獣害を考える 1 「ハクビシン」


ハクビシンは、東南アジア原産のジャコウネコ科の動物。
大きさは、タヌキくらいと思えばいいだろうか。
このハクビシンが、長野県で確認されるようになったのが、40年ばかり前から。
長野県では当時、県の天然記念物に指定していた。
審議委員長だった大学教授に、
「先生、あんなもの天然記念物に指定したら、増えてそのうちに大変なことになりますよ」
と、ボクは言った。
そうしたら大学教授は、
「だって、数が少ないし珍しいし、可愛いではないか」
という返事が返ってきたことを覚えている。
そのハクビシンが、いまではとんでもなく増えて、無人自動撮影カメラを設置すればタヌキとともにどこでも確実に写される。
そのくらい多数が生息していることを裏付けているからだ。

なので、ある果樹農家では、毎年40頭ものハクビシンを捕獲して殺しつづけているという。
桃やブドウ、梨を食い荒らしてしまうので、農家では死活問題なのだ。
で、だれも助けてくれないから、自力でハクビシン退治をせざるを得ないのだった。
それでも、捕まえてもつかまえても、農園には次々にやってくるというのだから、かなりの数が生息していることはまちがいない。
ボクの仕事場にも、毎年ハクビシンが顔をだしてくる。
年によって数の差はあるが、最大で4頭だった。
なので、ハクビシンにどれほどの能力があるのか少し実験をしてみた。

ハクビシンは木登りは平気だが、鉄パイプは登れるのだろうか?
鉄製の稲はざ用の支柱が売られていたので、その上にリンゴを置いてみたらハクビシンは難なく登ってきた。
鉄パイプでも、斜めなら平気なのである。

では、工事用の新品鉄パイプを垂直に立てて、その上にリンゴを置いてみた。
なんと、すべすべの垂直パイプまでをも、ハクビシンは難なく登り下りするではないか。
すごい、足の裏だと、感心してしまう。

そこで、鉄パイプにグリスを塗ってみた。
これなら、魔法の足の裏も滑って登れないだろうと、ボクは考えたのだった。
案の定、ハクビシンは登れなかった。
こうしてやっとハクビシンの盲点を見つけたのだったが、グリスの後片付けが大変である。
衣服に着けば洗濯にも困るし、手につけばいつまでたってもヌルっていて、ニオイも鼻につく。
なので、グリスだけはいちばん最後の手段だと思うが、樹木や家屋ではグリスを塗ることもできないだろう。

しかし、ハクビシンの餌に対する執着心は並々ならぬものがあるから、捕獲器ならばカンタンに捕まえることはできる。
なので、冒頭の農家のオジサンみたいに、自分でやるしかないだろう。
獣害を防ぐには、ハクビシンの習性を熟知しないと個人ではできない人も多いだろうから、できなければ、こういう捕獲は専門業者などのプロ集団に任すのがいちばんいいと思う。
それには、捕獲料金がかかってくるから、料金算定もきちんとしておいたほうがいいだろう。
ハクビシンからの獣害はまず素人では防げない。
だから、営農するには獣害対策費用も視野に入れて、これからは農業などをする時代になったといえる。


写真上から、
1)ハクビシンは、こんな動物。
2)斜めの鉄パイプでも平気で登れる。
3)ハクビシンの足の裏には角質のスパイクがある。
4)垂直の鉄パイプなんて自在に上り下りができてしまう。
5)グリスを塗った(右)、滑った跡(左)があり、これで懲りてしまった。
6)サルの捕獲檻で捕まえられたハクビシン夫婦。
7)人間の浅知恵をハクビシンは笑っていることだろう。
8)梨の幹にガムテープを裏返しにして貼っていたが、これでも少しは効果があった。ハクビシンの足の裏は、ぬめりが嫌いらしい。
注意:鳥獣保護法があるので、ハクビシンの捕獲には許可申請の必要がある。

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獣害を考える 1 「ハクビシン」 への4件のコメント

  1. C-NA より:

    2ヶ月ほど前イノシシ除けの伝染にウッカリ触れて気が着いたら地面に左のほっぺが着いていました。あんな衝撃は初めてでイノシシや猿になった気分で彼らが少し哀れになったけどそうしないと作物が守れない農家の嘆きは深刻ですね。獲れすぎれば野菜も捨てることになったりただでさえ忙しいのに害獣対策にかかる労力や時間、経済的な問題などを考えると農家の苦労ははかりしれませんね。
    でもいつもお邪魔している里山の地主さんたちはとても温かです。これからは電流に気をつけてお邪魔します(@@)

  2. stma より:

    こちらでも最近ちょくちょくとハクビシンを見かけます。
    かなりの数が棲息していそうですが、都市部では、そのほとんどがノラネコと見分けがつかずに混同されているでしょうね。
    昼間ならともかく、夜間に暗い路地や塀の上を横切っていくハクビシンの姿はパッと見ためはネコそのものです。
    エサもネコの物をちゃっかり頂いているかもしれませんね。
    行動範囲もノラネコよりも広いでしょうから、繁華街の生ゴミや猫オバサンたちが置いてゆくノラネコ用のエサなど、都会の路上では、栄養たっぷりのエサが容易に得られるでしょうからね。
    人に見つかりさえしなければ、ハクビシンもタヌキもアライグマも、都会はお山よりも住みやすいのかもしれませんね。

  3. 小坊主 より:

    >「だって、数が少ないし珍しいし、可愛いではないか」
    獣害に悩む当事者以外は、今でも、こういう感覚が、普通なのだろうと、想像させられます。

  4. どぶろく より:

    1.gakuさんのやりかたは、もの作り・プログラミング・数学に通じます。2.その原動力たる好奇心:なんだろう?なぜだろう?どうなるだろう?は大切ですね。自分も「好奇心∞」がコンセプトです。一生そうありたいものです。