「口蹄疫」悪夢のシナリオ


宮崎県で家畜の伝染病である「口蹄疫」が発生して大変なことになっている。
長野県でも、宮崎県から子牛が導入されているそうだから、やはり心配である。
もっとも、いまは牛や豚などの家畜のみに視線がいっているが、オイラはもう少し心配していることがある。
近所の農園では、有機肥料に牛糞を使っている。
農園脇に大型トラック数台分の牛糞を積み上げ、随時それらを畑に鋤き込んで、安全で味のよい農産物を作っているからだ。
その牛糞に、去年からニホンジカがきていることは知っていた。
牛糞には、塩分やミネラル分が含まれているから、それを、野生のニホンジカが欲しているからだ。
さらに牛糞には、家畜用の医薬品なども含まれていることだろう。
それらも、間接的にニホンジカは体内に取り込んで、ある意味では健康維持をはかっていることになる。

こうしたニホンジカの行動に、自然界の報道写真家としてのアンテナが動いた。
牛糞にやってきているシカの写真を絶対に撮りたいし、家畜と野生動物の連鎖をも視野にいれて観察しておく必要がある、と思ったからだ。
昨年はシカの存在まで観察をしていたが、しかし、この農園には「電気柵」がぐるりと張りめぐらされてしまった。
なので、シカの撮影は絶望的だと思っていた。
ところが、一昨日農園を見てまわったところ、シカたちは電気柵をくぐりぬけて牛糞にやってきていることがわかった。
足跡は、一直線に牛糞に達しており、いたるところに糞尿を掘り起こした跡もみられた。
電気柵がまったく効果を見せてないことを知ると同時に、これは、さっそく撮影しなければならないと思った。
そこで、かねてから知り合いだった農園主からの撮影許可も得た。
折りしもいまは、「口蹄疫」の話題でもちきりである。
写真家としてこれは、ある意味ではチャンスだと感じる。
野生のニホンジカにもし感染すれば、シュミレーションの確認とともに、その後の推移にも大きな関心があるからだ。

1)ニホンジカが口蹄疫でもしバタバタと死ねば、増えすぎたシカを減らすにはちょうどいい。
2)いや、シカは死ぬことはなく、口蹄疫をクリアーしてしまうのかもしれない。
3)そうすれば、ニホンジカは口蹄疫を保菌したまま広範囲を行動するから、周辺の家畜へ次々に罹患させる可能性がある。
4)そうなったときは、信州のヤギ、豚、牛、など家畜は壊滅的打撃を受けるだろう。
5)ニホンジカからイノシシやカモシカに罹患すれば、野生動物の生息地図にも大変化がおきるにちがいない。
6)山野でニホンジカやイノシシがもし累々と死ねば、スカベンジャーのカラスやタヌキが異常に増えることだろう。そうなったとき新たな農業被害や飲料水汚染、人体に悪影響を及ぼす細菌などの発生も視野に入れておかなければならない。
7)そして何よりも、オイラには、自然と密接な関係で生かされている地域住民の自然界に対する意識や認識を探れる最大のチャンスでもある。
なにはともあれ、こうしていろんなシナリオが浮かぶが、ニホンジカは胆のうを持たない動物なので、有機農法現場には必然的に集まる習性がある。
牛糞から出る醤油のような糞汁が、ニホンジカにとってはことのほか体が欲していることだけは事実なので、野生動物と家畜とをリンクした対策方法をたえず視野にいれておかなければならない、だろう。
だから、もしここに潜伏期間中のウイルスが糞汁にあるとすれば、それは一発で私たち人間の手には負えないところに飛び火していくことはまちがいない。

そんなところまで視野にいれながら、昨日は牛糞に向けて無人撮影ロボットカメラを設置してきた。
糞汁をいかに欲しているかといったニホンジカの生態写真を撮るために、である。
写真:
1)ミネラル物質を舐めにきているニホンジカ。
2)牛糞からは糞汁が醤油のように滲みでてくるが、これがシカにとっては元気のでるエキスなのであろう。
3)糞汁についた無数のシカ足跡。
4)カメラ設置完了。あとは、時間次第で結果が見えてくる。

カテゴリー: 旅・取材・人   パーマリンク

「口蹄疫」悪夢のシナリオ への15件のコメント

  1. 北の狩人 より:

    私も考えて居ましたが、もしエゾ鹿がこの病気に罹ったら北海道の酪農は全滅するでしょう。
    今でさえ増えすぎるエゾシカのコントロールが出来ない状況で・・・
    考えると背筋が寒くなりますよ。

  2. 信州岩魚 より:

    私はこの問題が報道された時、もしイノシシに移っていたら止めようがないのではないかと思いました。 家畜ばかり隔離しても野生動物は自由に動き回る。 
    もしかすると専門家はその事に気付いていても黙っているような気さえしました。
    心配しすぎでしょうか?

  3. 小坊主 より:

    黙っているのだと思います。
    もしも、野生動物の罹患が確認されたら、報道の仕方によっては、パニックになるでしょう。

  4. うどん より:

    過去にはイギリスからフランスに感染が広がった経緯があるようですね。
    台湾でも過去に380万頭が被害を受けたとか…。
    感染力も強く、生命力も強いとか…。
    これらを知ると行政のお粗末さと、畜産業の方の保障にばかり目が向く報道の在り方も疑問が多々あります。

  5. しらとり より:

    口諦疫は以前にも宮崎で発症した事があるそうです。単純になぜ宮崎で起きるのでしょうか?
    以前の教訓は生かされていないのでしょうか?
    農場から農場へ 感染するのに口諦疫を媒介した者は?野生動物が媒介したとは思えないのでひょっとして 最初の発症から各農場に検査に行った役人の消毒があまくて役人自身が動き回って感染を拡げてしまったのでは?

  6. みやましろちょう より:

    2枚目の写真の状態は、これはこれで地下水汚染源になりそうですね。
    口蹄疫、以前の発生の教訓が生かされなかったことは明らかですね。診断できる人材を1人でも設置してあったのかも疑わしい。個人的なミスではなく、組織的な大ミスです。初めに担当した人が気の毒でなりません。

  7. ブリスパ より:

    口蹄疫について詳しく知りませんが、
    感染域がどんどん広がっているようですね。
    しっかりしたキャリアがいるんではないんでしょうか?
    「微生物」「昆虫」「鳥」…
    牛豚の処分だけで大丈夫なのかなあ?
    冗談半分で「ユンケル」が売れなくなるかも…
    などと思っていましたが、とんでもないことになりそうですね。

  8. wagadake より:

    畜舎にある飼料を求めてカラスや鳩などが頻繁に畜舎に入り込みますが、これらの動物が感染拡大の原因の一つではないでしょうか。
    友人の畜産業の方はこのことを心配をして行政に伝えたそうですが、担当者は対岸の火事、馬耳東風、全く興味が無い態度で呆れて帰って来たと言っていました。
    残念なことですが、県市町村の担当者は3年程度で職場の配置換えがあり、責任感も専門知識にも乏しい職員が多いですね。
     

  9. あーる より:

    生活を成り立たせるためには、すごい数の家畜を飼わなくてはならなくて、そのこと自体が病気をよびそうだ、と思います。
    それは鶏や果樹や野菜も同じで、きちんと管理できる数を生産すれば農家が食べて行かれる。そんな適正価格で売れる。消費者も買える。世の中がそんなシステムにならないと、この手の怪しげな病気が次々発生しそうです。

  10. いち猟師 より:

    こんばんは。
    口蹄疫って健康な動物が感染しても死ぬ事は無いんですよね?たしか。
    結局のところ、病気でやせ細ってタイミング良く商品にならない+他の固体に病気を移してしまう可能性があるから処分されてるだけなんじゃ無かったのでしたっけ?
    野生の動物は簡単に死なないでしょう、死ぬやつはとっくに死んでると思います、他の事で。
    ただ、獣が家畜に被害をあたえるからと言って機関銃あたりで大量殺戮はしてほしく無いですね。
    まじでやりそうですからね、今の世論だと。

  11. ニキ より:

    こんにちは、私も一言。
    タネ牛とか、話聞いているとメス牛など子牛の生産工場としか思っていない様なやり方ですね。そんな風だから自然からしっぺ返しを、などとは言いませんが、色々と現代の畜産業の実態を少し知れたのも確かで、複雑な気持ちもあります。
    それにしても、家畜の蓄の字は生き物と言うより、貯蓄とか財産の意味なんですね。それで、殺処分となると、実は財産を失う悲しみなんでしょう。
    それなのに県知事は、殺処分にご理解をと言ってテレビカメラの前で涙も浮かべ、ああ彼はやはり役者なんだなと思ったり。
    家畜の伝染病ってどういうものか知らないのに言うのは不適切かもしれませんが、風邪ぐらいの事で済ませられないのかな、と一方では思います。成牛なら死ぬことは無いとも聞きますから。(畜産業の人が聞くと気を悪くしますかな?)

  12. うどん より:

    ニキさんへ一言
    成獣になる過程の幼獣が居なくなったら、その後はどうすればいいのでしょうね。
    畜産業が壊滅的な打撃を受けるとそこに付随する飲食店なども倒産するかもしれないですね。当然、職を失う方も大勢出てくるでしょう。
    連鎖は止められないですよ。
    畜産業を営んでおりませんが、もう少し考えて頂きたいと思います。
    gakuさん申し訳ござませんでした。

  13. gaku より:

    ■北の狩人 さん
    ■信州岩魚 さん
    ■小坊主 さん
    野生動物は死なないまでも、保菌したままさまよいますから、周囲の家畜には致命的になりそうですね。
    それにしても、ニホンジカは増えすぎてコントロールが利かなくなってしまって、ます。
    ■うどん さん
    ■しらとり さん
    ■みやましろちょう さん
    家畜の伝染病ですから、たしかに人間が介在していることでしょうね。
    そして、それを管理するのも人間だから、やはり人間は絶えず複眼発想で行動できなくてはならないと思います。
    ■ブリスパ さん
    ユンケル…、売れていると思いますよ。
    オイラは、もっと安いのしか買えません、が。
    ■wagadake さん
    ドバトやカラスも、たしかに一役買っていると思います。
    ほんと、公務員は配置換えが多いですから、一人ひとりの意識がどんどん薄れていくヒトをボクもずいぶんと見てきています。
    やっぱり、5年置きくらいに試験受けなおして採否を決めるようなシステムになればいいのですが。。
    ■あーる さん
    地産地消といいつつも、このあいだのようにヨーロッパの火山が噴火しただけで飛行機が飛ばず、「フォアグラ」「サーモン」「バラ」が入荷しないっていうのもおかしすぎます。
    ここは、現代人が原点に戻るべきビックバンがほしいところです。
    ■いち猟師 さん
    おっしゃるとおりです。
    野生動物の死亡は極端に低いと思います。
    まあ、いちどすべての動物が洗礼をうけて再リセットしてもよさそうな気がします、が。
    ■ニキ さん
    お久しぶりです。
    家畜は、やっぱり財産ですよね。
    アフリカでは、豚2頭と嫁さんの交換をするところもあるし。。
    それに比べたら、日本の牛はやはり「ブランド牛」なんでしょうね?
    オイラみたいな庶民は、オージービーフのホルモンしか食べられません、が。

  14. tan より:

    私、都心から電車で一時間ほどの丹沢山麓に生活しているんですが、ゴミ収集場所の残飯を狙ってタヌキが出入りしていました。
    丘陵の方角から、舗装路脇のU字溝を伝って移動してくるんですが、2,3年すると、親子らしき数匹の皮膚に出来物<腫瘍?>が出て、そのうちタヌキは絶えました。
    宮崎さんの写真集で知っていたものの、これはショックでした。私には今、口にしている食品に恐ろしさを感じます。

  15. gaku より:

    ■tan さん
    >私には今、口にしている食品に恐ろしさを感じます。
    近いうちに、ここに書きますが、疥癬症のキツネやタヌキの存在はたしかに私たちが口にしている「残飯」などに集まってくる動物たちに顕著に見られます。
    こういった因果関係などを真剣に観察や研究することも大切なんですが、そのような学者や専門家がなかなか現れないよう、です。