獣害を考える 6 ニホンザルの視力は20.0…以上


ある村では、有害鳥獣駆除でニホンザル1頭につき3万円の手当てがハンターに支給されている。
別の村では、2万円。
また、サルによる被害が発生していても、まったく補助金も出ない村や町もある。
行政によって被害状況も違うし、財政事情もあるからだ。
財政に余裕のあるところは、サル1頭駆除すれば3万円になり10頭で30万円だから、ハンターも精を出すものである。
だから、「サルは美味しいぞう」といって頑張るのだが、ある村の猟師がなげく。
「サルは頭がいいなぁー
 俺の顔や車や家まで覚えてしまうんだ、ぜぃ
 朝起きて、やつらは尾根の陰から顔だけそっと出して、どうやら俺を観察するのが日課らしい
 俺が家にいると分かれば、遠くの集落へ行って悪さをするし、
 俺がその集落へ急げば、サルたちは山を遠巻きにして俺の集落へやってくる
 あいつらは双眼鏡も持ってないのに、なんであんなにも目がいいんズラ、かぁー
 サルの視力は20,0以上はあるぜ、絶対!
 だからよぅ 最近は駆除の効率が悪くなってちっとも獲れねぇーのさ」
視力が20,0というのも、あながちオーバーではないと思う。
眼、耳、嗅覚の三拍子がそろえば単独視力に加えて全体の勘がよくなるから、私たち人間の想像を超えた能力が発揮されていると思わなくてはならない。
なので、野生動物との知恵くらべは、このままずっと続いていくことだろう。
「知恵くらべ」とボクはいったが、人間にそれほどの知恵があるハズがないと思っている。
そもそも、人間がいちばん偉いと思い上がって野生動物を見下しているような者には、この時点ですでに動物たちには負けているからである。

また、それぞれの行政間の動物に対する温度差もあるので、一つの村で徹底的に駆除をしても、次の村が無関心なら、そこでまた動物たちが増殖して次々に荒らしていくという構図も出来上がっていく。
なので、群れ全体を捕獲してしまうような大掛かりな装置をつくるとかして、長期的ビジョンの元でしっかりした指導者がいて地道に努力しないかぎり、農業被害は収まることを知らないだろう。
研究者では出せないような秘策もボクにはあるが、そのようなアイデアを提供しても何も感謝されないし、実行もできないのだから、ボクは諦めている。
しかも、こうした野生動物に対する意識の温度差というものは、都会から田舎までかなりの開きもあることは確かだ。
東京や大阪、神戸など大都市に暮らす人々は、周辺に緑がないから野生動物をただ「守れ」「保護」しろといいつづける。
これが、ちょっとした地方都市にいけば周辺には緑がたくさんあるから、「まあまあ殺さなくてもいいだろう、どこかへいってくれればそれでいい…」といった程度の意識である。
さらに、周辺が緑だらけの限界集落ともなれば、野生動物の勢いと人間の力関係が完全に逆転しているから「殺してしまえ」ということになる。
このように、同じ野生動物をめぐっても三重構造の温度差が見られるから、どちらを選ぶにしても、これからは税金などが大量に使われて野生動物対策が行われていく時代になろう。

写真上:人間を余裕で観察するニホンザルの視力は思いのほか高い。そして、精力を誇示するように大きな睾丸を振ってみせた。
写真中:蕎麦畑に大群で出撃中のサルだが、こうみえても周辺に暮らす人間心理をちゃんと読みぬいている。
写真下:「おふくろの味」とよくいうが、コザルにとっては母親からの教えですべてを学習していく。

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獣害を考える 6 ニホンザルの視力は20.0…以上 への3件のコメント

  1. C-NA より:

    猿が木の枝に吊されている画像や烏が宙吊りになっていたりするのを目の当たりにすると
    やはり辛いです。”みせしめ”で害が減るのかどうかわかりませんが効果がなかったら人間は次に何をするのでしょうか?動物は仲間の死をどのように受け止めるのでしょうか?

  2. 小坊主 より:

    山の中では、私、向こうの縄張りに踏み込んでいますので、サルに出会ったら、遠慮も、回避もします。
    しかし、我が家に、サルが踏み込んできたら、容赦無い対応をするつもりです。この点については、我が家の庭で、女房がサルに襲われる、というような経験がないと、理解して頂けないかも知れませんが、私には、それ以外の選択は、考えられません。
    まして、獣害に直面して、収入の道を脅かされている人たちにとっては、駆除以外の対応を考えるのは、難しいと思います。

  3. gaku より:

    ■C-NAさん
    自然保護団体に加入していて、「自然保護」を唱えている人でも、自宅マンションの台所にドブネズミやゴキブリが毎晩出没すれば、100パーセントの人が駆除を敢行することでしょう。
    そのドブネズミやゴキブリが1頭ではなくて、何頭もが同時出没すれば、駆除された仲間の死体、死臭を感じて、彼らは必ず学習して行動変化をみせていきます。
    これらの行動は野生動物すべてに当てはまりますので、いろんな感情認識をもって行動しているとボクは経験上そう思って仕事をしています。
    この考え方は、まさにその通りになっていますので、そういった野生動物の心理状態にまで興味があるし、そこが面白いからこのような仕事ができているのだと思っています。
    ■小坊主さん
    まさに、おっしゃるとおりなのです。
    日本では、鳥獣保護区のなかに農地があったりしますから、行政が「保護区」を指定したならもっと責任をもって「保護」と「捕獲」の「管理」をやるべきなのですが、そのところに国民の誰もが気づいていないのです。