「鷹匠鍋」を食らふ…


その昔、日本で鷹狩りがさかんなころは、「鷹匠鍋」という野趣に富んだ料理があった。
いわゆる、タカが捕らえたカモを、鷹匠がフィールドで料理して食べるというものだ。
「鷹匠鍋」は、鷹匠がタカのコンディションをみて「今日は獲物が捕れる」と判断すれば、まず焚き火をして鍋を火中に入れて焼いておく。
そのあいだに、猟に出かける、のだ。
鍋といっても、硯くらいの大きさをした厚さ2cmほどの打ち出し鉄板である。
いわば、腰に下げても邪魔にならない大きさで高熱を保持するものならば何でもいい、のである。
材料は、カモ1羽、長ネギ、塩or醤油。
カモは、水のついた包丁で捌いてはならない。水がつけば、肉がいきなり泥臭くなるからだ。
羽毛をむしるときも、水や湯を使ってはならない。
ネギも洗ってはならない、これが鉄則である。
カモは、体温があるうちに羽毛をむしればきれいに取れるし、毛脈にそって指を滑らせれば綿毛も見事にこそぎ取ることができるからである。
そして、肉と脂肪を取り分け、腸以外はガラと内臓も捨ててはならない。

まず、熱々の鉄板にカモの脂肪を周囲に置き、その内側にネギを1cmくらいに輪切りにしてついたてとする。
カモの脂肪が溶けて長ネギの下をとろ~りとくぐりぬけて鍋の中心部に流れてきたころ、サイコロに切ったカモ肉を並べてほんの少し焼き色がついたところを、レアで、塩か醤油でいただく。
もちろん、ネギも同時にいただいていくのだが、「鷹匠鍋」といいつつ早いはなしが鉄板焼き、なのである。
しかし、これが最高に美味しいカモの食べ方なのである。
とにかく、カモ肉もさることながら、ネギがカモ脂に実によくマッチして、これほど美味しいものはないからである。
「カモネギ」とはよく言ったもので、ネギとカモはほんとうに相性がいいからである。
まさに、絶品絶妙な最高の贅沢料理を昔の鷹匠はやっていたのだった。

このあと、残ったカモの脂を溶かして、ガラを炒める。
そこに湯と醤油、砂糖を入れてすき焼き風に味をつけたところに、うどんを入れる。
これがまた、最高に美味しい「カモすき」、となるのだ。
こんな料理のあることを、ボクは若いころ鷹狩りの歴史を調べていて知っていたから、いつかは体験したいものと思っていた。
まあ、タカで獲物を捕まえなくてもいいから、ハンターが撃ち落した野生のカモで実践してみたいと思っていた。
そこで、知り合いのハンターにカモが捕れたら譲ってほしいと頼んでおいたのである。
そして昨日、ほどよく、半矢(まだ生きている状態)のカルガモが入ったので、日本の伝統文化にのっとって料理をしてみたのである。

カモの血抜きから、毛抜き、内臓処理まで全部自分でやってみたが、なかなかに古来からの伝統料理ができたと思っている。
まあ、鉄板でなくても、ホットプレートで充分であった。
カモがこんなにも美味しいものとは初めて知ったし、料理方法さえきちんと守れば、これほど最高な野趣はないのではないかと思う。
こう書けば、野鳥を食べるとはけしからんと「愛鳥家」に批判されるかもしれないが、自然保護とか環境問題はいかにして環境保全をし、増やし育てていきながら自然を利用していくかというところに、ほんとうの自然環境理解が生まれるのではないかとボクは信じている。
そうすることによって、カモたちの生態にも精通していくから、保護もできるし利用もできる、というものだ。
この料理の美味しさは、カモ自身の持つ「脂肪」がすべてを左右するから、12月一杯までが勝負である。
正月を過ぎてしまえば、カモからは見事に脂肪が消えてなくなってしまう。
それは、春夏秋冬の季節が確実に動いているから、カモも脂肪を蓄え消化しながら季節を追って生きていることにも気づかされる。
まさに、野趣を食らいて季節を知り、自然界を理解しながら人間を知る、というものだ。

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「鷹匠鍋」を食らふ… への8件のコメント

  1. オーロラ より:

    >自然保護とか環境問題はいかにして環境保全をし、増やし育てていきながら自然を利用していくかというところに、ほんとうの自然環境理解が生まれるのではないかとボクは信じている。
    gaku先生のこの言葉は、生態系管理の本質をついていますね。
    それにしても、カモをさばく手さばき、お見事です。水をつけてはいけない、というお話、勉強になりました。

  2. ほたるん より:

    美味そうな画像をみながら冷や飯で昼食でした・・・
    冷凍ハンバーグの再加熱品も、脳内シャッフルすれば、カモ肉のレアに思えなくも無い・・・
    画像に集中すれば、油の匂いすら感じます(ウソです)
    羨ましいです!!

  3. 粗忽鷲 より:

    >鷹匠鍋
    初めてデス。所謂鍋料理しか食べていないので、鉄板焼きが誠に美味しそうです!
    旬を食べるのですから尚更ですね。
    鴨の首の骨の小ささに驚いたことがあります。羽毛のふくらみから想像できませんでした。考えてみれば当り前なのですが。。

  4. su- より:

    旨いモンは小人数!…って分るけど…そりゃね~べ?
    でも、土をうんと盛って作った、白い茎の多い<根深葱>より、お天道様の光ををしっかり浴びた白い部分の少ない<葱>の方が遥かにに旨いんだぜ!しかも緑の部分が多ければ多いほどコリャ~絶品になる!
    <鷹匠>が食べた時代には<根深葱>なんてなかった時代だと思うよ。
    お上品に食べるんなら別だけどね!
    ナンチャッテ!

  5. gaku より:

    ■オーロラ さん
    野生肉には、いろんな作法があるのが面白い、です。
    昔の人は、そうして、美味しくいただく術を身につけていたのだと思います。
    ■ほたるん さん
    カモ捕まえてくれば、料理してあげますよ。
    ■粗忽鷲 さん
    そちらには、材料が豊富そうなので、ぜひ「鷹匠鍋」やってみてください。
    美味しい、ですよ。
    ■su- さん
    こんど、手に入ったら一緒に食べようね!?

  6. あーる より:

    昨日、鴨ざるそばを食べました。
    もちろん合鴨なんですが、ふと疑問が。
    カルガモ、マガモ、オナガガモ…
    色々な種類がいますが、どれも食べて良いのでしょうか?味は同じなのでしょうか?
    ガンとかは…
    味が同じなら大きい方がいいなあ、と思うし。
    天然もの、おいしそうだなあ。

  7. gaku より:

    狩猟法で捕獲の決められている野鳥がおり、狩猟免許のある者が捕獲できます。
    ちなみに、カルガモ、マガモ、オナガガモ…は、狩猟鳥ですから適正な捕獲なら食べられます。
    ガン類は、保護鳥なので、捕獲はできません。
    味は、カルガモ、マガモ、オナガガモ…までは似ていると思います。
    魚を食べるカモは、カルガモたちとは絶対に味がちがうと思います(食べたことありませんが)。

  8. あーる より:

    ありがとうございました。
    勉強になります。