獣害を考える 5 ニホンザルの知恵


タケノコをイノシシが盗んでいくので、その対策としてカメラやフラッシュを作動させたり、防犯ブザーやラジオを鳴らしたりした。
こうした効果は、それなりにあったと思う。
しかし、タケノコ泥棒はイノシシだけではなかった。
ニホンザルが群れでやってきて、バババーンっと、荒らしていくのだった。
それも、タケノコの成長按配に合わせて、4-5日置きにローテイションを組んでやってくるのだ。
このサルの行動は、想定外だった。
50年前には、この地域にサルはいなかったのだが、いつの間にかこんなにも増えて、しかもタケノコを完全に狙っていたからだ。
サルには、イノシシ対策でやったことはまったく通じなかった。
音も光もすべて学習済みなのか、まったく警戒することなく目的を達成して行ったからだ。
まさに、こちらはなす術もない、そういった状況だった。
ニホンザルが、これほどまでに図々しいのだから、山間地の農家の人たちには手に負えず農作物を荒らされ放題なのが現実である。
近所のモモ園では、あまりの被害に、モモの木をすべて切り倒してしまったほどだ。
ボクがタケノコを掘っている場所は、限界集落でもあり、竹林の持ち主もいるところ。
その地主から許可をもらって、タケノコを掘らせてもらったり、イノシシをはじめとする野生動物の動向を調査させてもらっているのである。
この集落付近では、イノシシもサルも、あらゆる野生動物の捕獲はしていない。
せいぜい、畑や田んぼを防護ネットで囲う程度である。
なので、恒常的に檻をしかけて捕獲しているところと、行動や心理の比較もできるからこの地域を選んでいるのだ。
ところが、ニホンザルを捕獲して数をとにかく減らして農業被害を食い止めようとしている地域もある。
大きな捕獲檻を仕掛けて、有害鳥獣捕獲許可を得てサルを捕まえているのであるが、賢いサルなのでなかなかに一網打尽にはできないという。
それでも、数匹くらいは捕獲できているみたいだから、農家もそれなりに仇を討ったつもりになって満足感もあるようだ。
しかし、ボクから見れば、捕獲された数は翌年にはすぐに補充されているのが野生ニホンザルの状況なのではないかと思われる。
イノシシと同じくニホンザルは確実に増えているので、農業被害をなくすには抜本的な対策が必要だと思うが、農家も行政もなかなかにいいアイデアが出せないのが現実らしい。
人間以上に、ニホンザルのほうが頭がいいようなので、高齢化、限界集落などを視野に入れていけば、人間がサルに負ける日もそう遠くないような気がする。
日本の「サル学」は世界一だとも言われて賞賛されているが、農業被害に遭っている現場では「世界最低」ないのではないかと、思われている。
農業被害もきちんと食い止めて、野生動物も人間も、ともに暮らしやすい答えを導きだすのが、世界一のサル学なのではないだろうか。
ニホンザルの群れの一部に発信機を装着して、群れの移動をGPSで確認しながら被害を食い止める試みもされているようだが、一体全体ニホンザルは何頭いて、どこまで保護をすればいいのか、農地周辺のサルはどこまで捕殺してもいいのか。
そういった確かな答えをだしていくことも研究者の仕事であり、行政がそれを判断して住民の暮らしを守るべきだと思う。
しかしながら、現場を見る限り、人間よりサルのほうがすべてにおいて優遇されているのが現実である。

やっと1頭の親ザルが檻で捕まったが、この程度ではサル被害にはまったく焼け石に水。
この檻は、サルよりも、ツキノワグマのほうが多く捕獲されてしまっているのも現実。

手前はイノシシの捕獲檻、後方はサルの大量捕獲檻だが、なかなか成果があがっていないのが現状。

久しぶりに、6頭ほどのサルが捕獲されたが、このあと群れ全体で危険を学習されるから1年くらい再捕獲できないことが多い。

檻のなかで不安顔の若いサルたち。後方のトタンには散弾銃の憤怒の弾痕がみえる。

銃弾が貫通した跡。

人家の屋根に登って遊ぶ横着なサル。

道路でも、こんなにも横着しているから、人間社会を舐めきっているようだ。

高速道路だってもはや彼らにとっては生活場の一部分になってしまっている。

人間に向かって威嚇してきているサル。最近では、逃げることを忘れてしまって、反撃するまでに精神構造が変化してきているサルたちもいる。
自然保護思想にも、適度な緊張感が必要なのだが、現代人は危害が我が身に降りかかるまではそれに気づかないものである。
写真上:タケノコをくわえてカメラ目線で悠然と歩く子ザル。

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獣害を考える 5 ニホンザルの知恵 への5件のコメント

  1. 小坊主 より:

    別の記事で、いち猟師さんが書かれていますが、丸腰の人間は、野良猫にも負けると思います。
    人が武装もせず、反撃もしなければ、サルに舐められっ放しになるのは、もう、当然のことですね。
    我が家にも、たまに、猿が侵入するので、一応、武装らしきものははしていますが、敵もサル者、私が居て、準備がある時には、やって来ません。

  2. 北の狩人 より:

    今色々な動物が絶滅危惧種と言われて居ますが、熊、シカ、イノシシ、サル等々どんどん進化増殖している中で真の絶滅危惧種はハンターなのです。
    銃砲刀剣類所持等取締法等でハンターは消えゆくままですね。
    笑うに笑えない状況になっています(悩

  3. gaku より:

    ■小坊主 さん
    おっしゃるとおりです、武装というと銃器のようにも捉えられがちですが、精神的な武装といったほうがよさそうですね。
    いつも、「野生動物のことを人間も意識して考えているからな」といった気持ちで暮らすだけでも、人間からのオーラは野生動物たちに伝わるものです。
    ■北の狩人 さん
    ハンターは必要な職業です。絶滅してもらっては困ります。
    ハンターがいなくなれば、これからは大型動物駆除会社のようなものができて、行政や個人からシカやイノシシ、サル、クマの駆除を請け負う時代になってくると思います。
    そのときには、駆除会社の社長になろうかなオイラ。

  4. いち猟師 より:

    そうなんですよ、やはりやる気満々オーラは分かるみたいなんですよね、人間の‥といっしょで。
    今度の猟期、銃を担いでいても弱気モードで行こうと思います。
    うまく行けばいいのですが‥。
    なめてかかって来る相手が猪や鹿ならいいのですが、クマだと、場合によってはちょっと遠慮ですね。
    山の中はいろんなのがいるので難しいです。

  5. gaku より:

    >山の中はいろんなのがいるので難しいです。
    こういうことは、まさに体験を積みながらの直感力ですね。
    それと、幼児体験が大きく影響してきていることは確か。