美しいだけが写真じゃない


秋以降、仕事場である「むささび荘」にノネズミが侵入するようになった。
ヒメネズミとアカネズミ。
どちらも、山野には普通にいるノネズミたちだ。
ヒメネズミは木登りが得意だから侵入も理解できたが、アカネズミまでも一緒になってやってくるとは驚いた。
ドブネズミよりは悪さをしないから可愛いものだが、それでも厳寒に撮影するための高価なダウンジャケットや羽毛寝袋があるから穴をあけられても困る。
なので、粘着シートで捕まえることにした。
いや、カンタンに捕まるのだが、それでも、次々に湧いて出てくるといったカンジ。
数匹捕獲できたが、粘着シートにまだ余裕があったからそのままにしておけばまだ次のがかかる。
そんなことの繰り返しだったので、あるときシートで死んだネズミをそのまま部屋に放置しておいた。
ところが、死んだネズミの腐敗臭がひどくなったので、外へ出したのである。

すると、なんとハエがどっさりやってきてみんな捕獲されてしまった。
まさか、ハエがこんなにかかるとは驚きだが、ハエ捕りをひとつ発見した次第。
なるほど、こうやればハエもカンタンに捕れるではないか。
まあ、こういう写真はあまり人気はないが、オイラには自然を知るには意味があると思うから必要だ。
そういえば、動物の死をテーマにした写真集がオイラにはあるが、これがなかなかに人気なのである。
発表して15年も経つのに、いまだ取材や講演依頼がくる。
きれいで可愛らしいものばかりを見ていると、それは「誕生」だけの美しさで、その次を知ることは難しい。
しかし、「死」は生なるものが生命をまっとうして自然界に還っていく意味づけがあるから、妊娠時間と同じ時間で死後は土に還っていくことが理解できる。
まさに、誕生から「生」と「死」後の世界と再び「誕生」までの縁起と輪廻転生。
こういう発見があるから、汚い姿でも自然界では普通にプログラムされていることなので、人間自身の地球上での存在意義や環境を語るには必要なことだから、オイラはあえてレンズを向ける。
粘着シートを埋めつくしたこのハエたちも、実は腐敗したネズミたちをすみやかに食べて自然界のクリーニングをするためにやってきたのだ。
ハエが直接食べるわけではないが、卵を産み幼虫(ウジ)が処理係をつとめるからである。
ほかには、スズメバチ、ヨツボシシデムシまでもやってきた。
自然は、死んでもみんなつながりあっていることをこうして発見できる。
だから、きれいなところだけを見ていると、自然を知るモノサシが狂ってしまうと思う。
写真:
1)粘着シートに捕獲されたネズミたち。
3)わずか6時間ほどで、これだけのハエたちが集まってきて捕獲された。

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美しいだけが写真じゃない への5件のコメント

  1. そらとびねこ より:

    以前、練馬区に住んで居た頃に飼っていた猫が猫エイズに侵され、ご近所の庭の池に水を飲みに行って池に落ちました。
    浅い池なので大丈夫でしたが、そこのお宅で鶏を沢山飼っていたので、猫にハエが卵を産みつけ、夜になってからウジが次々に湧いてきて、猫の身体を喰いだしました。
    櫛で梳いても限りなく湧いてくるので最後には、殺虫剤をかけながら除去したりしましたが、朝までに猫は死んでしまいました。
    ハエは猫が死に近づいた状態だと察知して卵を産みつけたのでしょうね。
    宮崎さんのお話を聞いたりご本を読ませていただいて、このことが腑に落ちました。

  2. しらとり より:

    ブログの主旨とは離れてしまいますが 某団体のドングリ蒔きは ヘタをするとそのエリアのネズミを爆発的に増やしてしまい その地区の生態系を崩しかねないと思っています。
    先日 本屋さんである写真家さんの愛猫が弱って死んでいく過程を写真に収めた写真集を見ましたが いろいろ考えさせられました。
    僕は昼間は動物関係の仕事 夜は牛乳配達をしていますが 昼の仕事は当然 生き物の生死に関わるのですが 牛乳配達の仕事中でもよく猫やタヌキ・ハクビシンなどの轢死体に出くわします。自分には何も出来ないのでせめて他の車に轢かれないように死体を移し手を合わせる事だけでもと思っています。

  3. あーる より:

    我が家の猫も10月末にエイズに腹膜炎を併発して11月中旬に死にました。
    9月頃、その猫が毎日毎日耳に小さい子ダニを付けて帰って来てまして、ダニつぶしが日課でした。
    他の猫や犬には付かないのにおかしいなあ、とその時は思っていました。
    ダニにはその猫が弱っているのがわかっていたんですね。

  4. shima より:

    こんばんは。
    普段、生きているものを見て観察して、ついつい生きている者同士のつながりにばかり目が向いてしまいます。
    「死んでもみんなつながりあっている」のお言葉にハッとしました。
    つながりあいの中でヒトは暮らしているのですが、生き物たちを眺めていると、ヒトだけがなんて特殊な極めて不自然な暮らしをしているなあ、と最近思います。

  5. gaku より:

    ■そらとびねこ さん
    >ハエは猫が死に近づいた状態だと察知して卵を産みつけたのでしょうね。
    戦争時代に負傷した日本兵の傷口にも、ハエがウジを産んだそうです。
    ウジに食われると、ものすごく痛いそう、です。
    でも、現代医学のなかには、壊死した肉塊を無菌状態で育てたウジに食わせて治す療法もあるみたいですよ。
    手術のあとの悪い血だけを吸わせる「ヒル療法」もありますから、腐敗肉を殺菌しながら「食う」虫たちの存在を再認識する時代にきているようです。
    ■しらとり さん
    あのドングリ撒きは、きちんと検証すれば実にオモシロイ行為と思います。
    ご指摘のとおり、ノネズミがいちばんよろこぶと思いますが。
    そのあと、フクロウとノスリ、テン、キツネもよろこびます。
    ■あーる さん
    >ダニにはその猫が弱っているのがわかっていたんですね。
    そうだと思います。
    ダニのそうしたアンテナにボクは興味があります。
    ■shima さん
    >「死んでもみんなつながりあっている」のお言葉にハッとしました。
    そうなんです、自然に保護されて生かされているのも人間ですから、人間は生きていることに対してもう少し視野を広くもたなければならない動物のような気がしています。