キツネは人を化かす…


兵庫県豊岡市。
ここの海岸線に、キツネの巣がある。
発見してもう4年になるが、いまでも健在である。
発見する前はどのくらい営巣が続いていたかは分からないが、周辺環境の様子からしてたぶん10年単位での長期間生息にちがいないと思っている。
なので、オイラは、自分なりにここのキツネの巣の推移をそっと見守っているのである。

キツネの巣は、砂山にあった。
それも、工事用に使う砂を貯めてある土場である。
ショベルカーが大きなエンジン音を響かせて動き、ダンプカーが出入りする人工の砂山に、野生のキツネが巣穴をほって生活しているのである。
こうした事実が、キツネの心理と人間を知る意味で、オイラにはとても面白くて興味のあるところ、なのである。

4年間の間に砂山はどんどん崩され変化していった。
そのたびにキツネの巣は潰され、彼らも次の砂山へと引っ越しては巣穴を掘った。
なので、土採りの進捗状況によっては、次はどこに穴をほるかまで予測がつくからオモシロイ。
まさに、キツネは生活を守るためにこの砂山に住み着いているのだが、建設会社にとっても「砂」は商品の対象なので関係者も生活のためにやっているだけである。
ここで決定的なことは、建設会社の関係者はキツネの存在に気づいてないことである。
気づいてないから、キツネもそのことを承知しており、砂山が崩されて無くなってしまっても、次の砂山に移動していけるのである。
このキツネの行動が、工事関係者にもし気づいていれば、それを意識しているといった人間からの「殺気」がキツネにも伝わるから、キツネは精神的にいたたまれず即座にこの場所を放棄して新天地を求めていくだろう。
それをキツネがまだしてないということは、逆にキツネがしっかり人間観察をして「大丈夫」だと判断しているからだ。
そうしたキツネの心理までオイラには分かるから、長野県から日本海側の兵庫県豊岡市という遠隔地まで人と野生を探るために出かけているようなものである。

そして、面白いことは、工事関係者は知らなくても、キツネはものすごい観察力で日々現場をチェックしていることである。
先日の観察では、朝まで雨が降っていたから砂山周辺は濡れていた。
その砂の上にくっきりとキツネの新しい足跡があり、ショベルカーの周辺を入念にチェックしていることがうかがえた。
そんなキツネの用意周到な心理状態が足跡に表情としてみえるから、オイラにはそこを見抜くオモシロさもある。
だからこのキツネ家族は、周辺に点在する集落全体を食糧確保の営業の場としているので、よほどのことが無いかぎりここを捨てることはできないのである。
そして、このようにしたたかに人間観察をしているキツネなのだから、周辺の住民はすべてキツネに「化かされている」とオイラは思っている。
キツネは、ペットのようには人間と妥協しないが利用だけはちゃんとさせてもらう、そういう心理で生きているのだ。
それが現代社会での野生の姿であり、それでいい、のだ。

写真:
1)この狡猾な表情にくわえて、耳の感度のよさがその形状からでもわかるから、キツネは相当な分析力で人間観察を行なっている。
2)左写真の矢印のところが巣穴で、巣穴からは人間の生活空間(右写真)がすべて見通せる。
3)左写真の矢印が足跡なので、画面全体の無数の足跡をみればいかに周囲を歩き回っているかがよくわかる。右写真の巣穴への出入りも、足跡からひんぱんに行なわれていることがわかる。
4)ショベルカーの周囲を執拗にチェックした無数の足跡をみるだけで、キツネの心理状態までがみえてくる。
5)集落を取り囲む畑にはシカ対策の防護ネットが張られているが、住民の目にはキツネの存在なんてまったく映っていないことだろう。そうした人間の心理状態までキツネは読みぬいているから、安心しながらしたたかに生活できるのである。

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キツネは人を化かす… への5件のコメント

  1. su- より:

    自然界は不思議な事だらけだね
    毎年わんさか獲れたサワガニが
    ある時突然沢から一匹も居なくなっちゃって不思議がっていたんだけど
    そうしたら…
    間もなく土砂崩れで大崩壊ってわけ
    どうやって察知するんだろうね

  2. 小坊主 より:

    化かす、というのは、こういう事なんでしょうね。
    昔話のような、狭いお話でなく。

  3. しらとり より:

    関係者の人たちは砂山に穴が開いていても
    興味を持たないのでしょうか?
    だれか1人くらい興味を持って
    巣穴をのぞいたり 周りの残った足跡に気付く人はいないものですかね。
    gaku先生のような観察眼をもつには
    相当な訓練が必要ですね。

  4. たじまもり より:

    キツネが写っていないのに、これだけキツネの物語が書ける写真作家はほかにいません。
    またひとつ、ガツンとやられました。

  5. gaku より:

    ■su- さん
    >どうやって察知するんだろうね
    たしかに、人間には分からない信号をキャッチできる能力があるのでしょうね。
    でも、東京のゲリラ豪雨で流されたコイが舗装道路で動けなくなってたけれど、アイツにはそうした察知能力はないのか、ねぇーー!?
    ■小坊主 さん
    >化かす、というのは、こういう事なんでしょうね。
    そうだと、思います。
    家畜化された現代人には、化かされていることにも気づかず、です。
    ■しらとり さん
    >観察眼をもつには相当な訓練が必要ですね。
    オイラは、子供のころから訓練をしてきていますので筋金入り、です。
    小学生までには、伊那谷中の野鳥の声と名前を聞き当ててましたから。。
    ■たじまもり さん
    >またひとつ、ガツンとやられました。
    それも、いいかも…!?