先月の6月3日、わが家のニワトリが3羽キツネにさらわれた。
キツネに襲われたニワトリは、卵を産まなくなった大年寄りたちだった。
人間でいえば、80歳以上の婆さんニワトリ。
それだけを狙って襲っていったのは、やはり「加齢臭」はさらっていってもらうためのサインだとういうことをあらためて知ることができた。
小屋を壊って、一晩にすべてのケリをつけていったキツネも見事だけれど、自然界の仕組みもなかなかに奥が深くて鮮やかといわざるをえない。
そこで、鶏小屋には残された雄鶏がまだ1羽いるから、キツネはさらに確実にやってくると思った。
このためオイラは、どんな面構えのキツネかを確認してみたくなり、すぐに簡易無人撮影カメラを鶏小屋に設置してみた。
カメラは、ニコンD2x。
レンズは、30数年前のMFニッコール28mm。
このレンズは、カビが生えていて実戦には使えないが、タヌキやキツネの違いくらいは写し分けることができるのでこのような監視用にもちいている。
ストロボは、使い捨てカメラからバラしたものを組み立てなおしての実戦配備。
7月1日、午前3時43分、はたしてキツネはやってきた。
夜が白々と明ける時間帯に、ヤツは鶏小屋に侵入してきたのだった。
全身にスキがなく、これぞ平成時代に生きる本物の野生のキツネといった面構えだった。
そして、この写真が1枚写されただけで、次のコマへの動きがなかったから、キツネはすっとんで逃げていったものと思われる。
こうして、オイラはキツネに騙されたフリをしていたが、撮影という行動に出たところで今後のキツネはものすごく用心深くなることだろう。
その心理をはかれば、このあとの出現は10日後くらいに再チェックにきて、そこでまたストロボの洗礼をうけるとさらに1ヶ月後くらいの出現になるものと思われる。
しかし、ストロボが光るだけで痛くも痒くもないことを学習すれば、キツネはより大胆になって次々にニワトリをさらっていくようになるにちがいない。
そこで、キツネは雄鶏の始末をしたところで、今度は庭のなかの別小屋にいるチャボを狙ってくることだろう。
ここまでオイラには予測できるから、キツネの試行錯誤する心理と行動を探る興味がでてきた。
チャボ小屋は玄関先にあるので、それを狙うには大胆にもわが家の軒下までキツネは侵入しなければならない。
軒下には、10mのリードをつけた柴犬がつながれているから、犬に対してどう戦略を立ててくるかにも興味がある。
こうしていろんなことを想定してみれば、無人カメラをどこに向ければいいのかといった答えもおのずと出てくるものだ。
黙して語らない野生を、こうしてオイラは「語らせて」いきたいのだが、このような好奇心が次々に出てくるのは、自宅だけではなく信州伊那谷の住宅環境のすべての地域に野生のキツネが毎晩ふつうに出没しているという事実にあるからだ。
そのことに、たとえ10万人の人口がいても、だれ一人として気づこうとしていない現代人である「人間」の思考心理をさぐる興味にいきつくからである。
写真:
1)こうしてヤツは現れた…。
2)真ん中の黒い雄鶏が残され、あとの3羽が見事にさらわれた。
3)鶏小屋のなかの動きが、無人撮影カメラだと見えてないところまでを教えてくれるから面白い。
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山の中でキツネを見ることはほとんどないんですが、住宅地ではときどき見かけます。山は隠れられる場所が多いからかなあと、思っていました。
キツネ、ネコ、スズメ、みんな生きるに必死だなあ。雄鶏だけのほほんとしてるように見えます。
鶏の方は、種の存続のために、どうせ食われるなら、年寄りを食わせたい、狐の方は、労少なく、確実に獲れる獲物を狙いたい。
両者の思惑が一致した、素晴らしいシステムなのですね、加齢臭。
個を超えた、種の知恵、とでも、言うべきでしょうか。。
加齢臭か、私もまき散らしているなーーー。
それでかな、下山中に狐に出会ったのは。
それにしてもすぐにこの様な行動に出て記録するとは。さすがプロ。
■あーる さん
キツネは、ほんとうに賢く人間観察して生きていますよ。
なので、なかなか出会えませんが、庭先まで確実に毎晩やってきています。
そんなキツネのウラをかいてやるのが楽しいんですがね、オイラには。
■小坊主 さん
>個を超えた、種の知恵、とでも、言うべきでしょうか。
ほんと、捕食者には実によく分かっているよう、です。
人間の高齢化集落が、シカにまで蹂躙されているのが見方によっては滑稽です。
シカも、鼻のいい動物ですから。
■ユタ さん
>それにしてもすぐにこの様な行動に出て記録するとは。
獣害で悩んでいる集落がありますが、こうした行動をとれるヒトがいないから、荒らされっぱなしなのです。
動物の生態と習性を的確に読み判断して行動できるリーダーが、日本の集落からすでにいなくなってしまいました、ね。
こちら(限界集落)に来て1年になりますが車を走らせていて3回ほど狐を見ました。
が、gakuさんの写真の狐は栄養状態が良さそうですが、私が観た狐は胴がずっと細くて痩せっぽちでした。同僚が「冬の狐は尻尾も身体もふわふわでとても美しいよ」と言っていましたが、全然そんなことはありませんでした。こちらでは鶏を飼っている家を見たことがありませんし、獣害は猪や猿や鹿による畑の作物です。動物性蛋白が足りないんでしょうかね
■そらとびねこ さん
>動物性蛋白が足りないんでしょうかね
そのキツネを見た季節が大切だと思いますが、子育て中のキツネは毛が抜けていたりしてボロボロのことが多いです。
地域、個体によってもいろいろなものがいますので、絵本にでてくるようなすばらしい毛並みのモデルばかりを想像していると、ときには野生動物のイメージが狂うこともあります。。
自然界には、柔軟に幅広くいろんな個体がいることを意識されていたほうが夢もこわれなくて済むと思います、です。
狐を見たのは初夏、真夏、晩秋でしたが、痩せているだけでなく毛がボロボロのもいました。
>地域、個体によってもいろいろなものがいます
そうでしょうね。鳥見を始めて7ヶ月になりますが、図鑑の写真やイラストを見て同定しようとしても、難しいことが度々ありますので、哺乳類も同様なのでしょうね。
最近虫や魚を採ってみたりする機会がありましたが、やはり同種でもいろいろでした。
子供の時には哺乳類以外は全く関心がなかったので、田舎に来たらいろいろな生き物がいて毎日新鮮な発見がありドキドキの日々を過ごしています。
コメントありがとうございました。