雪が降ればドラマがはじまる


立春を前にして、重たい雪が降った。
この雪で、ニワトリ小屋が大打撃を被った。
修理不能なので、新しく造りなおさなければならないと考えている。
ニワトリといっても、もう卵も産まなくなった特養ホームのボランティア飼育のようなもの。
餌代だけがかかってしまうが、ヒヨコから育てたので、まあ、ここで余生を送らせたいと思っている。
そのニワトリの餌を狙って、日ごろからスズメが60~100羽くらいやってきている。
ニワトリよりも、スズメに餌をやっているような、ものだ。

雪で潰れそうな小屋に、スズメが入っていた。
そのスズメを狙ってこんどはモズが入った、ようだ。
小屋の前を通りかかったときに、モズがスズメを足に掴んだままニワトリ小屋の隅に飛ぶのが見えた。
それを目撃して瞬間的に、お腹をすかせたスズメが小屋にいるのを見つけて、モズが飛び込んで捕獲したものだと思った。
以前には、小型のタカのツミが入った小屋なのでモズも入ることにはなんの不思議もないのだが、それにしてもモズがスズメを捕獲するとは驚いた。

で、モズは、そのスズメを地面に置いたまま、ボクが3mほどのところで見ているのにも関わらずさらに次なる獲物であるスズメを追いまわしはじめたのである。
獲物に夢中になっていたのでボクの存在には気づいてなかったらしく、そして、見事な足さばきで、2羽目のスズメを捕獲して地面に降りた。
スズメはもがきながら逃げようとするが、足指でモズが締め上げているのには、まさにタカと同じ作業をしていることにもビックリした。
そのあと、モズは嘴でスズメの後頭部を何回か攻撃して、ついに絶命させた。
見事な捕獲ぶりであるが、モズもタカの部類に充分はいる野鳥だと感心すると同時に、この行動にすっかり惚れこんでしまった。

そのあと、モズは、いま捕まえたスズメから足を離して放置したまま、先に捕まえたスズメに乗り移り、スズメの目と頭蓋骨を食べてしまった。
これも、タカと同じ食事作法である。
獲物を食べたこの時点でモズは我に返ったのか、ボクを見つけてニワトリ小屋のすき間からあわてて野外に逃げていった。
ボクは、モズの捕食シーンの一部始終を観察できたが、撮影はできなかった。
モズの動きを知っているから、ボクがカメラを持ちに自宅に帰っていたら、たぶんモズは捕獲をあきらめてニワトリ小屋から逃げて行くであろうと感じたからだ。
だから、ここはしっかり観察だけにとどめようと思った、のだった。

死んでいた2羽のスズメのうち、頭のない1羽だけをモズが再び帰ってきたら食べられるようにニワトリ小屋に残しておいて、もう一羽は頭のダメージを見るためにボクはスズメの羽毛をむしってみた。
後頭部だけにわずかなキズがあるものの、ほかにはいっさい致命傷となるものはなかった。
それでも、スズメはモズに捕まって死んでしまったのだから意外と弱い生命である。
羽毛をむしったところで、やはりここは「寒スズメ」。
美味しいらしいから、モズからのプレゼントということにして、このスズメをボクは食べてみることにした。
羽毛をむしった段階で、スズメには皮膚病といおうか疥癬のようなものがあることに気づいた(上の写真の矢印先)。
まあ、野鳥にはよくあることなので、気にすることなく焼き鳥にしたのだった。

季節が寒中だけあって、スズメにはほとんど脂はなかった。
うなぎのタレをつけて焼いてみたが、味は期待するほどのものでもなかった。
やはり、寒中のスズメより、秋以降のスズメのほうが味はいいと感じた。
こうして、思いがけず「寒スズメ」を味わってみることができたが、老ニワトリたちでも飼っていればいろんなことを教えてくれるものである。
だから、自然はオモシロイ。

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雪が降ればドラマがはじまる への7件のコメント

  1. あーる より:

    なんと読み応えあるレポートか!
    モズの食べ残し食べるところまで、ハラハラドキドキです。モズを見る目が変わります。

  2. blackbird より:

    はじめまして。私は野鳥大好きblackbirdと申します。突然の訪問、失礼します。
    モズは立派な猛禽ですよね。私は以前、ツグミを捕まえて頭を齧りとるところや、カヤネズミをはやにえにするところを目撃しました。また、託卵を狙うカッコウをも攻撃し殺してしまうそうです。
    一番好きな野鳥です。

  3. gaku より:

    ■あーる さん
    ほんと、モズはすごい野鳥です。
    オイラにスズメをプレゼントしてくれるんだ、もの!
    ■blackbird さん
    はじめまして。
    モズの足が猛禽っぽくないところが、これまた魅力的ですね。
    身近なところにいつもいるモズなので、これからはちょっと見方を変えて行こうと思っています。
    できればモズの、オモシロイ写真も撮ってみたいものです。

  4. どぶろく より:

    ごぶさたしております。
    この時期、伊那谷は重たい雪が突然降りますね。
    モズは僕の大好きな鳥です。
    地方によっては「モズタカ」と呼ぶそうですよ。
    また、夏期に平地で繁殖する時、スズメの幼鳥を調理の為にハヤニエにして(タカみたいに脚が丈夫じゃないから)そこから肉を引きちぎり何度もヒナのところに運ぶ模様を、唐沢孝一さんのスライドで拝見しました。子スズメの首を運んできたりして、ちょっとグロかったですけど。でもあれが野生なんですよね。
    唐沢さんの「モズの本」面白いです。

  5. 北の狩人 より:

    驚きですね~楽しいですね~
    運が良いというか、わずか3m程の所でこんなドラマを見る事が出来るなど考えられませんよ。
    それにモズにもらった?スズメを食べた人のレポートもあり得ない(爆笑

  6. りえぶー より:

    初めまして、熊本県最南端県境の地からお邪魔しています。
    源流の「林を愛するところ」からのブログから偶然入り、それ以来いつもこっそり楽しく拝見させていただいていますが、今回は自分なりに衝撃的な記事だったので思わず書き込んでしまいました。
    生き物の生態系とそれに関わる人間の姿を、自分の全く知らない切り口で文字と写真で堪能させていただきました、と言っても読み進むにつれ胃のあたりが重くぐにゃぐにゃしてきたのですが‥とても苦手な分野を恐いもの見たさも重なりgakuさんの記事で勉強させていただいています。
    恐くてリアルで気持ちがあまりよくない、けどたいへん勉強になる記事でした、ありがとうございました。

  7. gaku より:

    ■どぶろく さん
    あれっ!?
    モズは、今後あらためて観察していきます。
    ■北の狩人 さん
    30数年前に、四国の沖ではじめてスルメイカを釣りました。
    釣り上げてくる途中で、オイラのイカを誰か大きな魚が半分以上食べてしまいました。
    チクショーと思いましたが、半分となったイカを海水で洗って船の上でオイラ生食しました。
    大きな魚と獲物を分け合った気分でしたが、美味しかったです。
    今回も、スズメを食べて、そんな気分でした。
    ■りえぶー さん
    熊本県からようこそ、です。
    「林を愛するところ」、あそこはみんな心が温かくていい人たちが集まりますね。
    自然界は、オブラートで包んで見てしまってはいけないところだと思っています。
    自然は、たしかな営みを知ってお付き合いしていくことが肝心だと思います。
    「林を愛するところ」の源流へは、たぶんまた出かけますので、そのときにはどうぞ遊びにきてください。