して技術開発をしたことのない人間は、その技術を侮ってしまうものである。
借り物の知識や知恵は所詮身につかないから、そのあとが頓挫して次に続かなくなってしまうものだ。
プロが編み出す技術なんてものは、ちょっとした発想力による「コロンプスの卵」の連続である。
そのちょっとしたセンスがないから、凡人には一生かかってもコロンブスの卵を産めないのである。
そのコロンブスの卵を教えてもらうと、それはまるで手品のタネ明かしくらいにしか思えないらしく、「なーーんだ」という人間もいる。
その「なーーんだ」に気づかないから、一生何もできないのにである。
カメラの世界なんてものは、野球の世界とよく似ているとボクは思っている。
バットとグローブとボールさえあれば、一応は野球の真似事ができる。
カメラも製品を買えば、とりあえずは「カメラ」の真似事もできてしまう。
しかし、草野球のホームランバッターがプロ野球で三割打者を何十年間も維持なんてできない。
カメラも、それと同じだからである。
だったら、コロンブスの卵を見せてもらって、オレの前で「なーーんだ」とは、言うな。
写真:カタクリも魚眼レンズで撮れば、少しはマンネリも跳ね返せるだろう。
 シグマ4,5mm このレンズに最近はハマッている。

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借り物の知恵ほど技術を守れない人 への8件のコメント

  1. オーロラ より:

    幻想的な写真ですね。まるで球体の中にカタクリが入っているようです。

  2. もっち より:

    学生の頃、「けもの道」と出会った時の感動は、いまだに鮮明に覚えております。
    撮影技術は、当然のことですが、gaku先生のブログ内に書かれている情報の内容は、その筋の研究者にとっては、喉から手が出るほど貴重な情報だと思います。本当に!

  3. ブリスパ より:

    「あほ」はどこにでもいますね。
    可愛そうな気もしますが…
    ちょうどいいというのかどうか解かりませんが、「な~~んだ」対策のためにweb図鑑に沢山登録させてもらっている私の写真の「道具」は無記名になっています。
    プロの方とは違って、バカにされないための
    自衛手段なんですよ。

  4. おいかわ飯店 より:

    僕も植物関係の技師なので、時々技術的なことを教えてあげた事があります。
    肥料の種類とか、そのタイミングとか。
    解りやすく教えるので、大体10分ぐらいで説明できます。このような人は、もともとの栽培法がなっていない人たちなので、結果、花の品質が上がり、単純に年売り上げで100万ぐらいはアップします。
    にもかかわらず、僕の助言は時給で考えられ
    てしまいます。これらの技術を習得した苦労は、換算されないわけです。

  5. gaku より:

    ■オーロラさん
    このレンズ使いはじめたら、けっこう楽しいし、撮影の工夫にもつながっていいです。
    ■もっち君
    喉から手…。
    ちょっと工夫すれば、アイデアなんて次々に出てくるものなんですが、ね。
    ■プリスパさん
    ほんと、アホが多すぎます。
    なので、なるべくデータを出さないように、ボクもこれから自衛、します。
    ■おいかわ飯店さん
    こういうことって、いっぱいありますね。
    とくに、行政関係者にはそのような意識欠如のヒトが多い、です。
    ボクのところにも、規定なのでといって時間給で相談してくるヒト、たくさんたくさんいるね。

  6. ほたるん より:

    いやー、アンテナ磨きの旅のスライドショー、楽しめました。
    ¥12800の折りたたみ自転車見に、ふらっと「突撃訪問」したいです(笑)
    カタクリ撮影の仕掛はまだ思いつきませんが・・・簡単には撮れなさそうな事だけは判りました。
    感度を少し落としてリングストロボ使ったのでしょうか・・・?
    不思議な写真ですねー。
    自動撮影は僕も興味あるのですが・・・
    D1を野に置く勇気がありません(苦笑)
    少しづつ機材を揃えて行こうと思っています・・・
    gaku先生の怒りが収まるのを待って、またヒントを「盗ませて」頂きたく存じます。

  7. どぶろく より:

    色々あって久々のアクセスです。もうgakuさんのコメントで閉じてますが、ちょっと書いてみたくなりましたので。
    先ずは電話してきた某氏に驚愕。アマでさえ許されない行為。しかもプロになりたいなら全て自分で成さなければならない(協力者は必要だけど、それを得るのもプロの能力の内)
    。どういう思考感覚なんだろう。なんでも教えて貰ってきたからか。それもあるかもしれないけどやはりセンスの問題ですね。「センスの無いやつにゃぁなにやらしてもダメ」が僕の基本的考え。サラリーマンだってそう。gakuさんはカメラを野球に例えられたけど同感。極一般人の仕事なんかもそうだけど、僕は料理みたいなものと思います。テレビみたいに「塩こさじ一杯」なんてやってる人に美味い料理なんか永遠にできない。創作もできない。自分の五感を駆使して、常にセンサーを磨かないと。 味好みは十人十色だし、醤油ひとつ見たって味はみんな違う。単純に計量なんて絶対無理。腕の良い料理人は無意識の内に最適な量の塩を指先で摘んで入れてる。そして最後は自分の舌で確かめる。
    閑話休題。
    gakuさんはテクニックやノウハウを明かさないけれど、そのヒントはこのサイトや本などにてんこ盛りばらまきされてますよね。実に気前の良い懐深いプロかと存じます。触角が磨かれている人ならば直ぐそれに気付くはず。
    なんでこんな大胆な事ができるのか。それはセンスと経験に裏打ちされた自信があるから。真似できっこないと解っていらっしゃるから。
    P.S.
    先日とある雑誌(gakuさんもご存知の)にgakuさんの二番煎じ写真が掲載されてました。ちょっと見、笑えるけれど、僕は嫌悪感を催し、出版社の神経を疑いました。と同時にそのプロに哀れみも。「先は無いんじゃ..」。生活の為の切り売り?。にしても、な感じ。まあ素人が、偉そうに恐縮ですが。
    センサー撮影。一度やりました(遊びで)。たった2時間、庭先の巣箱に出入りするヤマガラで。某社のおもちゃセンサー、カメラは某社の元フラッグシップ機。様々な発見が有りました。一番の驚きはレリーズタイムラグの長さ。一眼レフなのに加え、そのカメラはある新技術を搭載したからだとすぐ解りました。gakuさんは「あー、あいつは特に長いよ。でもいーカメラだよ」と笑っていらっしゃいましたね。

  8. gaku より:

    ■ほたるん さん
    >¥12800の折りたたみ自転車見
     \\12900でした。
    >gaku先生の怒りが収まるのを待って、またヒントを「盗ませて」頂きたく存じます。
    そういうヒトは、来なくてよろしい。
    ■どぶろく さん
    >色々あって久々のアクセスです。
    そうかい、いろいろあるんだねぇ。
    ガンバ、だよぅ。