イタチで秋を知る


先月九州へ行った折、田んぼのあぜ道でイタチの糞をみた。
その糞には、野イチゴの種らしきものが入っていた。
だから、てっきり「野イチゴ」を食べていると思ったら、その種は「イヌビワ」のものだった。
所変われば品変わるで、信州にはイヌビワがないのでイタチの糞を見てもちょっと勘が狂ってしまった。
そんな出会いがあったので、もしボクが九州に暮らしていれば、イタチがイヌビワの実に夢中になっているところを撮影したいと思ってしまった。
信州でイタチといえば、川魚。
イタチは手足の指の間にある水かきをつかって、器用に水中に潜り、川魚を追い詰めて捕獲する。
それはそれは見事な捕食シーンとなるが、撮影はとても難しいので現在の日本で成功している人はいないだろう。
20年ほど前に、ボクはそんなシーンをフィルムで撮影したが、こんどはデジタルで撮影してみたいと思っている。
そうするには、まず、川に魚が群生していることをイタチに知ってもらう必要がある。
それには、フナを生かしたまま川に泳がせれば、イタチは必ずそれを知ってやってくるからだ。
たかがイタチ、されどイタチだが、日本の野生動物でイタチほど撮影の難しい動物はいないと思う。
「イタチの道きり」といわれるくらいに、イタチには一定の所在がないから、確定的に出会いを重ねることすら難しいからである。
しかし、そうしたイタチでも四季のはっきりしている日本に生息しているのだから、餌確保にもっとも神経をつかう「冬」に照準を合わせれば、こちらの思い通りにさせることができるのだ。
なので、冬の前の季節である「秋」から準備をすれば、まちがいなく11月下旬から撮影は可能だからである。
ボクには、季節をまたいで、そんなヨミができる。

そんな矢先に、知人から「フナの甘露煮」が届いた。
自分の休耕田で飼育してきた3cmほどのフナの子供を、自分で味付けをしてボクに届けてくれたのだった。
毎年秋になると届くこのフナが、とっても美味しいのである。
フナの頭から丸ごとすべてを食べられ、クリーミーな甘さのなかに肝のほろ苦さがほどよくとけて、日本酒のぬる燗に絶品なのである。
「美味しいなぁーー」と、知人に感謝しながら子ブナを数匹ほおばっていると、ふとイタチのことが甦ってきた。
「このフナでイタチを呼べる」、ボクはそう直感したからだ。
さっそく知人に電話をかけると、来年用の親ブナを池に大量に確保してあるということだった。
「欲しいだけあげるからいつでも言ってくれーー」ということで、イタチの撮影が可能となった。

イタチの写真なんて撮っても、営業的にそれほどプラスになることはない。
しかし、誰も撮らないものをキチンと撮影するのもプロの仕事である。
だから、難しいと思われているものに挑戦するのも、自分としての技術確認を含めて楽しみながらやるだけである。
ツキノワグマの撮影に大忙しだというのに、ボクの頭の中にはすでにイタチが泳いでいる。
写真上から:
九州で見たイタチの糞とイヌビワ。
フナと甘露煮。
イタチの足跡。

カテゴリー: 鳥類   パーマリンク

イタチで秋を知る への11件のコメント

  1. はいむるぶし より:

    イタチの生態のこと知らなかった全く。子供の頃うさぎを飼っていて、イタチに食われたので、イタチには少し嫌な思いが^^でもイタチはっきり見たことないんですよね。親がイタチに食われた!というの聞いただけで。裏山に首のないピョン子^^(うさぎ^^)の身体があったでけで。。。あれはほんとにイタチだったのかな?いのししは多くて、確実に増えているのはわかります。親はジャガイモの畑をやめてしまいました。高齢もあるけど、毎年毎年ぜーんぶ食べて掘られてしまうから、気力なくしたようです。^^自然は甘くない^^

  2. ぴょん より:

    イタチって、肉や魚ばかり食べてるわけじゃないんですねぇ……。
    固定観念ほど邪魔なものはありませんね。
    ウ○コ観察から、ホントに様々なことを教えられます。

  3. 小坊主 より:

    甘露煮、美味そうです。
    イタチというと、竿の先に毛皮を結んで、魚を追い詰める漁が、目に浮かびます。

  4. gaku より:

    ■はいむるぶし さん
    イタチを含めて、タヌキやアナグマなど日本の野生動物は身近なところにいるのですが、ほとんどの人たちは確認しないまま想像で語ってしまっているところが多すぎます。
    なので、そのへんのところをボクはキチンと見届けたくて、いろんな体験を積んでいるのですが、それが面白くて、やめられないのですよ。
    ■ぴょん さん
    イタチ、テン、キツネなど、肉食動物はかなり果実が好きですね。
    人間も、それに習って肉食べたら野菜や果物もしっかり食べましょう、ってことでしょうね。
    ■小坊主 さん
    「イタチ猟」ですが、イタチが実際にどのような行動をするか目撃したヒトには、
    互いの習性をほんとうにうまく利用しているな、と思います。
    いろんな方法がありますが、そのうちに、オイラも実験してみます。
    実験することで、新たな発見もあると思いますので、楽しみデス。

  5. ブリスパ より:

    >ツキノワグマの撮影に大忙しだというのに
    ボクの頭の中にはすでにイタチが泳いでいる。
    頼もしいです!
    期待しております。
    イタチというのは我々は身近な動物だと思っていますが、世間一般の統計ではどうなんでしょうかね?
    一般生活上で「見たことがある」と言う人はどれぐらいなんでしょうか?
    フナの甘露煮はうまそうです。
    私は食えないので来週、柏崎の「日本一」のラーメンを食べに行きます。

  6. beachmollusc より:

    自宅脇の渓流で水際に出現したり、ワンコの早朝の散歩中に近所の田んぼの水路でシマヘビの食事中に遭遇したり、夜ヘイケボタルを観察しに出た時水田を渡って走ってきたり、林道でライトに照らし出された姿を見たり、イタチとはかなり良く出会います。
    出会っても鳴き声を一声あげて一瞬で逃げてしまうので、ゆっくり観察できません。テンは山奥でしか会いませんが、イタチは極めて身近にいるようです。
    ところで「最後っ屁」は実際にありますか。

  7. gaku より:

    ■ブリスパ さん
    撮影「絵コンテ」はたくさんあります。
    イタチの水中撮影、モモンガやテンのベットシーン…
    いろんなことを考え、機材を開発して、一つひとつ結果をだしていくことの楽しさ。
    そんな楽しみのためにも、自然を見て知っていく喜びがあります。
    ■beachmollusc さん
    イタチは、九州ないしは西日本方面には多いようですね。
    信州でも、標高1600mの山地から平地までいますが、なかなか出会えません。
    しかし、ちゃんと準備すれば撮影も可能ですのでボチボチやってきます。
    また、チョウセンイタチが分布拡大をはかっていますので、そんなイタチにも朝鮮でなくて、挑戦してみたいものです。

  8. gaku より:

    >ところで「最後っ屁」は実際にありますか。
    ボクは、経験したことありませんが、実際にはあるようです。
    とくに、雄イタチが強烈のようです。

  9. とある大学院生 より:

    初めてコメントさせて頂きます.
    とある大学院で生物の研究をさせてもらっている者です.
    初めてのコメントであるにも関わらず,攻撃的な内容の文章になってしまうのですが,気分を害さずにお読み頂けると幸いです.
    ここでお話しされてる内容というのは,
    「イタチの泳ぐ姿を撮影するため,大量なフナを川に放す」ということでしょうか?
    その事で,放流した川にフナが定着し,在来の川魚を減らしてしまう可能性はありませんか?
    生物の移入というのは,非常に危険な行為です.安易な生物の移入が,自然界で絶妙に保たれている生態系のバランスを壊してしまった,という事例は数多く報告されています.
    どのようなプランで移入を考えていらっしゃるのか,是非ともお聞かせ頂けると嬉しいです.
    よろしくお願い致します.

  10. gaku より:

    ■とある大学院生 さん
    フナを「泳がす」んであって、「放す」なんてどこにも書いてありませんよ。
    ご指摘の生態系のことくらいはちゃんと考えてやっております。サカナとイタチの習性さえ知っていれば、どのようにすればいいかはすべて計算済みですから。
    具体的プランは、たいへんなアイデアでプロの企業秘密にもなってきますので、匿名さんにこれ以上詳しくは述べられません。

  11. とある大学院生 より:

    突然の匿名のコメントに、丁寧に対応して頂き誠にありがとうございました。
    ただ「イタチの泳ぐ姿を撮影したい」ためだけに、川に大量のフナを放す。
    このような事をgaku様ほどの写真家がするはずがない、そう信じて質問させて頂きました。
    何かしっかりしたプランをお持ちである事を聞くことができ、大変安心いたしました。
    プランをお話し頂けないのは至極当然のことですね。
    今後も、gaku様が撮られた写真によって、多くの方々が生態系の重要性を知ることを願ってやみません。
    失礼な文章、心よりお詫び申しあげます。
    それでは、失礼いたします。