獣害を考える 12 「シカが口蹄疫のキャリアになれば…」


長野県のとある高原にある牧場。
ここには、毎年数百頭の牛たちが放牧されている。
今年は、九州に口蹄疫が発生しているからどうなのだろうか、と訪ねてみた。
牛は、何事もなく高原の涼しい風に吹かれてのんびりと牧草をはんでいた。
なんともおだやかで牧歌的なすばらしい光景だろう、か。
そう思って眺めていると、背後の森からニホンジカがぞろぞろぞろっと現れてきた。
あ、や、やや、すごい数だぁー。
牧場は、牛だけのためにあったのではない。
野生のニホンジカにとっても、牧草はご馳走だったのだ。
牛が食べても美味しいのなら、シカにだって美味しいハズ。
しかも、牛と同じ場所で食べているのだから、美味しいところがシカにもわかっているのだった。

この光景を見て、あまりにも漫画的で、もう笑いがこみ上げてくるしかなかった。
人間がよかれと思ってやっているところを、森の奥から虎視眈々と狙いをつけ、やがて自分たちのものにしてしまう野生のニホンジカたち。
そして、どんどん増殖していく。
背後の森には、100年もののモミやツガの立ち枯れが見える。
たぶんあれは、シカが樹皮をかじってしまったから枯れてしまったのだろう。
森に入ってみれば、たしかにその通りだった。
牧場で栄養価の高い牧草という餌を奪い、森では冬の食糧危機を樹皮食でしのぐ。
牧場も森も、まさにニホンジカにとって「餌づけ」場所になっていた、のである。

こんなところに、「口蹄疫」が出たらどうするのだろうか?
もう、ほぼまちがいなく人間はなすすべもなくなるにちがいない。
これほどたくさんいるニホンジカを捕獲隔離することは、絶対にできない。
そして、ニホンジカが口蹄疫のキャリアになれば、仲間内に次々とキャリアを増やしていき、もうそこで偶蹄類の家畜は全滅であろう。
経済動物なのだから、経済だってマヒしてしまう。
ここまでは、現在のところでもオイラのような素人にも充分考えられることである。
今後は、家畜伝染病を視野にいれるなら、完全防備をした「工場」のような建物内で肉牛を飼育肥育するしかないだろう。
そう思いながら、牛とニホンジカの牧草コラボを見ていたら、オイラにはこのシカたちを一網打尽にできないものだろうか、と考えてしまった。
これは、丁寧に時間をかけてやっていけば、それも可能であろう。
そう発想の転換をはかってもよいし、もうそろそろニホンジカの大量捕獲を真剣に議論してもいい時期にきているのではないか、と思った。
いや、これまでそのような発想にならなかったことのほうが不思議だし、アイデアがなかったのか、すでにもう手遅れのような気さえもする。

家畜は「農水省」、ニホンジカは「環境省」。
シカの潜む背後の森林管理は「林野庁」、牧場のある地域は国定公園地だから「長野県」。
なんだか、管理行政がけっこうかなり入り乱れているけれど、人間の行政ナワバリをよそに、ニホンジカはどこの行政区にも関わりをもちながらここでは猛烈な勢いで増加中なことだけは、確かである。
写真:
1)牛とニホンジカと立ち枯れ樹木。
2)霧の晴れ間に、どんだけーっといった数のニホンジカが現れていた。
3)森林内の針葉樹はことごとく樹皮がニホンジカに食われていた。幹の周囲を一周皮剥ぎがされると、樹木は枯れていく。
4)口蹄疫には神経を使っているようだったが、見ているところが違うような気がするのはオイラだけ?

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獣害を考える 12 「シカが口蹄疫のキャリアになれば…」 への6件のコメント

  1. クワ より:

    野生動物が畑や牧場を利用しているのは存じ上げていますが、一連の写真は素晴らしく、正に皆が理解できる視覚言語です。
    特に一枚目が衝撃的な一枚ではないでしょうか。

  2. 小坊主 より:

    スーパーの駐車場に、シカが現れる土地に住み、シカの多い事には、慣れっこのつもりでしたが、とんでもない。。
    この写真は、ショッキングです。

  3. 粗忽鷲 より:

    鹿の食害には恐怖を感じるこの頃ですが、
    1枚目も凄いですが、3枚目は丸で人間が勧めている皮剥ぎ間伐を鹿がしているのか、それに乗じたのか判断できぬほどに驚いています。
    札は空しいようでもあります。

  4. あーる より:

    いかにも大自然!という感じの写真ですね。
    肉の群れだ。どんどん食べよう。

  5. 杢爺 より:

    >肉の群れだ。どんどん食べよう。
    に、一票。

  6. gaku より:

    ■クワ さん
    天気がいいときに、もう少しこの現場を狙ってみたいです。
    ■小坊主 さん
    そうなのです、スゴイ数がいました。
    ■粗忽鷲 さん
    真剣にシカの数を減らすことを考えないといけない時代になりました。
    減らすための知恵と努力が、いまの日本人に足りないと思います。
    ■あーる さん
    ■杢爺 さん
    そうです、どんどん食べましょう。
    歩留まりよく食べる工夫と知恵がここでも必要みたい、です。
    その知恵を頼まれていますので、ちょいと絞ってみますアタマ。