ノウサギ復活のきざし


今冬は、雪が思いのほか早くやってきた。
こうして、雪が降ると、足跡が雪上に見られるから動物たちの動きがわかって面白い。
今冬の特徴は、中央アルプスの一部地域でノウサギが復活傾向にあることである。
1985年を最後に、ボクのフィールドではノウサギが完全にいなくなった。
以来、雪が降るたびに期待してノウサギの足跡さがしをするのだが、これまでまったくそれを見つけることができなかった。
ある地域では、2年前に少し見られたが、今年は再び消えてしまっている。
また、これまでまったく見られなかった場所で、今冬はかなりの個体数が復活していることが分かった。
まあ、これは喜ぶべきなのだが、まだまだ数年間にわたってその推移を見守らなければならないだろう。

ノウサギがいなくなったときボクの周りでは、山や動物のことにちょっと自信がありそうな人はみんな異口同音に、「キツネを放したからいなくなったんだ」、と断定口調だった。
しかし、ボクはそれには疑問符だった。
ノウサギが姿を消して20数年間、キツネは多数がちゃんと生息ていたからである。
キツネがノウサギを大量捕獲しているとすれば、餌であるノウサギが消えた時点でかなり餌不足に陥って個体数も激減していったことだろう。
しかし、それがまったくなかったからである。
そして、現在でもキツネはちゃんと普通に闊歩している。
だから、キツネ説をボクは否定している、のである。
それよりやはり、森林の変化がノウサギに大きく影響を与えたと思っている。
1970年代前半より、それまでの大量大規模伐採地がずっと手つかずのまま放棄されて今日まできた。
だから、山野は樹木が生長し、草原などを好むノウサギにとってはとても棲みずらくなってしまった。
こうして、ノウサギの生息環境が悪化したから、中央アルプスからノウサギが消えたのだ。
そして、かろうじてノウサギが生き残っていた場所が、皮肉にもスキー場とかゴルフ場周辺だった。
自然破壊だと自然保護団体や個人があれほどスキー場やゴルフ場建設に反対したのに、いまでは何を思い感じているのだろうか、と聞いてみたい。

まあ、ノウサギが増えてくればイヌワシは喜ぶだろうが、いまの森林状態ではそれもかなり難しい。
放置されている森林を、ゴルフ場並みに大伐採をして草原地帯をつくり管理しながら、そこにノウサギを復活させれば、イヌワシはとても安定して繁殖活動を続けていくことができるだろう。
このようにいえば、自然破壊を煽るようなものだとまた自然保護団体に叱られそうだが、自然界というところは全体のバランスが大切なのである。
そのバランスからいえば、現在の日本の山野は森があまりにもすべてを占めつくしており、森林性の野鳥やツキノワグマ、シカ、イノシシ、サルが激増してきているからである。
自然界は日々ちゃんと動いていることに気づき、それに合った的確な判断がわれわれ現代人には必要なことだと思う。
それがいまいちばん欠けているところなので、決して自然「保誤」になってはいけないとボクは思っている。
この判断確定は、今後のボクのフィールドでのノウサギの動静で決まると思う。

写真上から、
1)超過疎化が進み40年前から無人集落跡地となったところで、ノウサギがやっと復活傾向にあることが今年の自動無人撮影カメラでわかった。背後の樹木は桑の木、昔ここで養蚕が行われていたことを物語る。
2)ノウサギのこんな足跡を見つけると、嬉しくなってしまう。
3)ノウサギ、キツネ、カモシカの足跡がそれぞれに行動をみせてくれて面白い情報源となっている。
4)ここは2年前にノウサギが少し復活したが、再びいなくなってしまった。キツネは普通に生息するが、サルは異常に増加傾向にあることはこの足跡からでもよくわかる。

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ノウサギ復活のきざし への6件のコメント

  1. あーる より:

    確かに、十数年前には雪の上に足跡見たり、
    我が家の猫が野うさぎとったこともありました!
    が、ここ数年はさっぱり。
    狐は山の中より町場の方がよく見かけます。

  2. akke より:

    こんにちは。
    私は東北北部の日本海側に住んでいます。20年くらい前から里に近い国有林地の同じ地域に出向います。
    この地においても、野ウサギは10年くらい前より、夏場でも見かけることが多くなっています。
    特に最近は、私がいても、15メートルくらいの距離で草を食べたりします。
    車だと、3メートルくらいでも逃げずに草を食べたりします。このようなことは以前では考えられませんでした。
    あと、テンの足跡も多くなっています。
    カモシカは、20年くらい前に比べて激減しました。たまに出会うカモシカは反応がとても俊敏のような気がします。

  3. 雪国の原生林のイヌワシを研究しています。イヌワシがノウサギを捕えるのは主に冬、捕える場所は20-40mの、広葉樹の大木が1-2本倒れた程度の空間でした。倒木跡は一時的に低木や草地となってノウサギに餌場を提供し、イヌワシを育んで、150年後、再び広葉樹の大木にもどります。
    近代林業・森林開発によって失われた大きな空間を伐採によって作り出し、ひいては大木を育てることは自然破壊ではなく、失われた自然のサイクルを再生し、イヌワシを保全する行為だと思います。各地で実験も始まっています。
    http://d.hatena.ne.jp/iwhozen_niigata/20091014/1250916609
    カメラを通し、イヌワシの暮らす森林に光を当ててくださるイヌワシカメラマンが増えており、感謝しております。

  4. oikawa より:

    桑を宿主とするカミキリムシは明治時代は、普通種だったのですが、今では、かなりの希少種。蚕と一緒にその衰退をともにしてきた一つらしいのですが、人間の作る環境に適応できるかどうかというのがその種の存続に係わるというのが面白いですね。僕の家の周りでは、野ウサギさんが沢山いるようです。

  5. oikawa より:

    追伸
    僕はカメラマンなので、そういった状況を良い悪いと判断するより、そのような状況を伝えられる写真が撮れるといいです。

  6. gaku より:

    ■あーる さん
    自分の暮らしている足元をきちんと見守り、自然からのサインを読み、考えて行くことはとても大切なことだと思います。
    ボクも、そうやってきていますから、自信をもって発信していけるのです。
    ■akke さん
    カモシカは森林が成熟すると、減少傾向になりますね。
    あと、御地でもニホンジカがどのように推移していくかも見物ですね。
    ■hks_イヌワシ研究所 さん
    このようなことは、ボクは30年以上も前から言い続けてきましたが、日本もやっと少し前進しはじめたのですね。
    地域によっては手遅れ感も否めませんが、イヌワシ保全のウルトラ秘策を関係者はとっくに考えなければならないところまできています。
    しかし、写真家ごときの意見は必要ないと思いますのでボクはアドバイスしませんが、御地にも、いくつかのイヌワシの巣を独自に見つけてありますよ。
    ■oikawa さん
    >そういった状況を良い悪いと判断するより、そのような状況を伝えられる写真が撮れるといいです。
    とてもいい意見だと思います。
    そこまで考えられているカメラマンがプロアマ含めてどれほど、いることでしょうか?
    期待しているのです、がね。