岩手県の盛岡市動物公園内で野生のツキノワグマが目撃されたというニュースがあった。
「あれー! 動物園にクマがいてはいけないのぅ…?」
なーーんて、つい、突っ込みたくなるような笑えるニュースだった。
今年も、相変わらずツキノワグマの目撃情報が全国的に多発している。
こんなに目撃されているのに、ツキノワグマは絶滅するほどに数が減じている野生動物なのだろうか?
目撃例が増えているということは、単純に考えても、それだけツキノワグマの数が増加しており分母が大きくなっていると考えるのがふつうだ。
なのに、「奥山が荒廃して餌不足の熊は里へでてくるかわいそうな動物」、などと根拠のない使い古された言葉ばかりが一人歩きをしている。
自然界全体をはかる自分の技術のなさを、こういう言葉に転化して逃げるのはもうやめてもらいたい、と思う。
山林「荒廃」とは、何を意味しているのかを考えて欲しい。
荒廃とは経済的視点でみた林業用語でいうところの「荒廃」であって、間伐も下草刈りもされず手入れの行き届かない現在の放置林は、野生動物たちからみれば餌も豊富にあって隠れ場所も提供されている「野生天国」なのである。
だから、ツキノワグマは、ここ30年間で確実に増えている。
しかも、その増加率は右肩上がり、なのである。
日本は先進国のなかでも国土の三分の二は森林という緑豊かな森林大国であって、山野は決して荒廃なんてしてないからである。
林業経済からみた荒廃という表現をツキノワグマの生息地である林野の土俵に当てはめてしまうのはまちがいであり、それに気づかないまま熊の減少を唱える学者や専門家がいるとすれば、それは日本の自然界の仕組みが見えてない初心者であって、ツキノワグマを語る資格がない、とオイラは断定したい。
ツキノワグマは、はたして全国に何頭生息しているのか?
そして、何頭まで減れば絶滅への道を歩むのか。
何頭以上になれば、余剰部分をコントロールしてもいいのか。
そうした基本線となる数字を出そうとする発想力もなければ行動力も現代の日本の自然科学者には、とにかくないようだ。
このような数字を出すことは、誰かがやってくれるものでもないから、アマチュアでも自分の力で足元の自然環境を読み調べてみようとするちょっとした努力を日本各地で模索してみてもいいのではないか?
そうした人たちのためにも、「となりのツキノワグマ」といういい教科書ができた。
たった2200円で、写真だけでも377枚も収められているウルトラサービス本だ。
ここで、1枚の写真に何が写っているのか、写真をじっくりしっかり見て読んでもらいたい、と思う。
とにかく、1枚の写真を撮る裏側にはどのくらいの思考があって、ツキノワグマの習性を熟知したうえでの知恵とアイデアが生かされているかが分かってもらえると思う。
もっとも、写真を「読む」には、それなりの生態知識とカメラ技術をもちあわせていないと正確に読み解くことはできないものだが、技術なんてものはあとから努力すればついてくるものだから、まずは参考書として手に入れるのもいいだろう。
研究者でもなければ専門家でもない写真家だって、写真集というこうした視覚論文が出せるのだから、ツキノワグマを探るにはどのような新しいアイデアで迫っていくかといった「視点」に早く気づいてもらいたいと思う。
あなたのすぐ「となり」にツキノワグマが来ているのだから、まずはそのことに気づき、日本各地ではじめてもらいたい一冊である。
「となりのツキノワグマ」 新樹社刊 定価=本体2200円+税
写真:
1)「となりのツキノワグマ」の表紙。奥山放獣されたハズの耳タグつき親子写真を深読みしてもらうためにわざと表紙にした。
2)食べ物と糞。
3)ツキノワグマの糞による盆栽。
4)雄大な風景のなかにも、見方を変えればツキノワグマの動きが明確にみえてくるから面白い。
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この写真集も、いってみれば、gaku先生の“研究発表”。クマが何を食べているのか、どう行動しているのか、研究成果が明かされるようですね。本が届くのが楽しみです。
両耳にタグが付けられたクマの顔は、こころなしか困惑顔に見えますね。取り付けた側は、これらのクマを頭数を含め、どれくらい把握しているのでしょうか?
ご出版おめでとうございます!
「カラスのお宅 拝見」
の時から、親しみやすく、シンプルで、ペーソスもある「タイトル」だなあ、と思っていました。
相当、コピー・ライティングに長けた方の手によるものだとも思いましたが、もしかしたら宮崎さんご自身がひねり出されたものなのでしょうか?
宜しかったら教えてください。
クマ、動物園に何しに行ったんでしょう?
お友達のにおいがしたのかな。
あっけなくつかまりましたね。
本の方はamazonで探すも見つからないんですけど。
本屋さんに頼むとものすごい時間かかるし。
私は、7ネットで注文しましたが、2週間程度は、かかるようです。
少し長くなりますが
先日、北海道新聞に乗った記事に、ヒグマと箱わなに関するのが有った。
内容は、自身の牧場の牛がヒグマの被害に遭い、許可を得ずに箱わなを掛けヒグマを捕獲したと言う物で、鳥獣保護違法反に問われている記事だった。
此に関して、専門家と言われる二人の大学教授のコメントが載っていたので紹介させて頂く。(新聞に載っていたので実名で)
東京農大大学院の梶光一教授(野生動物保護管理学)。
「根本的な解決のためには、まずヒグマを農地に入れない工夫が大切。その都度駆除する方法ではヒグマを絶滅させかねない」と警鐘を鳴らす。
海外の野生動物保護管理に詳しい釧路公立大の小林聡史教授は、自治体や農家が専門家を交えてヒグマの情報を共有し、ハンターの高齢化対策として国がハンターを養成する事も提案。
「今のままでは行政の対策が不十分。長期的な視野で取り組む事が大切」と強調している。
現場から離れている教授の意見、より現場に近い教授の意見、この二人の考え方をどう思いますか?
最低でも、「ヒグマを農地に入れない」具体的かつ的確な方法を提案しない限り、空論だと思います。
次に、「絶滅」を危惧するのであれば、「絶滅させかねない」という具体的な根拠を示さなければ、そこも、空論だと思います。
しかし、梶教授の名誉のために付言すれば、そういう根拠はお持ちであっても、紙面に載せてもらえないでいる、という可能性も、大きいと思います。
14日に書店の店頭に並ぶそうです
「楽しみにお待ち下さい」と言われた、否が応でも高まる期待!であります。
■オーロラ さん
>両耳にタグが付けられたクマの顔は、こころなしか困惑顔に見えますね。取り付けた側は、これらのクマを頭数を含め、どれくらい把握しているのでしょうか?
たぶん、追跡は困難だと思います。
タグ付きが、再度檻に入って捕獲されたときに、点と点がつながるくらいだと思います。
■ブリスパ さん
>相当、コピー・ライティングに長けた方の手によるものだとも思いましたが、
オイラがもっとも信頼している編集者が、構想を練りタイトルを考え出してきます。
優秀は編集者ですので、オイラはこのときばかりは「我」を張ることはしません。
■あーる さん
>本の方はamazonで探すも見つからないんですけど。
amazonは、かなり遅いらしいです。
7ネットとか、他のネットのほうが早いと思います。
■北の狩人 さん
>この二人の考え方をどう思いますか?
小坊主さんがフォローしてくださっていますが、こちらが期待するほど学者も的確でないと思います。
「電気柵」妄信主義も、すべてに狂いが生じてきていますから、
的確ならば、とっくに答えが早くでてきてしかるべきなんですが、みなでジャブを打っているだけのような気がしてなりません。
■小坊主 さん
■北割 さん
お買い上げありがとうございます。
手元に届いたら、ご意見聞かせてください。
南方熊糞先生とお呼びしたら不謹慎でしょうか・・・
gaku先生の、徹底した現場主義は刺激的です。
考えているつもりでも、うわべしか見ていない自分にとっては、反省の教本となるのでしょう。
待ち遠しいです。
本日手に入れました。
勉強します。
今後とも宜しくお願いします。
■ほたるん さん
■いち猟師 さん
お買い上げありがとうございます。
しっかり読んでみてください、教本ですぞ。
甥の子供の年中の園児もアレコレ尋ねながらページをめくっておりました。
「クマさんの耳についているリボンはなに?」 「このクマさんは動物園のクマさんと一緒なの?」 「クマさんは美味しいのかな~?」
幼児も面白そうに見ております。
>「クマさんは美味しいのかな~?」
熊の肉ぜひ食べさせましょう、その子に。