写真集「カラスのお宅拝見」が出版される


「カラスのお宅拝見」の写真集が、できた。
北海道から九州まで、100を超えるカラスの巣を覗かせてもらって、巣を通して現代社会を語るというものだ。
写真集だから、モデルがよくないと本はできないように思われるが、どうしてどうしてオイラにかかってしまえば黒装束のカラスだって立派なモデルになってしまうのである。
思い返せば30年も前から、ことあるごとに木登りをしてカラスの巣を覗いてきた。
ときには、10m、20mという木登りをひとりでやって、樹上で両手を離しての撮影である。
そんな写真を撮りためていたら、ある若い編集者が惚れこんでくれた。
これまでの仕事を振り返ってみても、ボクは美しく綺麗なものをファンタスティックにだけ追うことは、大自然の確かな営みに対してどうしても失礼な気がしてならなかった。
だから、自分に嘘をつかない自然の本質に迫った仕事をしなければ、「宮崎学」が存在する意味はないと思っていた。
そこで、人間には嫌われ者のカラスも身近にいる野鳥でありながら、実はしたたかに人間を観察していることがわかった。
そんなカラスが面白く、ならば、カラスの巣までずかずか入り込ませてもらって、彼らのプライバシーを暴いてもいいではないかと思ったからだ。

写真集といえば、犬や猫だけが書店の売り場を席捲するなげかわしい時代にあって、自然モノなんて見向きもされない。
売れ筋だけを狙えばいいといった安易な姿勢が、今日の環境問題でいちばん大切な部分を伝えられなくしてしまった。
いつの間にか、編集者も出版社も大切なことを忘れてしまったような気がしてならない。
「カラスのお宅拝見」は、定価2000円。
30年間におよぶ全国への取材費を考えれば2000円は絶対に安いし、オイラにとってはすべてが持ち出しだ。
しかし、こういう仕事をしている男が、今の日本にひとりくらいいてもいいと思う。
誰もやらないことをやれる楽しみをもってボクはこれまで生きているのだから、多いに満足している。
印刷もなかなかにいいし、手軽に手にとれる装丁だから、やはり売れてほしいとは思う。
出版物は、欲しいときに入手しないとすぐになくなってしまうのが実情だ。
何年かあとになって、「あの本はないですか…?」、と聞かれるのがいちばん辛い。
この本の出版を記念して、東京・池袋のジュンク堂でトークショーがある。
12月10日、18時30分~
サイン会もあるので、お時間のある方はぜひどうぞ。

「カラスお宅拝見」の本文の一部より
 巣を見ていくだけで、カラスにもいろんなタイプがあって、
 それぞれに個性豊かな生き方をしていることがわかってくる。
 また、「権兵衛が種蒔きゃカラスがほじくる」といわれたように、
 カラスが集落に暮らす人間の一人ひとりを確実に見分けて
 行動するようすが見えてきて、野鳥の底知れない能力を感じさせてくれる。
 そしてなにより、カラスの巣を通して、
 ニッポンの社会や環境が垣間見えるのが面白い…
「カラスのお宅拝見」 新樹社 定価2000+税
19.5cm×17.5cm 144ページ オールカラー
写真上から
1)「カラスのお宅拝見」の表紙
2)カラスの巣にも、こんなに個性がある。
3)この巣には、人間の白髪がたくさん持ち込まれていた。こんなにまとまって白髪があるのは、きわめて怪しい。近所に変死体でもあったのかもしれない。

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写真集「カラスのお宅拝見」が出版される への4件のコメント

  1. ブリスパ より:

    私、早合点なものですから、
    カラスの視点で、いろんなお宅を拝見して歩いて「撮った」本かと思ってしまいました(笑)。
    「カラスのお宅拝見」
    サブタイトルも、
    そういった見方をすれば、
    巣の中のカラスが「今日はどこのお宅に行こうか?」
    という眼差しにも見えます。
    見る(読む)前から解釈を取り違えているかもしれませんが、こういった本はきっと面白いはずです。
    買いに行きます!

  2. いち猟師 より:

    こんばんは。
    池袋のジュンク堂ですか‥、行き着けですね。
    クマの本もそこで買ってます。
    でも残念、仕事中で行けないのですよね平日だと。
    でもクマとかイノシシの話だったら無理してでも行ったかも!?
    ところでカラスですが、山では良く獲物を教えてくれます、今年も初猟の日こそ少なかったのですが、次の週からはあっちこっちで鳴いてウルさかったです。
    中でも多分同じカラスだと思うのですが♀鹿の群れにご執心なヤツが居て、ずーと付いてまわってるようでした。
    ま、いつもどおり私が鹿の姿を見るのは全速力で逃げてる時なので、何度出会ってもどうしょうもなかったのですが‥。
    でも、カラスはしつこく付いて行ってましたね。
    ♀の方がオイシイのを知ってるのかも?
    しかし、それよりイノシシの寝てる所を教えてくれたら足を向けて寝れないのですが‥。
    無理かな?

  3. C-NA より:

    人間社会と密着しているカラスの生活がわかる本のようですね。興味津々・・のぞいてみたいです。一度カラスが飛んだ瞬間の写真を撮ったことがあってちょうど逆光に羽が透けて美しかったです。写真は少々ピンボケでしたが・・。

  4. gaku より:

    ■ブリスパ さん
    >カラスの視点で、いろんなお宅を拝見して歩いて「撮った」本かと思ってしまいました(笑)。
    そんなカラスなら、オイラがなりたいです。
    ■いち猟師 さん
    カラスは、ほんとうによく人間の行動を見てますが、
    イノシシのねぐらを知っていても、イノシシは何も提供してくれないから鳴かずにいるのでしょうね。
    昨日は、南アルプスの箇所で3頭のシカに会いました。それも至近距離で。
    鉄砲があったら確実に撃てる、距離でした。
    ■C-NA さん
    今回の本は、貴重なものになりそうです。
    すぐに、絶版になることでしょうから、お急ぎください。