獣害を考える 13 農業現場でも動物観察は必要…


25歳になる農業青年がいる。
農家を継ぐために農業大学校に通ったあと、信州に帰ってきた。
彼は、これまでのリンゴや桃の果樹にくわえて、新たにブルーベリーとサクランボの栽培をやりはじめた。
そして、コメも大規模経営に乗り出した。
彼には、大きな夢があった。
過疎化で農地放棄が進んでいるなか、数人のグループで「農業法人」をたちあげ遊休地の活用も考えているのだった。
山麓の広大な面積をやがて「フルーツ王国」にするんだといって、頑張っている。
汚れのない清らかな目をしているとてもいい青年だ。
しかし、オイラには心配がある。
フルーツ王国にすることはいいことだけれども、「野生動物という伏兵が必ず出現してくるから規模拡大するにも複眼発想でとりかからないとしっぺ返しをくらうぞ」、と進言している。
大学で理想的な農業経営を勉強してきたかは知らないけれど、自然界は多様性に富んでいるものだから、農業事態が「餌づけ現場」となり野生動物を呼ぶからである。
そうした「生態学」までは農学校では教えてくれないから、いまの農家にはそのことが抜け落ちてしまっているからだ。
現実に、彼が子供のころにはいなかったニホンジカとニホンザルが激増して、すでに悩まされている。
農地をぐるりと電気柵やフェンスで囲ったが、まるで効果はないのである。
シカはブルーベリーの木を食べ、サルは実を盗んでいく。
さらに上空からは、カラスとムクドリが攻めてきている。
有機肥料を主体とした農業をやれば、イノシシがブルーベリーの根元の大地をブルドーザーのごとく掘り返していくようにもなった。
たぶん、このままでは終わらないだろう。
近所にはすでにツキノワグマもやってきているし、ハクビシンやアライグマの狼藉も視野にいれておかなければならない。
まさに、オイラが予測するとおりとなり、彼もそれに気づきはじめてきた。
だが、野生動物の生態や心理にはまったくのシロウトなので、何もできないのが現状なのだ。
彼だけではなく、彼の周囲に集まっている人たちも、まったくのお手上げなのだが、「困った こまった」と口では言っていても自分でなんとかしようという努力はまだみられない。
努力しようにも、動物の生態心理がわからないから、どこから手をつけていいのかも分からないのだろう。
しかし、オイラにはどこから手をつけていけばいいのかは分かる。
困っているのなら、自ら狩猟免許をとって「わな」による捕獲をはじめなければならないだろう。
法律を順守しながら、農地にやってくる野生動物を確実に減らす努力をいまのうちからしていかないと、今後はとんでもないことになるからだ。
もう、他人がなんとかしてくれると思っていてはダメなのだ。
自分の農地は自分たちで守っていくことを考えないと、会社が潰れるみたいに農家もつぶれる。
そうアドバイスをしながら、方法論を説明するのだが、どうも動きがイマイチなのだ。
そしてくわえて、農家の人たちの特徴は身銭を切らないことだ。
とにかく、高価な農業機械は買うけれど、動物被害のアドバイスや捕獲装置などはタダだと思っていることである。
獣害コンサルタントとしてのオイラの特別な知恵や発想力を素直に聞いて実行すれば、かなりの成果があがるのに、どうもそこまでは考えられないのだ。
たぶん、オイラがいなくなったころ、「困ったなぁー」あのときにもっと教わっておけばよかったという時代が必ずくる、と思っている。
まあ、やる気のないところには、それ以上に老婆心することもないだろうが。
写真:
農家の堆肥置き場に2ヶ月ほど無人カメラを設置して訪問客を監視すれば、とにかくシカばかりがやってきた。こうした映像観察を繰り返しながら習性を掴み、知恵を使えばシカを一網打尽にすることは可能なのだ、が。

カテゴリー: 鳥類   パーマリンク

獣害を考える 13 農業現場でも動物観察は必要… への8件のコメント

  1. 北の狩人 より:

    >農家の人たちの特徴は身銭を切らないことだ。
    どこでも同じ傾向が有るんですね。
    こちらでもエゾシカ等の被害があっても行政頼みが多く、ハンターに獲ってくれとは言っても後始末はいやだと言うのが多いのです。
    補助金漬けがしっかり?身に付いているのでしょうね。

  2. あーる より:

    農業をやろう、と言う人は心持ちが狩猟系になりにくいのでしょうか。
    我が家の近所でも、鹿獲れても、奥さんたちが料理を嫌がって(食べるのもイヤだと言う)おかげで私は肉たくさんもらえるのだけど。
    N村でのことであれば、猟友会ががんばっているので、お近づきになって色々教えてもらったらいいと思います。

  3. そらとびねこ より:

    こちらでは、猟友会もプロでないせいか、弾が命中しないようです。
    現物持参で報酬貰うわけじゃないみたいだし。適当に何発か撃ったら引き上げてるんじゃないかと思います。
    友人の家の庭には裏山からしょっちゅう鹿が来ます(いつも同じ鹿)猿、猪、ハクビシンの被害はかなりですけど、柵とか電気の通る檻みたいな囲いとかドカーンと大きな音の出るスピーカーくらいですか。
    年寄りはお金も労力も使う気がないから、取られればそれまでですね。
    まあ、あんまり困ってないのかなーなんて思いますが。
    こちらは食料自給率100%以上の地域ですし。あんまり本気を感じませんね。困ったって言ってるけど。
    去年、やっと鹿肉を食べようというキャンペーンが行なわれて、レストランシェフの作った鹿料理を食べる会が開かれましたけど。

  4. take1 より:

    農家の方々の獣害対策はほんとうに大変だろうなあと思って見ています。
    対策を「熟慮」ではなく即実践しなければならないし…
    福井県の田圃は「大飯町」を中心に数年前から簡易鉄柵が張り巡らされていますが、今年はなんと!敦賀市の田圃や畑にまで…
    「ムカシトンボ」「アカハライモリ」「ハンミョウ」「ウンカの仲間」など近寄って撮ることが出来なくなりました。
    あ、ラーメンの「一源」行きました(笑)。
    URLに拙い写真を載せてあります。

  5. gaku より:

    ■北の狩人 さん
    >補助金漬けがしっかり?身に付いているのでしょうね。
    そうだと、思います。
    自助努力が足りない、です。
    ■あーる さん
    >農業をやろう、と言う人は心持ちが狩猟系になりにくいのでしょうか。
    案外、そうかも知れませんね。
    これは、ひとつ発見だと思います。
    ■そらとびねこ さん
    >去年、やっと鹿肉を食べようというキャンペーンが行なわれて、
    シカ肉そのものは、それほど美味しいものではないので、いろんな工夫加工の料理が必要かもしれません。
    ■take1 さん
    福井県のあたりも、「獣害」視察で出かけたのですよ。
    そこで、「一源」しかなくて昼飯にラーメンを食べた次第。
    ニンニクラーメンは、かなり美味しかったです。
    店内のテレビは小さすぎて、高校野球が見られず「音」だけでした、が(w。
    ああいう店で、夜ひとりで演歌をききながら飲みたいもの、です。
    来週、あちら方面に行くから、寄ろうか、な?

  6. おぽ2 より:

    農家は農家としての、狩猟者は狩猟者としての「精神」「覚悟」みたいなものがありまして
    どうも畑違いな事は身が入らないんです。
    私は狩猟者側ですが、逆にクマや猪、鹿等が来る畑はうらやましいので
    いいなあ~。なんて思います。

  7. gaku より:

    クマもイノシシも、いまこちらの畑にきてますよぅー。
    今秋は、美味しいイノシシが食べられるか、なぁー?
    おぽ2さんの、腕前に期待してますから、ね。

  8. takorinu より:

    途上国などで、新しい作物を作ると、3年後ぐらいに害虫が猛烈にふえそれを追うように天敵が増えじきに落ち着いてくることが多いのですが、今の鹿さんには、天敵がいないのでしょうね。天敵は、熊さんや狐さんぐらいなのでしょうか?