獣害を考える 11 「口蹄疫がこういうところからも蔓延する可能性が…」


農産物をよりよく美味しく仕上げるために、有機肥料が使われる。
それはそれで、とてもよいことだと思う。
そこに、なんの疑問もいだかないのだが、農園脇に積み上げられた牛糞にニホンジカの足跡を見つけたときから撮影をしてみたいと思っていた。
農園主の許可を得て、無人撮影ロボットカメラを設置して1週間。
はやり、シカたちは夜間になるとやってきた。
2日置きに、これらの写真は撮影された。
角の有無や姿形から判断してみれば、どれも、別個体である。
ほかにも、親子の足跡などが多数あることから、ここにはまだまだたくさんのニホンジカたちがやってきていることがわかる。

ボクにとっては、こういうシカたちの行動がいちばん面白い、のである。
牛糞は、営農家のためにも大切な肥料。
家畜農家にとっては、排泄物を有効利用してもらえてありがたい。
野生のシカたちにとっても、家畜の排泄物には塩分やミネラル分があるから健康管理には欠かせない。
ここに、自然界のリサイクルがすべてに関係しているから、とても大切で必要なこと、である。
まさに、すべてにおいていいことづくめ、なのである。
だから、これを問題視する必要性はまったくない。
ただ、ここにもし「口蹄疫」のウイルスが紛れ込んでいたとすれば、たちまちシカに感染することだろう。
シカは野生動物だから、その後も自由に歩き回り、捕獲などの管理は人間には不可能だ。
となれば、シカは口蹄疫で死ななくても、保菌したまま仲間にどんどん感染していく。
そして、こんどは家畜たちにどこかで戻ってくるにちがいない。
家畜伝染病は、こうしていろんな野生動物や野鳥、昆虫たちが「媒介」していく可能性がある。
ボクはそこまで考えていたから、自然界の報道写真家として、とりあえずはこのような写真を撮影しておく必要があると思った。
とにかく、自然界という大きな環境のなかに、人間も家畜も農業も「経済」も、野生動物たちまでもがすべてにわたってリンクしていることを忘れてはならないからだ。
そして、このような写真を撮影して結果を見て知ることにより、ボクにはニホンジカの大量捕獲まで視野にいれて考えることができてしまう。
現代人は漫然と生きていてはダメなわけであって、いろんなことを複眼発想してイマを生きなければならない動物だからである。
でなければ、今回の口蹄疫だって初動ミスによるスルーはなかったと思うからだ。
この写真のシカたちの舐める牛糞だって、ウイルスが混じらないことを前提としての写真である。
そういうつもりで写真を「読んで」もらいたい、と思う。
※この記事をUPしてまもなく、
 「堆肥」と「糞尿」をごっちゃにするのは、まちがいかもしれない」と、知り合いの獣医師から指摘を受けた。
 糞尿の堆肥は、発酵処理をされることにより、安全に使用することが出来る。
 ところが、小規模の養牛農家の畜舎周辺にもシカやクマなどの野生動物が頻繁にやってきているところがあり、これらの動物たちが畜舎内に侵入していることが考えられたので、撮影を試みたが農家の許可がおりずまだ成功していない。
 こうした農家の糞尿処理はかなりずさんで、畜舎脇に放置されていることが多いので、そんなところまで視野にいれての文章と理解されたい。
 

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獣害を考える 11 「口蹄疫がこういうところからも蔓延する可能性が…」 への6件のコメント

  1. みやましろちょう より:

    野積みの堆肥からはナトリウムやカリウムの流出が多いとのことで、ニホンジカのミネラル供給源になっていることの合点がいきました。ただ、堆肥(生の牛糞ならなおさら)の野積みはちょっと問題あり、と思われます。この状態、見つかると行政指導あるかも、です(私はその方面の者ではありませんのでご安心を。)。

  2. gaku より:

    ■みやましろちょう さん
    >この状態、見つかると行政指導あるかも、です
    そんなこと、オイラにいわれても困ります。
    全国的に、このようなコトは普通に起きていると思いますよ。
    堆肥にだけ目が行くのではなく、オイラは野生動物たちとのリンク関係に興味がありますし、そのほうを重大視しながら、時代を思考することを提供しておりますので…。

  3. 杢爺 より:

    >この状態、見つかると行政指導あるかも、です、、、
    >全国的に、このようなコトは、、、、
    普通に起きていると思いますよ2、、、
    法律通りに堆肥を管理するのは大変な事のようです。

  4. みやましろちょう より:

    >そんなこと、オイラにいわれても困ります。
    はい、もちろんgaku先生に行政指導がある、と申し上げたわけではありません。ただ、撮影ポイントがなくなったらお困りになるかなと、真剣に思ったのです(うそ)。
    法律云々ということもありますが(すべてにおいていいことづくめではないから規制がある、と思う。)、この状況の写真は、土壌とも何らかのリンケージがあるとすれば、本文中にもありますが、最終的には人間や野生動物にも二次的、三次的に跳ね返ってきそうだと、あらためて考えさせられます(感度が違うかもしれません)。

  5. wagadake より:

    宮崎県の感染域が広がりを見せておりますが、野生動物が一役買っている可能性を示している写真だとの思いで拝見しました。
    我々人間の直ぐ側に野生動物の世界があることを大半の人間は忘れているのではないでしょうか。
    何の気なしに見ている景色を観察の目で見るとまた違った景色が見えてくるのですが・・・。

  6. gaku より:

    ■wagadake さん
    >何の気なしに見ている景色を観察の目で見るとまた違った景色が見えてくるのですが・・・。
    そうなんです、人間の側だけの視点で見るのではなく、景色の側から人間を見てみると、けっこう発見があります。